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人事
公開日:2022.05.30
更新日:2024.02.07
人材育成とは?重要な理由や進め方、成功させるポイントなどを解説
業務に必要な知識やスキルの習得を通じて、事業に貢献できる人材を育てる人材育成は、企業の中長期的な成長に直結する重要な人事施策です。少子高齢化が進み、限られたリソースで高い収益を生み出すことが求められる時代、人材育成の必要性は今後ますます高まっていくと考えられます。
ここでは、人材育成が企業にとって重要な理由や具体的な進め方のほか、人材育成を成功させるためのポイントなどについて解説します。
人材育成が企業にとって重要な理由
近年、人材育成が企業にとって特に重要な課題となりつつあることには、どのような背景があるのでしょうか。主に次の5点が挙げられます。
テクノロジーの進化による市場の均質化
人材育成の重要度が高まっている理由のひとつは、テクノロジーの進化です。早く・安く・高品質な商品やサービスを提供する難度は、テクノロジーの進歩によって大幅に下がりました。
技術力や価格によって競争優位性を確保するのが難しくなった今、企業が競争力を維持していくには人材の力が欠かせないのです。
人的資本経営の推進
近年、「人的資本経営」という経営手法が注目されています。人を資本と捉え、人材育成は価値創造につながる投資という考え方です。上場企業では2023年3月期の決算から、非財務情報の開示、特に人的資本経営に関する取組状況の開示が義務付けられました。採用戦略としても人材育成に力を入れていることが、就職先として選ばれる企業のポイントのひとつになりつつあり、上場・非上場を問わず推進していく必要があるのです。
人的資本経営について詳しく知りたい方は、こちらも合わせてご参照ください。
ジョブ型雇用の拡大
ジョブ型雇用とは、職務内容(ジョブ)を明確に定義して職務記述書(ジョブディスクリプション)などで具体的に特定し、その職務を遂行するにふさわしいスキルや実務経験を持つ人を採用する手法です。もともとは欧米型の雇用形態ですが、日本でも多様な価値観やダイバーシティが重視される中で「ジョブ型」の要素を取り入れる企業が増えています。
ジョブ型雇用の拡大に伴い、人材育成の手法も多様化してきています。以前は、全社研修のように全体に向けた研修が行われることが多かったのですが、直近では、職務を遂行するにふさわしいスキルを身に付けるために、一人一人に合った研修が行われることが増えてきています。それに伴い、各自が都合の良い時間で受講可能な、サブスクリプション型のセミナーや研修を活用することが注目されていて、人材育成の在り方も多様になってきました。
関連記事:「ジョブ型雇用とは?従来の雇用との違いやメリット・デメリットを紹介」
人材の絶対数が不足
国内の人口が減少に転じたことで、労働力人口(15歳以上人口の内、就業者と完全失業者を合わせた人口)が減りつつあることも、人材育成の重要性が高まっている理由のひとつです。
2021年から2022年の1年間で労働力人口は5万人減少(※)しており、今後は人材獲得競争が激化していくことが予想されます。人材採用が難化する以上、今いる人材一人ひとりのスキル向上を促し、生産性を向上させることが企業にとって重要な課題となっているのです。
※参考:総務省統計局「労働力調査(基本集計) 2022年(令和4年)平均結果」
人材育成における社会全体の課題
企業が人材を育成していくためのリソースが不足しつつあることも課題となっています。企業が人材育成に際して抱えている課題の内、高い割合を占めていたのは「指導する人材が不足している」「人材育成を行う時間がない」といったものでした。人材育成を推進したくても取り組む余裕がない企業が増えつつあることは、社会全体の課題と言えます。
※出典:独立行政法人労働政策研究・研修機構「人材育成と能力開発の現状と課題に関する調査(企業調査)」(2021年11月)
人材育成の主な手段
人材育成の目的は、業務に必要な知識、スキル、ノウハウを習得したり、磨きをかけたりする機会を提供することによって、企業の経営計画や事業計画の実現に貢献できる人材を育て、最終的には企業の収益拡大を図ることです。ここでは、代表的な6つの人材育成の手段についてご紹介しましょう。
