そもそも金投資とは?

金投資とは、実物資産である金(ゴールド)に投資することです。金は需要と供給の変化に応じて価格が変動するため、価格上昇による利益を期待して投資します。具体的な投資方法は後ほど詳しく説明しますが、金地金など金そのものを購入する方法や、金価格に連動する金融商品を購入する方法などがあります。

金投資のメリット・デメリット

具体的な金投資の方法を確認する前に、金投資のメリット・デメリットを確認しておきましょう。

金の需要や生産量 米ドルの価値 経済不安や金融不安 地政学リスク 世界の金利
メリット デメリット
  • 物価上昇に強い
  • 有事に強い
  • 長期で価格が安定している
  • 配当金や利息が出ない
  • 為替に左右される
  • 手数料がかかる

メリット

物価上昇に強い

金価格は物価上昇に応じて上がる傾向があります。これは、世界の景気が拡大すると、電子部品のような工業品や嗜好性の高い装飾品などの生産が増え、結果として金の需要が高まるためです。インフレになると現金や預貯金の実質的な価値は目減りしますが、金はインフレ対策に有効だといわれています。

また、金の取引は米ドル建てで行われるため、金価格が変わらなければ、円安になると円ベースでの評価額は上がります。

有事に強い

金は「有事の金」とも呼ばれ、戦争やテロ、経済不安といった有事の際に強い特徴があります。そのため、世界情勢が不安定になり株価や為替の動きが予測しにくくなると、金に資金が集まりやすくなり、金価格が上昇する傾向にあります。

長期で価値が安定している

金は埋蔵量に限りがあり、人工的に創り出すのが難しいという特性があります。装飾品や工業製品としての利用価値も高いため、歴史上でも無価値になったことはありません。国や企業への信用で成り立つ通貨や債券とは異なり、金は長期にわたり一定の価値が担保されているといえるでしょう。

デメリット

金投資の主なデメリットも確認しておきましょう。

配当や利息が出ない場合がある

株式投資や投資信託、預貯金などと異なり、金現物への投資では配当金(分配金)や利息がなく、売却による値上がり益しか期待できません。そのため、金だけに資金を集中させず、資産全体のなかでバランスを図りながら投資することが重要です。

円安・円高に左右される

国際的に金の取引は米ドル建てで行われるため、日本円で投資する場合は為替の影響を受けます。そのため金の国際価格が上がっていても、為替によっては日本円ベースでの評価額が下がることもあります。

手数料がかかる

金投資の方法によっては、手数料がかかります。例えば、現物の金の購入費や純金積立などにかかる購入手数料(買付手数料)、金投資信託を保有している間にかかる信託報酬、金現物を保管するための費用などです。投資方法によっては、長期的に手数料が発生する可能性があるため注意が必要です。

金投資にはどのような方法がある?

ここからは具体的な金投資の方法を見ていきましょう。

主な金(ゴールド)への投資方法

現物

金の現物投資は、金地金や金貨の購入、純金積立などの方法があります。

金地金

現物の金を購入・保有する方法です。貴金属商や宝石商、商社などで購入可能です。金の実物を手元に置けるため安心感がありますが、盗難や自然災害時の紛失といったリスクをともないます。銀行の貸金庫などに保管する場合は、別途コストがかかる点も考慮が必要です。また、一般的に他の金投資方法に比べて購入・売却時の手数料が高い点はデメリットです。

金貨

外国政府の発行する金貨を購入・保有する方法です。貴金属商や宝石商、商社などで購入できます。取扱業者によって購入できる金貨の種類は異なり、コレクションとしての価値もあります。また金地金に比べて重量が小さい分、少額から始められるのがメリットです。デメリットは金地金と同様、保管に関するリスクがあることや、他の金投資方法に比べて購入・売却時の手数料が高い点です。

純金積立

毎月一定額ずつ現物の金を積立購入する方法です。貴金属商のほか、証券会社や銀行などの金融機関でも取引できます。金融機関によっては1回あたりの積立額が1,000円程度の少額から始められ、一度申し込めば自動的に購入・積立されるため手軽に投資できるのがメリットです。一方、積立時に手数料がかかる点には注意しましょう。

