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公開日:2024.03.08

CO2削減は中小企業にも必要?脱炭素経営への取り組み方を解説

CO2削減は中小企業にも必要?脱炭素経営への取り組み方を解説

近年、CO2削減や脱炭素経営といった言葉をよく耳にするようになりました。中小企業にも脱炭素経営の取組は必要なのか、疑問を感じていた方も多いのではないでしょうか。

今回は、企業にCO2削減が求められている理由や、脱炭素経営の基礎知識をわかりやすく解説します。CO2排出量の算定方法や脱炭素経営を実現する上で活用できるサービス等も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

CO2削減に向けた国際的なアクション

昨今では、CO2削減は世界的な取組となっています。現在に至るまでの、CO2削減に向けた国際的なアクションを把握しておきましょう。特に重要な出来事は次の3つです。

CO2削減に向けた国際的なアクション

京都議定書(1997年)

CO2削減の世界的な潮流の源には、1997年に採択された「京都議定書」があります。国連気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)において、先進国に対してCO2問題が提起されたのです。具体的には、温室効果ガスを2008年から2012年のあいだに、先進国全体のCO2年間排出量を、1990年の総排出量の95%以下にするという約束が交わされました。

京都議定書には国別の温室効果ガス排出量の削減も盛り込まれており、日本は6%、アメリカは7%、EUは8%を削減することが明記されています(のちにアメリカは京都議定書を批准しないことを表明)。京都議定書は、世界で初めてCO2削減目標を明確に掲げた国際約束として注目されました。

パリ協定(2015年)

2015年にパリで開催された国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)では、京都議定書の後継として位置付けられる国際的な枠組が策定されました。
パリ協定は「55ヵ国以上が参加すること」「世界の総排出量のうち55%以上をカバーする国が批准すること」が発効の条件とした点が特徴的です。その後、2016年11月4日にパリ協定は発効し、下記の長期目標が掲げられました。

<パリ協定の長期目標>

  • ・世界的な平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする
  • ・そのため、できる限り早く世界の温室効果ガス排出量をピークアウトし、21世紀後半には、温室効果ガス排出量と(森林等による)吸収量のバランスをとる

京都議定書が先進国に向けて提起されていたのに対して、パリ協定は発展途上国を含むすべての主要排出国が対象となった点が大きな特徴です。

国連サミット(2015年)

2015年に開催された国連サミットでは、持続可能な開発について国際的な合意が形成されました。国連サミットで提起された「SDGs」には「世界を変えるための17の目標」が掲げられており、中でも下記の目標は環境負荷低減にも深く関わっています。

<SDGsに掲げられた目標(抜粋)>

  • ・目標6(安全な水とトイレを世界中に):すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する
  • ・目標12(つくる責任 つかう責任):持続可能な生産消費形態を確保する
  • ・目標13(気候変動に具体的な対策を):気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる
  • ・目標14(海の豊かさを守ろう):持続可能な開発のために海洋・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する
  • ・目標15(陸の豊かさも守ろう):陸域生態系の保護、回復、持続可能な利用の推進、持続可能な森林の経営、砂漠化への対処、ならびに土地の劣化の阻止・回復及び生物多様性の損失を阻止する

こうした潮流を受けて、CO2削減に向けた機運が世界的に高まりつつあります。CO2削減目標は京都議定書に始まり、長い時間をかけて討議されてきたものです。

CO2削減に向けた国内のアクション

世界的な潮流を受け、日本国内においてもCO2削減に向けたアクションが活発化しています。現在に至るまでの主な出来事は次の通りです。

CO2削減に向けた国内のアクション

カーボンニュートラル宣言(2020年)

2020年10月、日本政府は「2050年カーボンニュートラル」を宣言しました。カーボンニュートラルとは、CO2をはじめとする温室効果ガスの排出量から、植林・森林管理等による吸収量を差し引いた合計を実質ゼロにすることを指します。これにより、CO2削減と吸収作用の保全を強化する必要性が明確になったのです。