研修
人材育成のオーソドックスな手段が、研修の実施です。テーマを設定して社内研修の機会を設けることにより、従業員の知識やスキルの向上を図ることができます。講義形式による研修のほか、ウェブ会議システムを活用して場所の制約を受けない研修プログラムを提供する方法も効果的です。参加する従業員が同じ知識・スキルを身に付ける上で、研修は適した人材育成の手段と言えるでしょう。
OJT
OJT(On-the-Job Training)は、社内での実践を通して新人や未経験者を教育する人材育成の手法です。OJTを実施する場合、当該業務の経験が豊富な先輩社員や上司が教育担当者(トレーナー)として配置され、実際に業務を行いながら指導していきます。
OJTは、基本的にトレーナーの経験から学ぶため、より実践的で、すぐに業務で使えるノウハウや技術が身に付くのが特徴です。また、身近にトレーナーがいるため、フィードバックを受けて改善するプロセスもスムーズに実施できるでしょう。社内コミュニケーションが活性化し、トレーナーの教育スキルも向上します。
ただし、OJTはトレーナーの知識量や指導力、人間力に依拠するものです。そのため、下記のようなデメリットがあることに注意してください。
<OJTのデメリット>
- ・トレーナーによって成果に差が出る
- ・担当する業務にフォーカスするため、業務プロセス全体を体系的に学ぶのには適していない
- ・トレーナーのリソースが必要
Off-JT
社内のリソースを駆使して実践的に学ぶOJTに対して、Off-JT(Off-the-Job Training)は職場を離れ、外部の研修やセミナーを通じて業界知識やビジネスマナーなどを学ぶものです。中堅層のキャリアアップに必要なマネジメント研修など、階層別の教育もOff-JTで行われることが多いでしょう。
体系的な学びを得られることがメリットですが、Off-JTはあくまで実務を行うための土台になる知識のインプットであるため、実務にそのまま活かせるものではありません。Off-JTで学んだことを実践する機会としてOJTを活用すると、早期の知識定着が期待できます。
SD
SD(Self Development)は、自己啓発を指す人材育成の手法です。OJTやOff-JTとの大きな違いは、SDはあくまでも従業員の主体的な意思によって行われるものであり、会社が仕組みとして導入している教育制度はない点です。SDには、下記のように様々なやり方があります。
<SDの取り組み方の例>
- ・社外のセミナーに参加する
- ・書籍を読む
- ・eラーニングシステムで学ぶ
- ・資格を取得する
SDは、従業員に意欲があれば、隙間時間を活用して自己啓発を行えるのがメリットですが、強制力がないため途中で挫折してしまいやすいというデメリットもあります。
SDを推奨する場合、「書籍やセミナーの費用を会社が補助する」「eラーニングシステムを会社として契約する」といった企業側のサポートが必要不可欠です。
SMBCグループの「SMBCコンサルティング」では、お客さまの人材育成課題に応えるために、サブスクリプション方式による定額制クラブ(来場)・定額制Webセミナー(アーカイブ)などの、様々な教育サービスを提供しております。人材育成にお悩みをお持ちの方はご活用をご検討ください。
メンター制度
メンター制度とは、先輩社員が後輩社員の相談役となり、成長をサポートする仕組みのことです。身近に頼れる先輩がいることにより、困っていることや悩みを気軽に相談しやすくなります。
業務上のアドバイスや相談事だけでなく、精神面のケアもできる点がメンター制度のメリットです。
目標管理制度
目標管理制度(MBO:Management by Objectives)とは、従業員各々のスキルや経験に合った課題や目標を設定し、定期的に進捗状況を確認していく人材育成の手法です。上長が一方的に評価するのではなく、従業員による自己評価を通じて振り返りの機会を設けることにより、自身の課題を克服するためのアクションを自律的に講じやすくなります。
目標管理制度が有効に機能するには、従業員が自ら設定した目標と経営目標がリンクしていることが重要です。自社が目指す方向性や事業における現状の課題などを、従業員と共有しておく必要があるでしょう。