金融商品

金融商品を活用した投資方法もあります。

金投資信託

金価格に連動する投資信託です。投資信託なので、自分で金価格を見ながら売買をする必要がなく、プロに運用を任せられる、分散投資がしやすいなどのメリットがあります。投資信託によっては分配金が支払われるものもあります。一方、株式や債券を対象にした投資信託と同じで、信託報酬などの手数料がかかる点や元本保証がない点には注意が必要です。

金ETF

金価格に連動するETF(上場投資信託)に投資する方法もあります。ETFは投資信託の一種で、基本的な仕組みは投資信託と同じですが、取引所に上場しているため株式のように時価で売買注文ができます。一般的に、投資信託よりも手数料が低いという点がメリットです。デメリットも金投資信託とほぼ同じですが、価格が短期で変動しやすいリスクもあるので注意しましょう。

金先物

金先物は先に金価格を決め、事前に決めた期日に売買することを約束する取引方法です。いわば、将来の売買時点の価格が決まっていない金を取引するもので、見通しどおりに価格が動けば利益を得られ、見通しが外れた場合は損失を被ります。先物取引は「証拠金」を預けてレバレッジを効かせられるため、少額で大きな取引ができるメリットがあります。ただし、損失額も大きくなる可能性があり、損失分の支払いが必要になることもあるため注意が必要です。

金鉱株

金鉱株を購入する方法もあります。金鉱株とは、金の採掘や精錬を事業とする企業の株式です。金鉱株の価格は金価格と連動性が高く、インフレや円安時には上昇を期待できます。投資方法は通常の株式投資と同じで、証券会社に証券口座を開いて取引します。デメリットは株価変動の要因が金価格以外にもあることや、元本保証がない点です。

おすすめの投資方法は?

これから金投資を始めてみようという方には、まず金投資信託や金ETFから取り組んでみることをおすすめします。

金投資信託

プロが運用してくれる投資信託は、数ある投資方法のなかでも初心者が取り組みやすい投資方法です。投資信託はさまざまな投資先に分散投資されている、少額から始められる、NISAを活用できるなど、リスクや税金面でメリットがあります。
取引をする証券会社によってはスマートフォンからも簡単に運用状況の確認や売買ができます。

金ETF

前述したように、金ETFは投資信託の一種であり、初心者も取り組みやすいでしょう。金投資信託と同じく、NISAを活用できる銘柄もあるほか、スマートフォンから簡単に運用状況の確認や売買ができるなどのメリットがあります。

金投資にかかる税金はどうなる?

NISAを活用できる場合は運用益が非課税になりますが、基本的には金投資で得た利益は課税対象です。

売却益は課税対象となる

金投資の基本的な課税ルールとして、金を売却して得た利益は譲渡所得として課税対象になります。ただし、売却するのが現物か金融商品かによって、課税のされ方が分離課税と総合課税で分かれます。

納税方式 総合課税方式(給与・配当etc×税率) 分離課税方式(譲渡取得(不動産の売却など)×税率・山林所得×税率) 分離課税は単体で納税額が決まります。

分離課税とは、給与所得などほかの所得とは切り離し、対象となる所得(この場合は金投資で得られる利益)だけで税額を計算する課税方法です。総合課税は、給与所得などほかの所得と合算して税額を計算する課税方法です。

分離課税の場合

分離課税になるのは金投資信託・金ETFなどの金融商品の取引で利益を得た場合です。株式と同様、利益に対して一律20.315%の税金がかかります。

総合課税(譲渡所得)の場合

金地金や金貨など、現物の取引で得た利益は原則として総合課税の対象です。給与所得など総合課税の対象となるほかの所得と合算し、基礎控除や社会保険料控除など各種所得控除を差し引いたあとの課税総所得金額に、所得税率を乗じて所得税を計算します。

所得税率は課税総所得金額に応じて、5%〜45%の7段階に分かれます。譲渡所得額の計算は、金の所有期間が5年以内(短期譲渡所得)か5年超(長期譲渡所得)かによって変わります。

なお、現物の取引でも営利を目的として継続的に売買するような場合には、譲渡所得ではなく事業所得や雑所得とみなされることがあります。その場合計算方法が変わるため注意しましょう。

