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公開日:2022.12.28

ジョブ型雇用とは?従来の雇用との違いやメリット・デメリットを紹介

ジョブ型雇用とは?従来の雇用との違いやメリット・デメリットを紹介

社会情勢の変化や、働き方に対する価値観の多様化などを背景に、「ジョブ型雇用」への関心が高まっています。実際に、従来の「メンバーシップ型雇用」と呼ばれる雇用方法から、ジョブ型雇用への切り替えを行う企業も増えてきました。
しかし、安易なジョブ型雇用の導入は、従業員の混乱を招く可能性があります。この記事では、ジョブ型雇用を導入するにあたって知っておきたいジョブ型雇用のメリット・デメリットや必要な準備などを、事例を交えて解説します。

欧米で主流の雇用形態であったジョブ型雇用

ジョブ型雇用は、職務内容(ジョブ)を明確に定義して職務記述書(ジョブディスクリプション)等で具体的に特定し、その職務を遂行するにふさわしいスキルや実務経験を持つ人を採用する手法です。必要な知見や技術、経験のほか、勤務時間、勤務地などの勤務条件についても採用前に提示し、合意した上で雇用契約を結びます。

ジョブ型雇用は、元々欧米で主流の雇用形態でしたが、時代の変化とともに日本でも注目されるようになりました。最近では、複数の大手企業がジョブ型雇用を導入するなど、従来の雇用制度の在り方を見直す動きが顕著です。働き手側にも、日本の賃金水準が長く低迷していること等を背景に、主体的にキャリアを構築していく欧米型の働き方を目指す人が増えつつあります。

サイトエンジン株式会社が2022年に実施した調査によれば、ジョブ型雇用を現在導入・実施している企業は36%で、そのうち実際にジョブ型雇用が運用されていると答えた企業は78.3%でした。
ジョブ型雇用は、すでに多くの企業に認知され、実際に浸透しつつあるといえそうです。

ジョブ型雇用の実施状況

(※)出典:ラクテス『【2022年9月実施】ジョブ型雇用の導入率、運用状況、導入理由などに関するアンケート調査』|サイトエンジン株式会社

日本企業で長く採用されてきたメンバーシップ型雇用

導入が進む欧米型の「ジョブ型雇用」と対比する形で、日本企業で長く採用されてきた雇用形態は「メンバーシップ型雇用」と呼ばれることがあります。
メンバーシップ型雇用は、倒産等が起きない限りは定年まで雇用し続ける終身雇用制度を背景に、職種や職務内容を限定せずに新卒者を一括採用し、会社の業務命令の下で職務をローテーション(配置転換)しながら経験を積ませる仕組みです。仕事を起点として「人と仕事」が結びつくジョブ型雇用に対して、メンバーシップ型雇用は企業を起点として「人と企業」が結びつく点が大きな違いです。

日本でメンバーシップ型雇用が普及したのは、戦後の高度経済成長期でした。当時、大きく落ち込んだ経済を立て直すには、大量の人材を一括採用して育成し、長期的に貢献してもらうシステムが理想的だと考えられていたのです。
成熟した市場が少なく、人材の流動性や専門性の低さがさほど問題にならなかったことも普及につながったといえるでしょう。

なぜジョブ型雇用が注目されているのか

近年、なぜジョブ型雇用は注目されているのでしょうか。ジョブ型雇用が脚光を浴びている背景について、掘り下げていきます。

なぜジョブ型雇用が注目されているのか

経団連の提言

ジョブ型雇用が望ましい雇用の在り方として台頭したきっかけのひとつに、日本経済団体連合会(経団連)が2020年に公表した「2020年版 経営労働政策特別委員会報告」があると指摘されることがあります。この中で経団連は、日本型雇用システムを「メンバーシップ型」と捉え、そのメリットを活かしながらも適宜ジョブ型雇用を取り入れていくべきだと提言しました。この提言が、雇用形態の見直しの機運を高めたと考えられます。