研修の種類と特徴
人材育成を実現するための研修は、実施する目的や対象となる従業員によって、いくつかの種類に分けられます。ここでは、「新人研修」「若手研修」「中堅研修」「ベテラン・管理職研修」それぞれの特徴を整理しておきましょう。
新人研修
新卒で入社した従業員を対象とした研修を、新人研修と言います。社会人として求められるマインドセットや基本的な業務知識・技術、最低限必要なマナーなどの習得が目的です。
中堅社員やベテラン社員が効果的な新人研修を行うためには、新卒世代の考え方を理解する必要があります。現在の新卒世代は「Z世代」とも呼ばれ以下のような特徴があり、「Z世代」に合った研修設計に課題を感じている事業者様は多いのではないでしょうか。そのような課題に照らし、外部の研修サービスを活用することは有効と言えます。
<Z世代の特徴>
- ・テキストよりビジュアル重視
- ・独立志向が強く、将来・未来を重視する。このことから研修に前向き
- ・インタラクティブ(双方向性の学習)に積極的に取り組む姿勢を持っている
新人研修が終わったら、職種ごとに分かれて専門的なスキル獲得を目指す研修を実施していくといいでしょう。
若手社員の育成手段について詳しく知りたい方は、こちらも合わせてご参照ください。
若手研修
若手の従業員を対象とした研修では、各々の特徴や傾向に合わせたプログラムを用意するのが望ましいと考えられます。若手の人材は価値観が多様化しており、一律のプログラムで研修を実施するよりも、個々の価値観に合うものを提供していく方が、効果を得られる可能性が高まるからです。
また、スキルや業務経験に差がつき始める時期でもあるため、個々の習熟度に応じた育成内容を設計する必要があります。スキルだけでなく価値観の変容も促し、自社が求める人材の育成やリーダーシップの醸成につなげることが大切です。
中堅研修
従業員ごとに業務知識や経験が細分化されていく中堅社員に関しては、スキルマップを作成して自身がどのレベルを目指すのかを明確にしておくことが重要です。育成する側に回るためのスキルも含めて向上を図り、能力や適性に応じて管理職への登用を見据えたマネジメントスキルの習得も目指すといいでしょう。時には戦略的な異動配置を行うなど、将来的に組織を支えていく人材の育成を目指す必要があります。
ベテラン・管理職研修
ベテランの従業員や管理職を対象とした研修では、部下の教育・指導方法の習得のほか、コンプライアンスに対する意識の向上、チームマネジメントの能力を身に付け実践していくといったことを目的としたプログラムを用意します。
コーポレートガバナンスの基本を理解し、上級管理職としてふさわしい行動規範を身に付けてもらうことが大切です。
SMBCグループの「SMBCコンサルティング」では、階層別・分野別・ビジネススキルの幅広いテーマに精通した専門講師陣による、年間約3,000講座以上のSMBCビジネスセミナー(来場・オンライン)などの、様々な教育サービスを提供しております。人材育成にお悩みをお持ちの方はご活用をご検討ください。
人材育成の進め方
実際に人材育成を行う際には、どのようにして進めていけばいいのでしょうか。人材育成の基本的な進め方について、順を追ってご説明します。
1. 自社の課題を洗い出す
まずは、自社の現状を確認し、成長のボトルネックとなっている部分を可視化します。
部署、年齢層、役職などで細分化して見ていくと、課題の所在がわかりやすく、人材育成の対象と手法を検討しやすいでしょう。
2. ツールやサービスを検討し、導入・展開する
明らかになった課題の解決に向けて、自社に合ったツールやサービスの導入を検討します。対象が新人ならOJTを充実させるためのツール、中堅層以上の専門的な知見を深めるならOff-JTに適したセミナーや研修の契約、スキルアップを目指してほしい従業員のモチベーションを高めるならeラーニングの導入など、対象に沿った内容と形式を考えましょう。
また、ツールが従業員にとってわかりやすく、使いやすいものであるかも重要なポイントです。継続的に使用して効果を測定できるよう、従業員の目線に立って、受け入れやすいツールを導入することが大切です。
