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公開日:2023.04.07

eKYCとは?オンライン本人確認の導入方法や導入メリットなどを解説

eKYCとは?オンライン本人確認の導入方法や導入メリットなどを解説

さまざまな契約や取引の際、「本人確認」が必要となるケースは少なくありません。近年、eKYCと呼ばれるオンラインで本人確認が完結するサービスが増えていますが、その背景として新型コロナ影響などによる非対面取引の拡大やAI等による生体認証技術の発展などがあります。
ここでは、eKYCの特徴や導入が進んでいる理由、具体的な導入方法のほか、利用シーン、導入メリットなどについて解説します。

オンラインによる本人確認を行うeKYC

eKYC(イーケーワイシー)はElectronic Know Your Customerの略で、「オンラインによる本人確認」を表す言葉です。まずはKYCの概要と、なぜeKYCが生まれたのか確認していきましょう。

KYCの概要

KYC(Know Your Customer)を直訳すると、「顧客を知る」という意味になります。従来より、KYCという用語は、銀行の口座開設やクレジットカード会社のクレジットカード発行の際に必要となる犯罪収益移転防止法に基づく本人確認手続きなどを指す言葉として使用されていました。

KYCの主な目的はマネー・ローンダリング及びテロ資金供与の防止にあります。たとえば、金融機関の口座は、違法な起源を偽装する目的で用いられる可能性があり、反社会的組織によるマネーロンダリングなどに悪用されるリスクをはらんでいます。こうしたリスクを回避し、事業の健全性を維持するために金融機関等その他の特定事業者が顧客と一定の取引を行うに際して取引時確認が必要とされ、KYCが行われてきたのです。

eKYCが導入された背景

従前は、非対面取引の場合、顧客から本人確認書類またはその写しの送付を受け、当該本人確認書類等に記載されている顧客の住居に宛てて、転送不要郵便を送付することなどが必要となり、事実上、オンラインで手続きを完結させることができませんでした。しかしながら、2018年11月、犯罪収益移転防止法(犯罪による収益の移転防止に関する法律)の施行規則が改正・施行され、オンラインで完結する本人確認の方式(eKYC)が認められました。このオンラインで完結する自然人の本人特定事項の確認方法の追加は、金融庁が掲げた「金融デジタライゼーション戦略の11の施策」の取組みの一つともされています。本改正では、郵送を必要としない本人確認の手段が新たに追加されたほか、容貌確認などの要件が新たに加わったのです。詳しくは、『金融庁「犯罪による収益の移転防止に関する法律施行規則の一部を改正する命令」の公表について』をご覧ください。eKYCは、近年多発する国際的なテロ資金対策や、金融機関を狙ったサイバー攻撃などへの対策として、本人確認の厳格化が進んだために導入されました。

eKYCの認可により、銀行などを利用するユーザーは、オンラインで自分の顔と身分証明書を撮影し、アップロードするだけで認証が可能となりました。早ければ本人確認を即日完了できるようになり、利便性が大きく向上したのです。

社会でeKYCの導入が進んでいる理由

近年、eKYCは多くの業種で急速に導入が進んでいます。続いては、eKYCの利用が社会に広がっている主な理由を、4つ紹介します。

社会でeKYCの導入が進んでいる理由

本人確認の厳格化

前述の通り、eKYCは、厳格な本人確認が求められる中、利便性をもたらす方法として導入が進んでいます。また、2020年4月の犯罪収益移転防止法の改正・施行で、オンライン以外の方法による本人確認方法が厳格化されました。たとえば、郵送による手続きで必要な本人確認書類が従来の1点から2点に変更されたのです。一方、eKYCであれば、本人確認書類は従来通り1点で良いとされています。郵送等のオフラインでの本人確認のハードルの高まりが、eKYCを用いたオンラインでの本人確認の導入が進む一因といえるでしょう。

