- ホーム
- 法人のお客さま
- Business Navi 〜ビジネスに役立つ情報〜
- 人事に関する記事
- タレントマネジメントとは?導入のポイントや成功事例を解説
人事
公開日:2023.04.07
更新日:2024.11.12
タレントマネジメントとは?導入のポイントや成功事例を解説

タレントマネジメントは、人材に関する情報を重要な情報資源と捉え、有効活用していく上で欠かせません。近年は人材不足が深刻化しつつある業界が増えていることに加え、ステークホルダーから求められる人的資本経営を実現していく意味においても、タレントマネジメントの重要性は以前にも増して高まっています。
一方で、タレントマネジメントに取り組むメリットや、具体的な進め方を把握しておきたいと考えている事業者さまも多いのではないでしょうか。
この記事では、タレントマネジメントが注目される背景や取り組む目的、タレントマネジメントによって実現できること、具体的な実施方法等について解説します。
タレントマネジメントとは?
タレントマネジメントとは、従業員が持つ能力やスキル等の人材情報を経営資源として認識し、組織における採用や配置、育成に活用することで、従業員および組織の生産性最大化を図る人材マネジメント手法のことです。タレントマネジメントは、組織の経営上の目的を達成するために実施するものであり、人事戦略そのものでもあるともいえます。
タレントマネジメントは、正社員だけではなく、アルバイトやパートを含めた全従業員が対象となります。
タレントマネジメントが日本で注目される背景
タレントマネジメントの概念は、欧米で1990年代に提唱されたものです。日本で本格的に注目されるようになったのは2010年代で、以下のような背景が考えられます。
少子高齢化に伴う人材不足や働き方改革の推進
わが国では急速な少子高齢化の進行による、深刻な労働力不足が問題になっています。そのため、限られた人材資源を活用し、いかに生産性を維持・向上させていくかが企業にとって重要な経営課題のひとつです。
また近年、「働き方改革」が推進されていることもあり、企業が従業員にとって多様で柔軟な働き方を実現できる環境を整備する必要があり、その方法のひとつとしてタレントマネジメントが注目されています。
ステークホルダーから求められる人的資本経営の実現
タレントマネジメントへの取組は、ステークホルダーから求められる人的資本経営の実現という意味においても重要な意味を持っています。人的資本経営とは、従業員を企業の資本と捉え、価値を最大限に引き出すための中長期的な投資を行うことにより、企業価値の向上を目指す経営手法のことです。
投資家の投資判断材料は多岐にわたりますが、そのうちのひとつとして人的資本経営を実現しているかどうかが挙げられます。このことを裏付けるかのように、2023年3月期より有価証券報告書における人的資本の情報開示が義務付けられました。
具体的には、人材育成方針や社内環境整備方針に関する情報の開示が求められていることから、タレントマネジメントへの取組は欠かせないものといえるでしょう。
価値観・人材の多様化
正社員や契約社員等の雇用形態、働く時間帯・場所、国籍等、働き方や価値観は時代とともに多様化しています。それに伴い、組織が管理すべき人材の幅が広がっており、多様な価値観を持つ従業員がパフォーマンスを最大化できるような仕組みを整備する必要があるため、タレントマネジメントが注目されています。
グローバル化等の急激な市場変化
近年、グローバル化や感染症流行による生活様式の変化等に伴い、市場環境の変化が顕著です。急激な市場変化に対応するためにも、個々の従業員のスキル・特性をしっかりと把握し、能力を最大限に発揮できる仕組みが必要です。
テクノロジーの進化
IoTや人工知能の進展等、テクノロジーの進化を受け、人事領域のデジタル技術であるHRTech(Human Resources Technology)等が進化しています。これにより、人材情報を一元管理・分析する仕組みが整い、タレントマネジメントが実施しやすくなりました。
タレントマネジメントの目的
タレントマネジメントの主な目的は、組織の経営目標を達成することです。
