Kさん一家のプロフィール

晃さん(夫・仮名)…33歳、建築関係の個人事業主
奈々さん(妻・仮名)…31歳、広告代理店勤務
2019年、神奈川県横浜市内に1LDKの戸建て住宅を1,200万円+リフォーム代600万円で購入。

ここがポイント!

  • 1,200万円で購入した古民家を600万円かけてリノベーション!
  • 小分けした食材に日付を書いて保存し、ロスを防止
  • 通信費が少々高めなので、格安プランを検討中
  • 個人事業主の夫・晃さんは、iDeCoと小規模企業共済の検討を
  • 資産形成は長期で気長にやろう

二人で快適に暮らせる住まいを求めて。1,200万円の古民家をリノベーション!

2階リビング。著名な画家だったという晃さんの祖父の画が飾られている
  • 2階リビング。著名な画家だったという晃さんの祖父の画が飾られている

――お二人は、大学時代に知り合われたとか。

  • 晃さん

    「お互い同じ美大出身で、当時から知り合いだったのですが、付き合いだしたのは大学を卒業してからなんです。そのころ、僕は工務店に就職し、建築設計や施工管理の仕事に携わっていました」

  • 奈々さん

    「夫がそれまで勤めていた工務店を退職して独立したのが2015年で、その翌年に結婚しました。当初はメゾネットタイプの賃貸マンションで暮らしていたのですが、次第に家賃を払うのがもったいないなと思い始めて……」

  • 晃さん

    「僕は独立後からマイホーム購入を考えていたんです。ただ、独立してすぐだと住宅ローンが組めないと思って踏みとどまっていました。それでも、情報収集だけは欠かさずにやっていました」

  • 奈々さん

    「夫は仕事柄、建築の知識が豊富なので、いろいろと考えていたみたいです」

――当初からリノベーションを考えていたのですか?

  • 晃さん

    「はい。リノベーション込みで予算を2,000万円と決めました。また、当時の住まいから僕の仕事の現場まで片道2時間近くかかっていたので、それなら思い切ってと仕事の拠点に近い横浜、かつ、妻が電車通勤なので駅から近い場所で探したところ、現在住んでいる物件を見つけました。1,200万円とかなり安く、改築費を入れても予算よりもかなり低く抑えることができると思いました」

  • 奈々さん

    「最初に内覧したときは正直びっくりしました。古いし、水回りはかなり傷んでいたし……。私は反対したのですが、夫は最初に内覧した時点でリノベーション後のイメージができていたようです」

  • 晃さん

    「築50年の古民家で、確かに今すぐ解体しても良いくらいでした。でもリノベーションすれば、快適な住まいにすることができることが自分にはわかっていたので、根気強く妻を説得しました(笑)」

広〜い土間タイプの玄関には晃さんの仕事道具がまとめて置かれている
  • 広〜い土間タイプの玄関には晃さんの仕事道具がまとめて置かれている

――リノベーションした住まいのこだわりは?

  • 晃さん

    「たくさんあるんですが、一つは間取りです。二人が気持ちよく住めるような空間にしたかったんです。2階のリビングルームを広くとって、その分、1階の寝室は割り切って狭くしました。また、床の木材は浮造り(うづくり)加工といって、木目の凸凹を強調した仕上げのものです。木ならではの味わいが出て、気に入っています。玄関は広くとって仕事道具を置くことで、車への導線をスムーズにしています」

  • 奈々さん

    「古い家で、何度かリフォームを繰り返して住んでいたようなんです。ただ、中には傷んで使えなくなってしまっているところもありました。特に水回り関係は全滅だったので、配管部分をすべて交換しました」

  • 晃さん

    「2019年からこの家に住んでいますが、壁のペンキの塗り残しがあり、今もリフォームは完全には終わっていません。住みながら『こうしたいね』というところがあったら少しずつ良くしていきたいと思っています」

小分けにした食材をきれいにそろえてストック! Kさんご夫婦の冷蔵庫の中身は?