専門人材を獲得し、国際競争力を上げる目的

ビジネスがグローバル化し、専門性が高まる中、他社との差別化を図って国際競争力を上げるには、デジタル人材をはじめとして、専門性の高い人材の存在が欠かせません。
このような時代に合った人材を獲得するために、スキルや職務内容を限定し、明確化したうえで、特定の職務に特化したスペシャリストを採用する傾向が高まっているのも、ジョブ型雇用の導入が進んでいる背景のひとつです。

ダイバーシティの浸透

少子高齢化に伴う労働力の減少や、急速なグローバル化に対応するため、多くの企業で多様な人材を確保する必要性が高まっています。また、働き手の側でも、在宅や時短で育児・介護と両立したい人のほか、外国人労働者の増加などを受け、さまざまな価値観と働き方に対するニーズが高まっています。これらのニーズに対応するには、働き手が多様な働き方を選択できるジョブ型雇用のほうが適しているという見方もできます。

終身雇用制度の限界

日本に長く根付いていた終身雇用制度は、右肩上がりの経済成長を前提として浸透していきました。しかし、経済の先行きが不透明な状況下では、多くの人材を長く雇用することで人件費が増大する終身雇用の維持が困難であると考える企業も少なくないでしょう。
組織の硬直化への懸念や、若手の優秀な人材を抜擢しにくいことも、企業が終身雇用制度からジョブ型雇用へのシフトを目指す一因になっています。

コロナ禍の影響

コロナ禍によって在宅勤務やテレワークの導入が進み、企業は従業員の業務の成果を体感することが難しくなったことも要因であると指摘されることもあります。在宅勤務やテレワークの導入と、仕事を起点とする雇用形態であるジョブ型雇用の導入とは必ずしも直接関連するものではありませんが、既存の人事制度の中で業務目標や業務成果が不明確であり、在宅勤務やテレワークの導入による対面でのコミュニケーションの機会が減少により、業務目標等が一層不明確になったと感じる方にとって、自身に求められる職務内容や業務目標が明確になるジョブ型雇用に魅力を感じるようになったと考えられます。

ジョブ型雇用のメリット

ジョブ型雇用には、求職者・企業それぞれにメリットがあります。各々の立場からジョブ型雇用にはどのようなメリットがあるのかを見ていきましょう。

求職者のメリット

ジョブ型雇用の場合、求職者は自分の得意分野に特化して、能力を十分に発揮できます。また、特定の分野の業務のみを実施することで、専門性やスキルがさらに高まり、仕事の効率や生産性向上にも貢献できるでしょう。
また、ジョブ型雇用では成果が評価に直結するため、給与も上がりやすい傾向があり、モチベーション向上にもつながります。

企業のメリット

企業にとってのジョブ型雇用の最大のメリットは、今後の事業に不可欠であるにもかかわらず、必ずしも十分な人材を確保することが難しいAIやIoTといった分野やその他のデジタル分野において、専門性の高い人材を迅速に採用し、確保できることです。他社に先駆けて専門人材を獲得し、育成することで、生産性の向上、業務効率化、競合優位性の獲得などが期待できます。
また、採用時に仕事内容や勤務地などの条件を明確に提示しているため、ミスマッチによる早期離職の防止も期待できます。

ジョブ型雇用のデメリット

ジョブ型雇用を導入する場合、デメリットがないとはいえません。ジョブ型雇用のデメリットについても見ていきましょう。

求職者のデメリット

ジョブ型雇用は、職務内容と求めるスキルを限定して採用する雇用形態です。入社後に、事業の撤退などの何らかの事情で担当職務がなくなった場合や、自らのスキルが企業の要求する水準に達しないと評価された場合には、他部署への異動が難しく、最終的に離職せざるを得ない場合が生じる可能性があります。
また、専門性への企業の期待が高いため、研修やセミナーを主体的に受けるなど、常に最新の知見と技術を身につけるための自己研鑽が負担であると感じるかもしれません。

