経理

公開日:2024.02.07

リース契約とは?レンタルとの違いや、メリット・デメリットを解説

リース契約とは?レンタルとの違いや、メリット・デメリットを解説

企業が使用する設備や機器は必ずしも購入する必要はなく、リースを活用して用意することもできます。リース契約を活用して設備投資の負担を軽減したいと考えている事業者様も多いのではないでしょうか。
今回は、リース契約の仕組みや種類、リース契約の流れについてわかりやすく解説します。リース契約を利用するメリット・デメリットや、購入との使い分け方にも触れていますので、是非参考にしてください。

リース市場の概況

2022年度におけるリース取扱高は4兆3,106億円で、前年比2.2%増となっています(※)。特に、産業機械や医療機器の取扱高が伸びており、いずれも前年比10%以上伸びている状況です。
リースの市場はバブル崩壊以降伸びが鈍っていたものの、近年は業界によっては堅調に拡大しつつあります。

(※)出典:公益社団法人リース事業協会「リース統計(2022年度)

リース契約の仕組みと契約の流れ

リース契約とは、設備や機器をユーザーが直接購入するのではなく、リース会社が購入してユーザーが借りる仕組みを指します。ユーザーはリース会社に毎月一定のリース料金を支払うことにより、長期間にわたって利用できる点が特徴です。

リース契約の仕組み

リース物件決定から使用開始までの流れ

実際にリースを開始するには、何をすればいいのでしょうか。リース物件を決めてから使用を開始するまでの流れをご紹介します。

1. リース物件の決定、契約の締結

リース物件が決まったら、リース契約を締結します。契約後は原則として中途解約できません。

2. リース物件の搬入と引渡し

指定したリース物件が売主から搬入されたら、ユーザーは借受日を記載した物件借受証をリース会社に提出します。リース物件の引渡しが完了するのは、リース会社が物件借受証を受け取った日です。

3. リース物件使用とリース料支払の開始

リース物件の引渡し後、リース物件は使用が可能になり、リース料金の支払も始まります。リース期間の起算日は、物件借受証に記載された借受日です。

4. 契約の更新(再リース)

リース期間満了前に、リース会社とユーザーが協議して合意することにより、契約を更新することも可能です。同一のリース物件について新たに契約を締結するケースと、同一条件での再リースとなるケースがあります。

5. リース物件の返還・精算

リース期間が満了したら、ユーザーはリース物件を原状回復した上でリース会社に返還しなければなりません。原状回復の費用をリース会社が負担する場合には、ユーザーはその費用をリース会社に支払い、精算を行います。

リース契約とレンタル契約との違い

物品を借りる場合、レンタル契約を利用することも可能です。一方で、リース契約とレンタル契約には大きな違いがあります。両者の主な違いは次の通りです。

対象物の選択の自由度

レンタルは賃貸借契約のため、レンタル会社が所有しているものを借りるケースがほとんどです。リース契約の場合、ユーザーが対象物を選定し、希望する対象物をリース会社が購入するという点が大きく異なります。そのため、レンタルでは借りた物品の保守修繕義務を負うのは所有者であるレンタル会社であるのに対し、リース契約では保守修繕義務を負うのは契約者であるユーザーです。

契約期間

リース契約は、数年間にわたる長期の契約となるのが一般的です。一方、レンタル契約は長期間のものから短期間のものまで多岐にわたります。
例えば、数日しか使わない物品であればリース契約よりもレンタル契約がおすすめです。リース契約は数ヵ月〜年単位での契約になるため、短期間の使用には向きません。

リース契約の種類

リース契約には、大きく分けて「ファイナンスリース」と「オペレーティングリース」があります。両者の違いを確認しておきましょう。

リース契約の種類

ファイナンスリース

ファイナンスリースは、リース会社がユーザーに代わって設備や機器を購入し、ユーザーはリース物件の購入代金のほか支払利息、固定資産税、動産総合保険料を月々支払うタイプの契約です。主要リース物件として、情報通信機器や事務用機器、産業機械、工作機械、土木建設機械、輸送用機器、医療機器、商業設備、環境・エネルギー設備などが挙げられます。

オペレーティングリース

オペレーティングリースは、リース期間満了時点の価値(残存価値)をリース物件代金から差し引き、残った部分をリース料とするタイプの契約です。ファイナンスリースと比べてリース料が低廉となるメリットがあります。半導体製造装置や工作機械、印刷機械、土木建設機械などが主要なリース物件です。

リース契約時に確認しておくこと

リース契約を締結する際には、リース会社とユーザーとの間で確認しておくべき条件がいくつかあります。リース契約時の主な確認事項は次の通りです。

リース契約時に確認しておくこと

リース物件の所有権

リース物件の所有権を有するのはリース会社です。リース物件には、所有権がリース会社にあることを示すステッカーなどの標識が貼付されます。

リース物件の保守・修繕

リース物件の保守・点検・整備などはユーザーが行います。また、リース物件が損傷した場合にはユーザーが費用を負担して修繕しなければなりません。

リース物件の保険

リース会社はリース物件に保険をかけています。リース物件の修繕に保険が適用できる場合には、保険金がユーザーに支払われる仕組みです。

リース物件の品質等の不適合

リース物件の品質等に不適合が見られた場合、責任を負うのはリース会社ではなく売主にあります。ただし、品質等の不適合を理由にユーザーはリース料の支払を免れることはできません。