目標達成するためには、戦略的な人材調達・人員配置・人材育成等の検討や、タレントの能力を最大限に発揮するための人事戦略を実行していくことが重要です。
また、それらの施策は個別に実施するのではなく、経営目標達成に向け、統合した施策として人材をマネジメントしていくことが基本的な考え方とされています。

戦略人事とは?経営戦略と人材戦略を連動させた人事施策について解説
戦略人事の重要性と実践方法を解説します。人材ポートフォリオ構築やタレントマネジメント導入などの具体的施策、組織連携の強化法や障壁の克服策を紹介します。
詳しく見る
タレントマネジメントにより実現できること
では、実際にタレントマネジメントを実施することにより、具体的にどのような効果が得られるのでしょうか。タレントマネジメントによって得られる具体的な効果は、以下が考えられます。

中長期的な人材育成
タレントマネジメントにより、従業員個人が思い描くキャリア像を明確化することで、キャリア像実現に向けた研修やキャリア支援体制の整備を行う等、中長期的な人材育成支援を行うことが可能です。手厚い人材育成支援を行うことは、リテンション施策として、従業員の離職防止にも効果があると考えられます。
適材適所の人材配置
従業員の経歴やスキル等を一元管理し、データ化・可視化することにより、従業員に合った適切な人材配置が可能です。また、部署間の人材の異動・連携を効率的・効果的に行うことができます。
公正な人事評価
タレントマネジメントにより、従業員に関する経歴やスキルを一元管理し、評価基準を明確にすることで、公正な人事評価を実施することができます。主観の入りにくい、より公正な評価基準があれば、従業員から組織に対する信頼を向上させることも可能でしょう。
従業員のエンゲージメント向上
タレントマネジメントを実施することで、従業員一人一人により適した人材育成・配置が可能となるため、従業員が自己の成長や、組織に対する貢献を実感しやすくなります。それにより、従業員のモチベーション向上や、エンゲージメント向上等の効果が期待できます。
また、人材管理に係るコスト削減に加え、従業員のパフォーマンスが最大化されることによって、組織全体の生産性向上も可能です。
タレントマネジメントの実施方法
では、具体的にタレントマネジメントを実施するにあたり、何をするべきなのでしょうか。タレントマネジメントにおいては、以下5つのステップを繰り返し実施し、PDCAを回すことが重要です。ここでは、具体的な実施方法について解説します。

1. 目的設定
始めに行うべきことは、タレントマネジメントを実施する目的の設定です。ここでは、組織の経営上の目的を達成するために、なぜタレントマネジメントを行うのか、中長期的な目標を設定することが重要です。
2. 現状把握
次に、自社が保有する人材情報を可視化し、セグメントごとに整理します。具体的な作業は、タレントマネジメントの対象となる従業員の人数や、経歴・スキル等、(1)で設定した目標達成のために必要な項目に沿って、人材情報を数字・データで管理すること等です。
3. 人材計画の作成
自社の現状をセグメントごとに把握できたら、各セグメントに適した採用/育成・活用計画を立てます。採用/育成・活用計画の作成にあたっては、組織目標達成のため中長期的な目線で実施することが重要です。
4. 人材計画の実施
作成した人材計画に基づいて、実際に人材採用/育成・活用を行います。従業員を配置・活用する際には、実際に配置された現場において、従業員が計画通りに能力を発揮・向上できているか、エンゲージメントはどうなっているか等をこまめにチェックすることが大切です。そのためにも、人材計画を実施した後で、現場としっかり連携することを意識する必要があります。
5. レビュー
最後に、実際に実施した人材計画について、その効果を確認し、人材計画に還元していきます。(1)や(3)で制定・作成した目標や計画に対し、現状のギャップを把握しその要因を分析したら、再度(1)〜(4)を繰り返すことで、人材計画のさらなるブラッシュアップが可能です。
タレントマネジメントシステムの概要と選定方法