金投資はこんな人におすすめ

金投資が自分に向いているかどうか迷う場合は、以下に当てはまるかどうかチェックしてみましょう。

長期的な資産形成をしたい人

金投資は、長期的に資産形成をしたい人に向いています。「預貯金だけでは不安だけど、株式投資は怖い」と考えている人、インフレや有事に強い資産を持ちたい人などにおすすめの投資方法です。

価格の安定した資産に投資したい人

金は長期的に見て価値が安定しているため、資産を守る投資を重視したい人に向いています。

分散投資をしたい人

すでに株や債券に投資しており、分散投資の一環として金をポートフォリオに加えたい人にもおすすめです。また、まだ投資をしたことがない人でも、金投資信託や金ETFを購入することで分散投資が可能になります。

自分に合った金融機関や投資商品を選ぶには?

金投資は自分に合う金融機関や投資商品で行うことも大切です。以下で選び方のポイントを紹介します。

取引・運用等にかかるコストを比較する

コストがかかると実質的な利益が減るため、売買手数料や信託報酬などのコストを比較することが大切です。納得のいく金融機関や商品を選ぶためには、以下のポイントを押さえておくとよいでしょう。

  • 購入から売却までのコストトータルで比較する
  • 投資額と投資期間によって最適な選択は変わる
  • 信託報酬や売買価格差も確認する

金融機関によっては、ポイント還元を受けられるところもあります。副次的なメリットとして、獲得できるポイントも考慮するとよいでしょう。

サポート体制や使いやすさを確認する

投資で困ったときのサポート体制や取引のしやすさ、ツールの使いやすさなども確認しておくことをおすすめします。サポート窓口があるか、売買や解約の手間がかからないかなどをチェックして選びましょう。

信頼性と実績のある金融機関を選ぶ

金投資の種類によっては金融機関以外でも取引できるため、信頼のできる会社を選ぶことが大切です。金融庁に登録されているか、上場企業か、長年の運用実績があるかなどの情報をしっかり確認して選びましょう。

金地金などは、取扱会社が倒産リスクへの備えをしているか、どのような方法で備えているかなどを調べておくのもおすすめです。

取り扱い商品が豊富か確認する

取り扱い商品が多いかどうかを確認してみましょう。取り扱い商品が多いほど、投資スタイルや資産状況に合わせて選びやすく、長期的に無理なく運用を続けられます。

金投資を始めるならSBI証券がおすすめ

金投資は物価上昇や有事に強いなどのメリットがあり、長期的、安定的な資産形成に役立つと考えられます。金投資の方法はさまざまな種類があるため、それぞれのメリット・デメリットを確認し、自分に合った投資方法を選びましょう。

これから金投資を始めてみようという方は、金の現物・金融商品のどちらも提供しているSBI証券を選んではいかがでしょうか。
SBI証券の純金積立投資は月々1,000円から始められるだけでなく、価格を見ながらのスポット購入も可能です。現物・積立取引の手数料は業界最低水準であり、三井住友銀行の仲介口座を開設して取引すれば金の現物・積立取引手数料の1%相当がポイント還元されるメリットもあります。

金融商品では金投資信託や金ETFのほか、株式、投資信託、先物など商品ラインナップが豊富です。預かり資産残高ネット証券No.1の実績による安心感も得られます。初めて投資する方や資産ポートフォリオを広げたい方など、ご自身に合う金投資の種類を選びやすいのではないでしょうか。

  • 2025年8月現在の情報です。今後、変更されることもありますのでご留意ください。

續恵美子

ファイナンシャルプランナー(CFP®、ファイナンシャル・プランニング技能士)。
生命保険会社にて15年勤務したあと、ファイナンシャルプランナーとしての独立を目指して退職。その後、縁があり南フランスに移住。夢と仕事とお金の良好な関係を保つことの厳しさを自ら体験。
渡仏後は2年間の自己投資期間を取り、地元の大学で経営学修士号を取得。地元企業で約7年半の会社員生活を送ったあと、フリーランスとして念願のファイナンシャルプランナーに。生きるうえで大切な夢とお金について伝えることをミッションとして、マネー記事の執筆や家計相談などで活動中。

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