オンラインによる本人確認へのニーズの高まり

スマートフォンが広く普及したことにより、オンラインによる本人確認へのニーズは高まる一方といえます。郵送による書類のやりとりは煩雑になりやすく、手続き自体にも時間がかかるからです。オンラインで本人確認を完結させたいというニーズの高まりが、eKYCの導入が進んでいる主な要因といえるでしょう。

eKYC適用範囲の拡大

eKYCの適用範囲が拡大され、幅広い業種で活用可能となったことも、eKYCの導入が進んだ理由のひとつです。キャッシュレス決済をはじめ、不動産契約やクラウドファンディング申込時などにも、eKYCが活用されています。また、携帯電話の新規契約やMNP(他の携帯電話会社の通信サービスに乗り換える際に、既存の携帯電話番号を継続できる制度)の携帯電話不正利用防止法に基づく本人確認にもeKYCが利用されています。

eKYC開発ベンダーの台頭と各社提供サービスの拡充

改正犯罪収益移転防止法の改正後施行規則ではeKYCの要件として、顔写真付きの本人確認書類1点に加えて「本人の容貌の画像の送信」を定めています。この要件を満たす認証方法をスピーディーに導入できるeKYCサービスを開発・提供するベンダーの台頭と、各社が提供するサービス内容が充実しつつあることも、eKYCが急速に普及している理由のひとつといえるでしょう。

eKYCのチャネルと選び方

eKYCのチャネルには大きく分けて「ブラウザ型」と「アプリ型」の2種類があります。それぞれの特徴と選び方のポイントについて見ていきましょう。

ブラウザ型:eKYCのシステムとの連携のみで本人確認が可能

ブラウザ型とは、自社Webサイトなどにアクセスしてもらい、ブラウザ上で本人確認を行う方式のeKYCを指します。認証用アプリ等を新たにユーザーへ提供する必要がなく、eKYCのシステムとの連携のみで本人確認が可能となる仕組みを実現させています。

アプリ型:アプリだけで本人確認が完結

アプリ型とは、認証用アプリをダウンロードしてもらい、アプリ側で本人認証を行う方式のeKYCです。認証用アプリの開発・提供が必須となるだけでなく、ユーザー側もアプリをダウンロードする必要があります。一方、アプリだけで本人確認が完結するため、ユーザーにとって負担が少なくなります。

アプリ型かブラウザ型か、自社サービスの提供方法や利用顧客層を軸に選ぶ

アプリ型かブラウザ型は、サービス自体をどのような形態で提供しているかを踏まえて検討すると良いでしょう。自社サービスのアプリがある場合、アプリ内にeKYCを組み込むことで、提供するサービスと一貫したUXの中で、本人確認をすることができます。
また、顧客の購買行動や年齢層といった要素から、アプリ型・ブラウザ型のどちらが顧客により負担感が少ないかを判断する必要もあるでしょう。自社が導入したい本人確認方法に加え、アプリ型・ブラウザ型の特性の違いを踏まえてeKYCの種類を選ぶことをおすすめします。

eKYCによる本人確認の種類と方法

eKYCによる本人確認方法は、犯罪収益移転防止法の改正後施行規則で定められています。具体的にどのような確認方法があるのか、利用可能な本人確認書類の種類と併せて押さえておきましょう。

eKYCによる本人確認の種類

eKYCによる本人確認には、主に5つのパターンがあります。犯罪収益移転防止法施行規則に追加された「オンラインで完結する自然人の本人特定事項の確認方法」のうち、本人確認書類を用いる方式は下記の5つです。

<eKYCによる本人確認の種類>

  • (1)「写真付き本人確認書類の画像」+「本人の容貌の画像送信」
  • (2)「写真付き本人確認書類のICチップ情報」+「顧客の容貌の画像送信」
  • (3)「本人確認書類の画像またはICチップ情報」+「銀行等への照会または顧客名義口座への少額振込」
  • (4)「本人確認書類の画像またはICチップ情報の送信」+「顧客宛の転送不要郵便の送付」
  • (5)「公的個人認証サービスの署名用電子証明書(マイナンバーカードに記録された署名用電子証明書)」