ツールやサービスが決定したら、繁忙期・閑散期や採用スケジュールを含めた会社の年間予定を確認し、無理のない日程でツールやサービスの導入と展開の予定を立てます。一気に全社に向けて展開すべきか、一部の部署で導入効果を見た上で展開範囲を広げるべきか、社内への展開の仕方についても考える必要があります。
SMBCグループの「SMBCコンサルティング」では、お客さまの人材育成課題に応えるために、お客さまの課題に対するニーズやご要望に応じて研修内容をカスタマイズする社員研修(対面・オンライン)などの、様々な教育サービスを提供しております。人材育成にお悩みをお持ちの方はご活用をご検討ください。
3. 効果を検証する
新しい人材育成の手法を導入したら、一定期間を置いて必ず成果を確認しましょう。人材育成の目的に立ち返り、目的に対する達成度を測定・評価します。具体的には、下記のような点を指標として評価します。
<新しい人材育成手法を導入した時の評価指標>
- ・業績へのインパクト
- ・受講した従業員の行動変容
- ・知識やスキルの習得レベル
- ・研修への参画度、参加者の満足度
人材育成を成功させるためのポイント
人材育成を成功させるためには、どのような工夫が必要なのでしょうか。ここでは、人材育成を成功に導くための4つのポイントをご紹介します。
目的やゴールを明確にする
人材育成は、気を抜くと形骸化し、成果につながりにくくなります。OJTも、「目の前の業務をこなせるようにすること」にばかりフォーカスすると、OJTを行うことが目的になり、人材の定着や組織の売上アップといった本来の目的を果たすことができません。
人材育成に取り組む際には、まずは「誰に」「何のために」「どのくらいの」成長を期待するのかを明確にした上で、具体的な方法の検討と実践に移りましょう。
従業員が自発的に取り組むことができる環境を作る
研修やOJT・Off-JTに限らず、人から押しつけられたものや参加を強制されたものに対して、最初から意欲的に取り組める人は少ないはずです。企業にとって人材育成が重要であることは確かですが、一方的なタスクとして押しつけるだけでは、期待する効果は得られません。
人材育成のツールやサービスの導入に当たっては、従業員の自主性を引き出すきっかけづくりも併せて行うことをおすすめします。例えば、複数の研修からプログラムを選べるようにする、環境は会社が用意して目標設定は従業員に任せるといった取組をすると、能力開発やキャリアアップに主体的に取り組めるようになるでしょう。
階層別に適した人材育成を選ぶ
従業員の階層別に、現状の業務知識やスキル・経験に適した育成方法を選ぶことも重要なポイントです。全員に一律のプログラムを課してしまうと、新入社員にとっては難度が高すぎる一方で、中堅社員にとっては内容が基本的すぎるといった事態に陥りかねません。
また、世代によって研修への取り組み方や志向が違うことに配慮して、育成方法を選ぶことも重要です。特に新人研修に当たる中堅社員にとっては、新人世代の志向を理解することは難しい部分もあるため、外部の研修サービスなどを活用することで世代に合わせた研修を行うことができます。
現状のレベルと今後目指していくべきレベルを見極め、対象者に合ったプログラムを提供する必要があります。
指導側の育成にも注力する
人材育成を行う指導側の育成にも力を入れましょう。研修やOJTなどを実施しても、指導する側の知識やスキルが不足していたり、指導方法が適切でなかったりすれば十分な効果は得られません。人材育成の目的や趣旨を理解してもらい、目標を達成するための指導ができる人材を育てていくことが大切です。
社内で管理職研修やベテラン向けの研修を実施するのが難しい場合には、社外の研修プログラムなどを活用したOff-JTを実施するのもひとつの方法です。人材育成が将来にわたって継続的な取組になるよう、指導側の育成も意識していく必要があります。
目標に沿ったツールやサービスで、人材育成を成功させよう
企業の成長につながる人材育成を実現するには、目的と課題を明確にした上で目指すべきゴールを設定し、ベストなツールやサービスを導入することが大切です。
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