地球温暖化対策の推進に関する法律(温対法)改正(2021年)

地球温暖化対策の推進に関する法律(温対法)は、1998年に制定されて以来、8回にわたって改正されてきました。2021年の改正はカーボンニュートラル宣言を背景としており、主に次の3点が盛り込まれています。

<2021年の温対法の主な改正点>

  • ・パリ協定・カーボンニュートラル宣言を反映した基本理念の創設
  • ・地域の脱炭素化を推進する事業促進計画・認定制度の創設
  • ・企業の温室効果ガス排出量情報のデジタル化とオープンデータ化

温対法では国や地方公共団体をはじめ、事業者や民間団体等が密接に連携してCO2削減を目指さなければならないとしています。こうした経緯から、企業に脱炭素経営が求められているのです。

脱炭素経営にどのように取り組むか

気候変動対策の視点を織り込んだ企業経営のことを、脱炭素経営といいます。環境省が作成した「中小規模事業者向けの脱炭素経営導入ハンドブック」では、脱炭素経営は「経営リスク低減や成長のチャンス、経営上の重要課題として全社を挙げて取り組むもの」であり、「厳しい事業環境を乗り越える糸口となり得る」と説明されています。

では、脱炭素経営を推進することで、企業は具体的にどのようなメリットを得られるのでしょうか。脱炭素経営を推進するための手順と併せて解説します。

脱炭素経営に取り組むメリット

企業が脱炭素経営に取り組むことによって、次に挙げる5つのメリットを得られます。

<脱炭素経営のメリット>

  • 1.優位性の構築:他社よりも脱炭素経営が進んでいる、先進的な企業というイメージを獲得できる
  • 2.光熱費・燃料費の低減:原料費高騰への対策や光熱費節減が実現する
  • 3.知名度・認知度向上:先進的な取組が注目され、問い合わせが増える
  • 4.社員のモチベーション・人材獲得力向上:サステナブルな企業で働けるという意識を醸成できる
  • 5.好条件での資金調達:長期的な期待値を測る指標として、脱炭素への取組が評価対象となる

このように、脱炭素経営の推進は、より良い事業環境・経営状態を実現する戦略と位置付けられます。国が提示した削減目標を達成するために、否応なく取り組むものではないと考えてください。

脱炭素経営の3つのステップ

脱炭素経営の実現に向けた取組は、大きく3段階に分けられます。それぞれのステップで取り組むべきことを確認しておきましょう。

脱炭素経営の3つのステップ

・ステップ1:知る

脱炭素経営に向けた最初のステップは、2050年カーボンニュートラルに向けた潮流を自社の課題として捉えることです。前述した世界的な流れと日本国内での動きを正しく理解し、カーボンニュートラルの趣旨を把握しておく必要があります。その上で、自社の経営方針や経営理念を踏まえ、脱炭素経営に向けた方針を検討します。

・ステップ2:測る

次に、現状における自社のCO2排出量を算定し、カーボンニュートラルの実現と現状との差異を客観的に把握します。さらに、自社の主要な排出源となっている事業活動や設備を特定し、排出量削減に取り組むべき優先順位を見極めてください。先入観にもとづいて判断するのではなく、実データをもとに検討することが重要です。

・ステップ3:減らす

排出量削減に向けた優先順位をもとに、具体的な実施計画を立てていきます。削減対策の実行にあたっては、自社で取り組むほかに社外の支援を受けることもできます。
実行開始後も定期的に取組を見直し、CO2排出量の削減に向けた施策をブラッシュアップしていくことが重要です。

関連記事:「脱炭素経営とは?企業のメリットや取組の流れを解説」

CO2排出量の算定方法

CO2排出量の削減に向けた取組における重要なポイントのひとつが、排出量の算定方法です。ここでは、CO2排出量の具体的な算定式と、算定に役立つツールをご紹介します。