このうち、(1)の方式は、対応している本人確認書類のカバレッジが広いことから最も多く利用されており、現状eKYCの主流になっています。

eKYCによる本人確認の方法

前述の(1)の方式を採用する場合、ユーザーは下記の2点を送信することで本人確認の申請を行います。

<本人確認に必要なデータ>

  • ・顔写真付きの本人確認書類画像
  • ・本人の容貌画像(その場で撮影した顔写真)

本人確認書類は、表面・裏面の画像のほか、斜めから撮影された画像によって厚みを確認し、真正性を判断します。また、あらかじめ保存・加工された画像ではなく、リアルタイムで撮影された画像であることを確認することにより、なりすまし不正利用を防いでいます。なお、本人確認書類の画像は「特定事業者が提供するソフトウェアを使用して撮影」されたものである必要があります。

本人の容貌撮影は、スマートフォンの内カメラを使用したセルフィー撮影を行います。その後、ライブネスチェックの画面に切り替わり、導入しているチャネルごとに定められた動作を行うことで、リアルタイムで撮影されていることを確認します。たとえば、Polarify eKYCでは、ブラウザ型は顔をスマートフォン画面に近づける動き、アプリ型はまばたきをユーザーに求め、所定の動作が確認できた場合に完了画面へ遷移します。撮影されたセルフィー顔画像と本人確認書類の顔写真を突合した結果を事業者へお返しし、eKYCによる本人確認が完了します。

eKYCで利用可能な本人確認書類の種類

eKYCで利用可能な本人確認書類には決まりがあります。本人確認書類としては、「氏名・住所・生年月日が記載された写真付きの本人確認書類原本」が認められており、利用できるものは下記のとおりです。

<eKYCを利用できる本人確認書類の例>

  • ・運転免許証
  • ・マイナンバーカード
  • ・運転経歴証明書
  • ・在留カード
  • ・特別永住者証明書
  • ・住基カード
  • ただし、行政手続きなどの公的個人認証(電子署名)で利用できるのは、マイナンバーカードのみです。

eKYCの利用シーン

eKYCは利用シーンが広がっており、多種多様な業界で申込・契約時の本人確認に用いられています。ここでは、eKYCの利用シーンの具体例を見ていきましょう。

インターネットでの銀行口座開設

銀行口座の開設時には、本人確認を行うことが必要です。インターネット銀行であっても、口座開設時には本人確認を行わなくてはなりません。
しかし、eKYCを利用することで本人確認はオンラインで完結でき、最短即日で口座を開設できる仕組みを実現しています。

中古品買取時の本人確認

中古品の買取時には、ケース次第で盗品が流通するのを防ぐために本人確認を行うことが古物営業法に定められています。店頭での中古品買取時には身分証明書などを直接確認できますが、オンライン買取では何らかの手段で本人確認を行わなくてはなりません。
そこで、eKYCを利用することによって、来店や郵送といったやりとりを必要としないオンライン買取も可能になります。

携帯電話購入時の本人確認

匿名の携帯電話が犯罪に使われることを防止する観点から、携帯電話の購入時には、携帯電話不正利用防止法にて本人確認が義務づけられています。端末本体やSIMカードをオンラインで購入する際にはeKYCが利用されています。これにより、携帯電話を購入したい顧客は来店不要で購入が可能となります。

インターネットでのチケット購入時の本人確認

インターネットでのチケット購入時には、不正転売防止の観点から販売事業者が自主的に本人確認を実施するケースが増えています。その際、eKYCの利用で購入者の本人確認を行い、転売を目的とした購入の歯止めにも活かされています。

シェアリングサービス利用時の本人確認

カーシェアリングなどのシェアリングサービスでは、本人確認により利用者の信頼性を高めることで、サービスの安全性や信頼性を保つことを目的にeKYCが利用されています。また、スマートフォンによって本人確認が完了できることでスピーディーにサービスの利用を始められるため、利用者の心理的なハードルを下げる意味でも効果的です。

eKYC導入による企業のメリット

eKYCは幅広い業界で活用され、事業者・顧客双方の利便性向上に寄与しています。ここでは、eKYC導入によって企業が得られる具体的なメリットを4つご紹介します。

eKYC導入による企業のメリット

業務効率化

eKYCは、郵送による書類のやりとりを経ることなく、データのみで本人確認が完結します。必要書類の発送・受領や内容確認、書類の整理・保管に要していた工数も大幅に削減できるため、業務効率化につながるでしょう。