引っ越しの際にインテリアに合わせて購入した冷蔵庫
  • 引っ越しの際にインテリアに合わせて購入した冷蔵庫
  • ――では、冷蔵庫の中身を拝見します。落ち着いた色ですね。

    奈々さん

    「キッチンに設置した戸棚の色と合わせて、モノトーンの冷蔵庫を購入しました」

  • ――冷蔵室も冷凍室も、食材をきれいに小分けして収納していますね。容器やフリーザーバッグに書かれているメモが、とてもわかりやすいです。

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    品名と作った日をシールに書いて貼り付けているA
    • 品名と作った日をシールに書いて貼り付けている
  • 晃さん

    「ありがとうございます。全部妻が書いたものです。僕もたまに料理をするので、情報共有の意味でもメモが必要。妻が書いたメモを見て、『この食材を使って料理しよう』と決めています」

  • 奈々さん

    「冷蔵庫内を食材でパンパンにしたくなくて、なるべく整理して入れるようにしています。緊急事態宣言を機に、自炊の割合がかなり増えました。スコーンを手作りしたりと、家で料理を楽しんでいます」

  • 晃さん

    「妻はよく、スパイスから作る本格的なカレーを作ってくれるんです」

  • 奈々さん

    「手作りに強いこだわりがあるわけではないんです。時間に余裕があるときは作って、疲れているときは中食を使ったり、夫に作ってもらったりすることもあります。楽ができるときには楽をするのが、私のスタイルです」

――食材はどちらで購入していますか?

  • 奈々さん

    「自宅周辺にあるスーパーと、駅前のスーパーをよく利用しています。宅配サービスやネット通販もよく利用していますね」

  • 晃さん

    「このあたりは坂が多く、ミネラルウォーターなどの重たいものは車を使っても積み下ろしが大変で。ネット通販をうまく使っています」

月々の食費は4万円、住宅ローンは5.5万円。通信費と保険料が少々高め!?

――では、毎月の支出について見ていきましょう。食費はどのくらいかかっていますか?

  • 奈々さん

    「4万円くらいです。私たちは外食も好きで、週に1〜2回ほど外で食べるのですが、それはお互いのお小遣いから出しています」

  • 晃さん

    「食材を小分けしてストックするようになってから、無駄遣いが減ったように思います。日付が書いてあるので、食材をダメにしてしまうこともなくなりました」

  • 高山先生

    「通信費が少々高いかもしれないですね。固定費なので、ここを削減できると、かなり家計をスリムにすることができますよ」

  • 奈々さん

    「二人ともキャリア携帯なので、どうしてもこのくらいの額になってしまいます。最近、各キャリアが格安の新プランを出し始めているので、近々検討する予定です」

  • 高山先生

    「奈々さんの保険は医療保険ですか?」

  • 奈々さん

    「はい。保険会社の方に勧めていただいて、貯蓄型の医療保険に2種類入っています」

  • 高山先生

    「奈々さんは会社員なので、病気やケガになって会社を休むことになった場合、健康保険から傷病手当金が支給されます。ですから、2種類も入る必要はないですし、多くの保障は必要ありません。基本的に保障と貯蓄は分けて考えた方が良いので、保険はできるだけ掛け捨て型のものに加入し、保険料を安くした方がいいですね。奈々さんはまだ31歳とお若いですし、最近は保障内容もよく、かつ、掛け捨てタイプの医療保険がたくさん出ているので、見直すことにより、月4,000〜5,000円ぐらいは保険料を削減できる可能性は高いですよ」

  • 晃さん

    「僕は個人事業主なので、逆に保障の厚い保険に入った方が良いでしょうか?」

  • 高山先生

    「個人事業主は会社員と違って、国民健康保険に加入するので、傷病手当金はありません。加えて、雇用保険や労災保険がないなど、公的な保障が薄いので、民間の保険で上乗せして保障を手厚くするという考えは『あり』です。ただ、奈々さんも働いていますし、現在はお子さんもいないので、そこまで大きな保障を準備しなくても大丈夫です。」

  • 晃さん

    「今は、就労不能保険に入っています」

  • 高山先生

    「それはいいですね。先ほどもお話したように、国民健康保険だと傷病手当金が出ないので。就労不能保険に入っていれば、けがや病気になって働けなくなったときに、あらかじめ契約した額の給付金を毎月受け取れます。今後、子どもが生まれたときのことも考えて、今の保障を洗い出して検討しておくのも良いと思いますよ」

  • 高山先生Point

    高山先生Point

    個人事業主なら働けなくなったときのために就労不能保険の検討を!

家計簿アプリを導入したものの、活用できていないのが目下の悩み

――家計管理で工夫されていることはありますか?

