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公開日:2022.12.28

覚書とは?契約書や念書との違いや必要な場面、記載事項などを解説

覚書とは?契約書や念書との違いや必要な場面、記載事項などを解説

企業間で契約を取り交わす際、当事者の意思表示が合致していることを証明する書類である契約書の他に「覚書」が作成されるケースがあります。覚書はどのような役割を持つ書類なのでしょうか?ここでは覚書について契約書や念書との違い、必要な場面、記載事項、電子契約活用のメリットについて解説していきます。

覚書とは?

当事者同士の意思表示の合致により成立する法律行為(売買・賃借・雇用・請負等)を「契約」、その契約を証明する書類を「契約書」と呼びます。「覚書」とは当事者同士が約束・合意した内容を忘れないようにまとめた書面です。どちらも当事者が合意した内容を記載した文書であることから、覚書は契約書の一つとも考えられます。

覚書と契約書との違い

覚書と契約書にはどのような違いがあるのでしょうか。ここではそれぞれの違いについて見ていきます。覚書と契約書について、どちらも当事者間が合意した内容を記載した文書であることは共通しています。覚書は当事者間で取り決めした内容を記した、契約書を補完する役割を持った文書として用いられることが多い一方、契約書は当事者間における合意の根幹となる内容を示した文書として用いられることが多いです。なお、覚書も契約書も当事者間が合意した内容を記載した文書であり、合意内容を証するものである点には違いはありません。

覚書と念書との違い

次に、覚書と念書との違いについて見ていきます。
念書とは約束した守るべき事項を記載し、約束を守るべき一方が相手に対して差し出す書類として用いられます。念書は、それを受け入れる当事者側は署名・押印をしないことが多いですが、一方が差し入れ、他方がこれを受け取ることにより、記載された内容に双方が合意又は確認したことを示す書面といえます。

覚書の締結が必要な場面

覚書はどのような場面で締結が必要となるのでしょうか?ここでは覚書の締結が必要な場面について説明していきます。覚書は以下のような場面で締結が必要となります。

契約前に当事者間の合意事項を書面に残す場合

「覚書と契約書の違い」で覚書は「当事者間で取り決めした内容を記した、契約書を補完する役割を持った文書」であると説明しました。契約の前に基本合意を確認する意味で、当事者間の合意事項を書面に残す場合、覚書を締結することがあります。

契約締結後に契約条件を決定する場合

実際の商取引では、契約を締結する時点で契約金額や納期・契約期間などの条件が確定していないケースが相応にあります。しかし条件が確定するまで契約の締結を先送りしてしまうと円滑な取引に影響を及ぼす可能性があります。このように契約を締結する時点で確定できない契約内容がある場合、先に覚書を用いて契約を締結し、条件面で当事者が合意した際に改めて契約書を作成して締結することがあります。また、契約書に「〇〇については別途協議のうえで定める」と記載して契約を締結した後に、追加で別途協議した内容を覚書にまとめたうえで、覚書を締結する場合もあります。

契約締結後に契約書の内容を変更する場合

実際の商取引では、当事者を取り巻く経営状況や環境が常に変化していることから、契約締結後に取引内容や契約条件などが変更されることがあります。通常この場合、変更契約書を作成・締結する必要がありますが、この際、当事者双方が変更内容に合意した証拠として覚書の締結を行うケースがあります。また、このような変更の覚書に関しては、「変更契約書」といった題名が付けられることがあります。

覚書の記載事項

実際に覚書を作成する場合、記載すべき事項が漏れていると本来の効力を発揮できない可能性があります。ここでは覚書の記載事項について解説していきます。

覚書の記載事項

① 表題(タイトル)

表題は「覚書」のみでも問題ありませんが、「〇〇に関する覚書」など、内容がわかるような表題を付けると良いでしょう。

② 前文

前文では誰と誰が契約条件に合意するのかを記載しましょう。当事者双方を「甲」「乙」と略称に置き換えることで、以後法人名を記載する手間を省くことができます(覚書を締結する前に契約書を締結している場合は混乱を防ぐためそれと同じ略称に置き換えましょう)。
また、締結済みの契約書や関連する書類がある場合は前文に「令和〇〇年〇月〇日締結「〇〇契約書」」というように正確に記載しましょう(契約書の一部条項を変更する場合は「第〇条」と具体的に記すことが必要です)。

③ 本文

本文には当事者双方が合意した内容を箇条書きで記載します。既に契約書を締結済みであり、契約内容を変更する場合は、変更前と変更後の違いを明確に記載することが重要です。

④ 後文

本文の後に後文を記載します。「以上、合意の証として本書2通を作成し、甲乙両者署名捺印のうえ、各1通ずつ保有するものとする」というように覚書の作成通数、誰が保管しているのかを明らかにする項目です。

⑤ 日付・署名・捺印

最後に日付、当事者の住所・氏名の記入欄と押印欄です。日付については、契約内容に合意した日や合意内容の効力発生日を合意日とは別にする場合は当該効力発生日を記載します。覚書を締結する日付を記載し当事者双方が署名・捺印することで覚書の内容により合意したことを証明することができます。

覚書に印紙は必要か?

実際に覚書を締結する際に、収入印紙は必要となるのでしょうか。覚書の内容が印紙税法による課税文書(zeigaku_ichiran_r0204.pdf(nta.go.jp))に該当する場合、印紙税が発生し、収入印紙の貼付が必要となります。例えば不動産の賃借権の設定に関する覚書であれば第1号文書、請負契約に関する覚書であれば第2号文書に該当し、契約金額に応じた収入印紙の貼付が必要となります。貼付を忘れると過怠税などの対象となるため十分に確認するようにしましょう。

覚書の電子化メリット

覚書は電子契約サービスを利用すれば契約書と同様に電子化が可能です。電子化することでどのようなメリットがあるのでしょうか。

覚書の電子化メリット

業務の効率化

覚書は契約書と同様に締結までに作成・印刷・郵送等、手間や工数がかかります。また、締結後の原本の補完など様々な作業が必要となります。電子化することで印刷・郵送といった作業は不要となり、工数の削減につながることや契約におけるリードタイムを削減できます。

コストの削減

覚書を電子化することで印刷・郵送に関する費用を削減でき、締結に関わる作業時間の抑制につながるため、人件費等のコストを削減できます。また、印紙税は「文書」の作成に対して必要となりますので、「文書」を作成しない電子契約の場合は印紙税もかかりません。

管理体制の強化

電子化により、締結後の管理において書類のデータの一元管理が可能となり、バックアップやアクセス権限を設けるなどセキュリティ強化を実施できます。また、電子化することで原本を保管する収納スペースが不要になり、文書の検索性が向上するなど紛失や破損のリスクを抑えることができます。

電子化も可能である覚書を活用し、契約内容の補完をスムーズに行いましょう

覚書は契約書を補完する為に利用されることが多い重要な書類です。覚書を使用すれば締結した契約に変更契約や追加が生じた場合でも契約書を作成し直す手間を省くことができます。契約書の他にも覚書を活用することを念頭に置いておくと良いでしょう。
また、覚書は電子化も可能です。覚書の締結に電子契約サービスを利用することで印刷や郵送に関するリードタイムの削減やコストの削減につながります。

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(※)2022年12月28日時点の情報のため、最新の情報ではない可能性があります。
(※)法務・税務・労務に関するご相談は、弁護士や税理士など専門家の方にご相談いただきますようお願い申し上げます。

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