コスト削減

作業工数の削減は、コスト削減にも効果を発揮します。従来は必要書類の印刷や郵送にかかっていたコストが不要となり、データのやりとりのみで本人確認が完結するからです。また、事務作業に必要な人員の削減にもつながるため、人件費の抑制効果も期待できるでしょう。

不正アクセス・不正利用の防止

eKYCを導入すれば、不正アクセスや不正利用を防止できる確率が高まります。eKYC導入後は、本人確認書類と併せて容貌確認などを行うことから、本人になりすまして手続きを完了させるのは極めて困難です。
従来は防ぐことが容易ではなかった個人情報の不正利用に関しても、eKYCであれば高い確率で防止できるでしょう。なお、eKYCを導入する際には、高セキュリティなeKYCサービスを利用することが重要です。

顧客の離脱防止

本人確認がスマートフォンで手軽に完結できると、顧客の離脱防止につながります。手続きに時間や手間がかかることがわかると、申込や契約を見合わせる顧客が一定数存在するからです。eKYCであれば本人確認の手間削減や本人確認完了までの日数短縮が可能となり、顧客の離脱防止というメリットを得ることができます。

eKYCの導入事例

最後に、eKYC導入により、サービスの利便性向上を実現した事例を紹介します。eKYCが事業にもたらすメリットや、具体的な効果の参考にしてください。

中古品買取チェーン店の事例:宅配買取の本人確認をオンラインで完結

宅配買取の本人確認を、オンラインで完結できる仕組みを導入した事例です。従来は事業者が集荷時に本人確認を行っていたため、集荷に対応できる場所は本人確認書類に記載された住所のみでした。
そこで、同社はeKYCを導入。顧客はスマートフォンによって本人確認を完了させられるだけでなく、集荷場所も指定できるようになりました。顧客の勤務先など自宅以外の住所での宅配買取にも対応可能となったことで、同社のビジネスチャンスは格段に広がったようです。

銀行の事例:eKYC搭載で、口座番号が最短即日発行可能に

銀行の口座開設アプリにeKYCを搭載することで、口座番号を最短即日発行となった事例です。従来、キャッシュカードを郵送で受け取るまで、顧客は口座番号を知ることができませんでした。
しかし、eKYCの活用によって、顧客はキャッシュカードを受け取る前にアプリ上で口座番号を確認できるようになり、口座利用開始までの期間の大幅な短縮が実現しました。

eKYCの活用で業務工数やコストの削減、顧客の離脱防止を

eKYCの導入は、本人確認書類の郵送の必要がなく、時間やコストの削減、契約離脱の最小化といったメリットを得られます。ただし、eKYCによる本人確認には複数の対応方式、対応チャネルがあり、導入先事業者ごとに採用している方式は異なります。そのため、自社のニーズに合わせて適切なサービスを選択し、活用していくことが重要です。
また、eKYCは、事業者・顧客双方の利便性向上に寄与する技術ですが、高セキュリティなサービスを選ぶことによって初めてそのメリットを享受できるといえます。

SMBCグループの株式会社ポラリファイでは、指紋や顔、声などの生体情報を活用した高セキュリティ総合認証サービスを提供しており、その中心となるサービスが「Polarify eKYC」です。生体認証サービスを活用したDXにより、バックオフィス業務の工数・コスト削減、顧客の離脱防止なども支援しています。

オンライン本人確認・eKYCのサービス導入を検討されている方は、ぜひ「Polarify eKYC」をご活用ください。

(※)2023年4月7日時点の情報のため、最新の情報ではない可能性があります。
(※)法務・税務・労務に関するご相談は、弁護士や税理士など専門家の方にご相談いただきますようお願い申し上げます。

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