企業のデメリット

ジョブ型雇用は、即戦力になるスペシャリストを育成できる一方、ゼネラリストの育成には向いていない面もあります。そのため、例えば、事業内容の本質的な変更や転換を余儀なくされる可能性が低く、むしろ、長期にわたって従業員間で共通の価値観や判断軸を持った同質性の高い組織が求められる企業にとっては、ジョブ型雇用を採用するインセンティブは低いといえます。
また、ジョブ型雇用で採用した従業員の転勤や配置転換の必要が生じても、柔軟に職務内容を変更しにくく、その際は新たな人材の登用が必要となる可能性もあるでしょう。
同じ職務で自社よりも好条件を提示する企業があった場合には、その企業に人材が流れやすいことにも注意が必要です。

ジョブ型へと転換した企業の事例

実際にジョブ型雇用を採用したり、既存の人事評価システムを「ジョブ型」に転換したりする際、企業は制度をどのように整える必要があるのでしょうか。ここでは、ジョブ型雇用を採用したり、既存の人事評価システムを「ジョブ型」に転換したりしている企業の事例をご紹介します。

美容メーカーA社の事例:評価を「能力」から「職務(ジョブ)」に移行

老舗美容メーカーであるA社は、グローバル化が進む世界で勝てる組織になるには、「強い個」を作るタレントマネジメントやパフォーマンスマネジメント、自律的なキャリア開発支援が重要だと捉え、国内の管理職や総合職の採用をメンバーシップ型からジョブ型に変更しました。社員の評価基準を「個人の能力」から「職務における成果」に変更し、グローバルスタンダードに沿った公正な処遇を実現したのです。
A社は、グローバル共通の選抜・評価や人材育成プログラムを導入し、社員それぞれの専門性を成長させ、その専門性が活かされる業務を任せることで活躍の場が広がるよう支援しています。

食品メーカーB社の事例:管理職に絞ってジョブ型の評価・報酬制度を導入

多様な働き方やライフプランを尊重し、「フレックスタイム勤務制度」や「テレワーク勤務制度」「育児短時間勤務制度」「自己都合退職者の再雇用制度」などを導入しているB社。
同社は、グローバルな人事制度の一環として、管理職からジョブ型を導入しました。「年功型」から「職務型」等級制度への移行を行い、働く場所や職務の内容にかかわらず、正当で公平な評価が受けられる環境を目指しています。

情報・通信業C社の事例:テクノロジーの活用で、時間や場所にとらわれず成果を出す働き方を実現

ジョブ型の導入とともに、リモート会議を前提とした会議室のIT化、クラウド会議システムの拡充、リモートアクセス環境向上のための設備増強など、テクノロジーを駆使した環境整備を実行したC社。業務内容に合わせて働く場所の選択を可能にしたほか、働いた時間ではなく成果や挑戦、能力を評価して処遇に反映する仕組みを整えました。
同社は働き方と文化の改革により、社員が持つ能力の最大化とエンゲージメントの向上による持続的な成長を目指しています。

ジョブ型雇用の運用や評価は、ITの活用がカギに

ジョブ型雇用制度は、従来のメンバーシップ型雇用制度に比べ、技能や専門性の高い人材を採用しやすくなります。テレワークや裁量労働・フレックスタイム制度といった柔軟な働き方とも親和性が高いため、導入を進める企業は今後も増加していくでしょう。
しかし、ジョブ型雇用は、日本に長年根付いているメンバーシップ型を基本とした人事制度やその背景にある事業方針・事業戦略と両立しない部分も多く、安易に導入するとさまざまな問題を引き起こす可能性があります。
ジョブ型雇用は、仕事を起点として「人と仕事」が結びつく雇用形態であるのに対して、メンバーシップ型雇用は企業を起点として「人と企業」が結びつく雇用形態である点を踏まえ、それぞれの企業の事業方針や事業戦略を明確にしたうえで、どのような人材が必要であり、その獲得や育成のためにはどのような雇用形態や人事評価制度を採用することが最適であるかといった観点から、ジョブ型雇用の導入を検討することが大切です。
納得感のある雇用・人事評価制度を整え、人材の能力を引き出し、高い成果につなげることができれば、経営の安定も実現できるのではないでしょうか。

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(※)2022年12月28日時点の情報のため、最新の情報ではない可能性があります。
(※)法務・税務・労務に関するご相談は、弁護士や税理士など専門家の方にご相談いただきますようお願い申し上げます。

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