排出量の算定式

CO2排出量の基本的な算定式は次の通りです。

<CO2排出量の算定式>

CO2排出量=活動量×係数

活動量とは、電気や燃料等の使用量、焼却量といった、排出活動の規模を表す指標のことです。係数とは、活動量あたりのCO2排出量を表します。対象となる排出活動と算定方法、排出係数については、環境省が公開している「算定方法・排出係数一覧」(※)を参照してください。

(※)環境省「温室効果ガス排出量 算定・報告・公表制度 算定方法・排出係数一覧」

活動量の求め方

CO2排出量の算定に必要な活動量は事業者によって異なりますが、業務日報や電気・ガスの使用量情報を収集し、活動量に相当する数値データを抽出します。算定対象となる主なエネルギー種別は次の通りです。

<算定対象となるエネルギー種別>

  • ・電力
  • ・灯油
  • ・都市ガス
  • ・ガソリン
  • ・A重油
  • ・軽油
  • ・液化石油ガス
  • ・液化天然ガス

たとえば電力であれば、電力使用量が活動量となり、「電力使用量(kWh)×CO2排出係数(kg-CO2/kWh)」によってCO2排出量を算定できます。

算定ツールを活用する

CO2排出量を算定する際には、専用の算定ツールを活用するのもひとつの方法です。業界団体や自治体等がCO2排出量の算定ツールを提供しているので、効率的に算定を進めたい場合には活用することをおすすめします。
算定ツールを活用することによって、組織体制や業務フローを大きく変えることなくCO2排出量の算定を進められる点が大きなメリットです。次に、SMBCグループが提供する、お客さまのCO2排出量算定に関する課題を解決できるサービスをご紹介いたします。

CO2排出量算定支援サービス「Sustana」を活用した事例

脱炭素経営をよりスマートに実践したい事業者さまには、SMBCグループが提供するCO2排出量算定・削減支援クラウドサービス「Sustana(サスタナ)」の活用をおすすめします。「Sustana」はCO2排出量算定を正確かつ効率的に進めたいというお悩みを持つお客さまに対し、お客さまの負担なく、CO2排出量の可視化、削減施策の立案、削減目標の実現をワンストップで支援可能なサービスです。現在、CO2排出量算定にお悩みをお持ちだった1,600社以上の事業者さまにご活用いただいております。

Sustana」を活用してCO2排出量の算定を実現した事例として、大手建設会社のケースをご紹介します。同社では、排出量算定に伴う現場の負担を増やしたくないと考えていました。「Sustana」では、電力会社から届いたデータをCSV形式でアップロードするだけでCO2排出量を自動で算定できるため、手作業での入力による手間が削減されただけでなく、人的ミスの回避にも役立っています。
こうして算定したデータは、企業の取組を情報開示するための「CDP気候変動質問書」への回答や、社内の会議資料にも活用可能です。「Sustana」は単にCO2排出量を可視化するだけでなく、排出量を正確に把握することで、削減に向けた施策を検討・立案していく上で役立っています。

社会全体の取組として、脱炭素経営を実現しよう

脱炭素経営は1社のみの課題ではなく、社会全体で求められている取組です。2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、脱炭素経営の実現はあらゆる企業にとって重要な経営課題となっていくと考えられます。今回紹介したポイントを参考に、脱炭素経営の実現に向けた取組を強化してみてはいかがでしょうか。

しかし、CO2排出量の算定を実施したいものの、社内に散在している活動データを集約したり、活動ごとにCO2排出係数を参照したりするための業務負荷が懸念事項となることも想定されます。
脱炭素経営への取組には、CO2排出量を算定し、削減ターゲットを特定の上、削減計画の実行と見直しを繰り返し行うことが重要です。SMBCグループが提供する「Sustana(サスタナ)」は、企業とサプライチェーン全体のCO2排出量の可視化から削減目標の達成までを一元管理する、CO2排出量算定・削減支援用クラウドサービスです。CO2排出量の算定や削減を正確かつ効率的に進めたい事業者さまは、ぜひSustanaをご活用ください。

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