リース物件の滅失・損傷

リース物件が滅失・損傷した場合、ユーザーがリース会社に損害賠償金を支払うことで契約は終了します。滅失・損傷の原因によらず、ユーザーはリース料の支払を拒むことはできません。

リース契約の内容

リース料の支払が滞ったり、契約の条項に違反する行為が確認されたりした場合には、リース会社は契約を解除できます。ユーザーはリース会社にリース物件を返還し、規定の損害金を支払います。

リース契約を利用するメリット

リース契約を利用することで、具体的にどのようなメリットを得られるのでしょうか。主なメリットは次の通りです。

初期費用を大幅にカットできる

リース契約であれば、月々のリース料のみで設備や機器を導入できます。購入した場合に比べ、初期費用を大幅にカットできるため、余剰資金を運転資金に回すことができる点が大きなメリットです。

資金調達力にも余裕が生まれる

金融機関などから借入をすることなく、設備や機器を導入できる点もリース契約のメリットです。金融機関の借入枠を温存できるため、資金調達力に余裕が生まれます。

毎月のリース料を経費として計上できる

毎月のリース料は経費として全額計上できます。リース料は月々一定額であるため、毎月のコスト把握が容易になります。また、経費管理上も複雑な管理が不要です。

金利変動リスクを回避できる

リース料は月々固定されているため、金利変動の影響を受けません。金利情勢に影響を受ける借入とは異なり、金利変動リスクを回避できます。

最新設備が利用しやすくなる

実際に購入してしまうと、法定耐用年数に応じた減価償却を実施する必要があり、一定年数償却を行った後に設備を入れ替える場合が多いです。その場合、償却期間中には経理処理の都合上、最新の設備に切り替えにくい状況が発生することもあります。一方、リース契約であれば、設備を使用する期間によって、契約期間を設定できます。法定耐用年数より短い期間でリース契約期間を設定することで、設備の入れ替え時期を早めることができるため、最新設備を利用しやすくなります。

事務負担が軽減できる

リース料は月々一定額である上に、消耗品の補充・交換にも無料で対応してもらえるケースもあります。ランニングコストの管理が簡素化され、事務負担が軽減できる点もメリットのひとつです。

リース契約を利用するデメリット

リース契約には、デメリットとなり得る面もあります。リース契約を締結する際には、下記の点について確認しておきましょう。

中途解約は、違約金の支払義務が生じる

リース期間中に中途解約することはできません。解約する場合は、残リース料相当額の違約金の支払義務が生じます。

リース期間中の所有権はリース会社にある

リース期間中、リース物件の所有権はリース会社にあります。ユーザーには所有権がないため、ユーザー側の判断で設備や機器を売却したり、廃棄処分したりすることはできません。

直接購入するよりも、支払総額が割高になる

リース料には、リース会社に支払う手数料や支払利息が含まれています。そのため、トータルでの支払額は直接購入する場合と比べて割高になる傾向があります。

リース契約と直接購入は、どう使い分ける?

リース契約と直接契約は、それぞれのメリット・デメリットを踏まえて上手に使い分けることが大切です。次に挙げる2つの観点から、リース契約と直接購入のどちらが適しているか判断するといいでしょう。

対象物を所有したい場合は直接購入

対象物を将来的に所有したい場合や、長期にわたって使い続けたい場合には直接購入がおすすめです。長期保有しても市場価値が下がりにくい設備・機器や、将来的に市場価値の向上が見込めるものであれば、再リースをして使い続ける総額費用よりも、購入する費用の方が安くなることがあります。

毎月定額の経費として計上したいならリース契約

初期費用を抑え、毎月定額の経費として計上したい場合にはリース契約がおすすめです。ランニングコストの見通しを立てやすくしたい場合や、事業運営にかかるコストをできるだけ経費にしたい場合は、直接購入よりもリース契約の方が適していると言えます。

リース契約を活用し、メリットを得た事例

様々な業種において、リース契約を活用している企業があります。リース契約はどのように活用できるのか、事例を見ていきましょう。

・製造業のA社:新製品の開発プロジェクトをリース契約で実現

製造業のA社では、新製品の開発プロジェクトを進めていました。新製品を生産するため、既存の工場に新しい製造ラインを導入する必要がありましたが、購入すると数千万円にもなり、そこまでの予算はありませんでした。そこで、リース契約を活用し、自社の工場に合った設備を選定して導入することにしました。分割払いのリース契約で予算をクリアし、無事に新製品の製造ラインを導入することができました。

・地域密着型スーパーチェーンのB社:店舗数拡大を前に、資金調達の手段としてリース契約を活用

店舗数拡大を計画しているB社では、借入の多い財務状況の改善が急務でした。そこで、リース契約を資金調達の手段として活用することにしました。設備投資を、借入金に頼るのではなくリース契約で行うことにしたのです。リース契約で調達した設備は、貸借対照表の負債の部では「リース債務」という勘定科目になり、有利子負債と異なります。こうしてB社は、借入金を増やさずに店舗数拡大に取り組むことができています。

リース契約の活用で、会社経営を安定化・効率化しよう

事業を始めたばかりといった資金が十分でない時期は、リース契約を利用することで様々なメリットを得られます。全てのリソースを「所有」するのではなく、必要なものを「利用」するという発想は、会社経営を安定化・効率化していく上で重要な視点です。

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