タレントマネジメントを実施するにあたっては、タレントマネジメントシステムの導入が効果的といえます。
タレントマネジメントシステムとは、従業員に関する情報を一元管理し、タレントマネジメントに役立てることができるシステムです。代表的な機能としては、「データベースにおける人材データの一元管理」「人事評価」「配置シミュレーション」「アンケート機能」等があります。
タレントマネジメントシステムの選定方法
タレントマネジメントを行うにあたって必要不可欠ともいえるタレントマネジメントシステムですが、実際にはどのようなシステムを導入するのが良いのでしょうか。自社に適したシステムを選ぶためには、以下の観点が重要です。
・目的:
タレントマネジメントシステムを導入する目的に合わせて、必要な機能を備えたシステムを選択しましょう。自社の目的にそぐわないシステムを導入すると、システム導入により期待していた効果を得ることが難しくなります。
・操作性:
デザインや項目等について、なるべく簡単に操作できるようなシステムを選びます。特に、実際にシステムを操作する経営層、マネジメント層、人事にとって操作性が良いかという観点が重要です。
・費用対効果:
タレントマネジメントシステムの導入にあたっては、費用対効果が重要です。組織のパフォーマンス最大化や従業員のエンゲージメント向上等、システム導入の目的に照らした費用対効果について検討し、導入するシステムを決定します。
・サポート体制:
費用をかけて導入したシステムを使いこなせない場合、システム導入で期待していた効果を得ることは難しくなります。導入時や導入後の運用・分析に関して、サポート体制が充実しているシステムを選ぶことで、よりスムーズにシステム導入の効果を実感できるでしょう。
タレントマネジメントサービスにご関心のある方は、こちらも合わせてご参照ください。
タレントマネジメント実施の成功事例
タレントマネジメントがどのような効果をもたらすか、具体的に知りたい事業者さまも多いのではないでしょうか。様々な業界の成功事例をご紹介します。
インターネット関連サービス業A社:社内の課題を特定し、一人ひとりの能力が発揮される環境づくりを実施
インターネット関連サービスを提供するA社では、多様なバックグラウンドを持つ従業員一人ひとりの能力が最大限発揮されるような環境づくりに努めました。具体的には、社内インタビューやアンケートの実施により社内の課題を特定し、従来の採用・育成計画の刷新や、人事システムの一斉導入等のインフラ整備を行いました。
その結果、安定した採用人数の確保や、社内研修への高い満足度の獲得、適切な人材配置等の成果を出し、従業員の能力を最大限発揮させることに成功しています。
製造業B社:タレントマネジメントにより、ビジネスリーダー育成の基盤を構築
グローバルに事業を展開するB社は、人材の適切配置と教育にフォーカスしてタレントマネジメントを実施しました。具体的には、日本人のビジネスリーダー育成を目的とした人材育成計画を策定し、その効果を測定する仕組み、および結果を人材育成計画に反映させる仕組みを整備することで、人材育成の基盤を構築しています。
電子部品メーカーC社:グループ内の全人材情報を可視化し、企業理念の実践に取り組む
電子部品メーカーC社では、世界規模で展開する同社グループにどのような能力や経験、志向をもった人材がいるのかを可視化し、企業理念の実践に取り組む最適かつ最高のチームを作るためにタレントマネジメントシステムを導入しました。
主な目的として、全従業員の人材情報を可視化することにより組織成果の最大化を図るとともに、従業員が自身の経験やキャリア志向等の情報を具現化してアピールすることにより、モチベーションを高め続けることが挙げられます。同社がタレントマネジメントを通じて実現を目指しているのは、「サクセッションプランに基づく後継者育成とパイプラインの強化」「事業戦略に基づく先回りの採用・育成・配置による組織編成」「適切な意思決定のために求められるタイムリーで正確な人件費等の情報の把握」「従業員のキャリア志向を尊重した人材配置」の4点です。
製薬メーカーD社:リーダー向けのダッシュボードを活用し、組織の全体像を把握
製薬メーカーD社では、人事データを可視化・共有化することにより、組織の最適化を促進するとともに当事者意識の醸成を目指しています。具体的な取組のひとつが、リーダー向けのダッシュボードである「HR Leadership Dashboard」の活用です。
このツールを活用することで、組織の人員構成や採用・退職の状況をはじめ、SPOC(Span of Control:マネージャー1人あたりが管理する部下の人数)、チーム規模等が可視化されます。個別のデータからは気付きにくい課題を認識しやすくなることで、組織の全体像を把握しながら戦略的に業務へと取り組める仕組みの構築が可能となった点が大きなメリットです。
エネルギー・サービス業E社:タレントマネジメントシステムを活用し、人材を最大限に活かす
エネルギー・サービス業を行っているE社では、タレントマネジメントシステムを活用して、組織のニーズに応じた人材の育成、適切な人材配置を実現しています。システム活用を通じて実現を目指したのは、職務要件の明確化と人材情報の集約のほか、従業員のスキルや経験を最大限に活かす仕組みの構築です。従業員を対象に意識調査を実施し、その結果に基づくパフォーマンス向上策を検討することにより、従業員エンゲージメントを高めるための施策を講じやすくなりました。
さらに、専門性を備えた人材の採用強化と多様なキャリアパスの提供により、組織全体の成長と個々の従業員のキャリア発展にも寄与しています。
プラントエンジニアリング業F社:タレントマネジメントシステムを基盤に、組織の暗黙知を可視化
プラントエンジニアリング業のF社では、それまで暗黙知だった代表的なキャリアパスを体系化し、教育異動計画(定期異動)に反映する仕組みの構築を進めています。タレントマネジメントシステムを導入し、従業員一人ひとりのキャリア設計と進捗状況が本人・上司・HRO(Human Resource Outsourcing:人事部機能のアウトソーシング)に共有される基盤を整備しました。この基盤を活用することにより、従業員は自身のキャリア設計を明確にし、進捗を実感しながら経験を重ねやすくなります。
タレントマネジメントシステムによって組織の暗黙知を可視化し、将来的に組織を引っ張っていく人材の育成に役立てている好事例です。
自動車部品メーカーG社:人的資本経営の強化に、タレントマネジメントシステムを活用
自動車部品メーカーG社は、かねてから経営戦略に沿った適材適所の人材配置や、従業員の能力発揮を後押しする仕組みの推進に取り組んできました。2023年度より人的資本経営をさらに強化するため、新たにタレントマネジメントシステムを導入しています。
導入の主な目的は人的資本を把握し、価値向上を図ることです。人材ポートフォリオに必要な人材を選抜するため、タレントマネジメントシステムを活用してコンピテンシー(高い業績を上げる人に共通する行動特性)や経歴を精査。補いきれない場合にはリスキリングの実施や外部からの新規採用を行う等、経営戦略と整合性のとれた人事戦略の構築を目指しています。タレントマネジメントシステムを、人的資本経営の強化に役立てている好事例です。
タレントマネジメントシステムを活用し、人事戦略を効率的に立案・実行しよう
タレントマネジメントを行うことで、従業員一人ひとりがもつ能力やスキル等の人材情報を一元管理・活用し、組織全体の目標を達成する人事戦略を立てることができます。また、タレントマネジメントを行うにあたっては、自社の目的に適したタレントマネジメントシステムの導入が有効です。
タレントマネジメントサービスにご関心のある方は、こちらも合わせてご参照ください。
SMBCグループが提供する「PlariTown」は、タレントマネジメントをはじめDX推進や業務効率化に資する多様なデジタルサービスや、業界ニュース・レポート等ビジネスに役立つ情報を、ワンストップで利用できるプラットフォームです。サービス導入に関する相談受付やお客さまの業務実態に合わせた提案も実施しており、DX推進をサポートします。
タレントマネジメントの導入・実施を検討されている事業者さまは、ぜひ「PlariTown」をご活用ください。