  • 奈々さん

    「実は家計管理にあまり自信がなくて。家計簿アプリをインストールしたものの、活用できていないんです」

  • 家計簿アプリの代わりに、手帳にその日の支出を書き込んでいる
    • 家計簿アプリの代わりに、手帳にその日の支出を書き込んでいる

    晃さん

    「僕も妻と同じで、確定申告用のソフトを使っているくらい」

  • 高山先生

    「今は夫婦共働きですし、お子さんもいないですから、そこまで気になさらなくても大丈夫。お子さんが生まれるなど、ライフイベントが家計を見直すきっかけになると思いますよ」

  • 奈々さん

    「高山先生、家計簿アプリを上手に活用する方法はありますか?」

  • 高山先生

    「最近の家計簿アプリは便利な機能がたくさんあって、そのうちの一つにレシート読み取り機能があります。スマホでレシートを読み取るだけで、費目ごとに自動で振り分けてくれるんです。レシートを読み取る精度もかなり高いですよ。ですから、まずはレシートの読み取りから始めてみてはどうでしょうか。3カ月くらい経ってからチェックすると、自分たちのお金の使い方のクセや無駄遣いの多い項目が見えてきますよ。お二人は、現金で買い物されていますか?」

  • 奈々さん

    「はい。キャッシュレスにした方が良いでしょうか」

  • 高山先生

    「キャッシュレス決済だと、買い物の明細が自動で記録されるので便利ではありますね」

  • 奈々さん

    「クレジットカードやスマホ決済にすると、金銭感覚が緩くなってしまうような気がして、それが心配です。今はざっくりとですがノートに購入した品物と金額をメモするようにしています」

  • 高山先生

    「家計管理の方法はいろいろありますし、ご自身に合った形で管理をするのが一番。続けることが大切ですよ」

  • 高山先生Point

    高山先生Point

    家計管理の1歩として、まずは家計簿アプリでレシートをパシャリから始めてみよう。

投資初心者のお二人。個人事業主の夫・晃さんは、節税効果のあるiDeCoの検討を!

資産形成初心者というお二人。個人事業主だからこそ検討したい資産形成とは?
  • 資産形成初心者というお二人。個人事業主だからこそ検討したい資産形成とは?

――奈々さんは貯蓄をされていますが、資産形成に興味はおありですか。

  • 奈々さん

    「最近、友人がつみたてNISAを始めたんです。少額でできるそうなので、私もやってみたいと思っています」

  • 高山先生

    「つみたてNISAも一般NISAも、一般の人の資産形成を応援する手段として、国が推進しているものなんです。特につみたてNISAは国が定めた一定の基準をクリアした金融商品がラインナップされているので、投資経験があまりない方でも比較的始めやすいですよ」

  • 晃さん

    「僕は一般NISAで日本株を買っています」

  • 高山先生

    「アクティブですね! 晃さんは個人事業主なので、iDeCo(個人型確定拠出年金)や小規模企業共済も検討されるといいかもしれません。iDeCoも小規模企業共済も掛金が全額所得控除になりますので、所得税や住民税が安くなる効果があります。また、iDeCoは、積立期間中の運用益も非課税ですし、受け取り時にも税制優遇があります。小規模企業共済は、積み立てによる個人事業主や小規模企業の役員の退職金制度のようなもの。20年未満で解約してしまうと元本が割れてしまいますが、預貯金などに比べて利率も高いです」

  • 高山先生Point

    高山先生Point

    老後資金をつくるならiDeCo。フリーランスなら加えて元本保証(一定期間掛金をかける必要がある)・高利率・節税効果のある小規模企業共済の検討を。

  • 奈々さん

    「iDeCoといえば、会社で企業型確定拠出年金に入れたような……」

  • 高山先生

    「それはいいですね! 検討されるといいと思います」

  • 晃さん

    「通信費と保険料を見直して出費を削減すれば、その分をiDeCoや小規模企業共済に充てることができるかもしれません」

  • 高山先生

    「資産形成のスタートは早ければ早い方がいいんです。たとえ毎月の投資額が大きくなくても、長く運用することで、複利の効果が得やすくなり、資産を大きく増やすことができますよ」

  • 高山先生Point

    高山先生Point

    複利とは、元金に利子を加えて運用することで、利子にもまた利子がつくというシステム。長期で運用することで、複利のメリットを得やすくなる。

  • 晃さん

    「僕は個人事業主なので、資産形成をすることで『安心』も得られるように思います。将来、何が起こるかわからないからこそ、先生に教えていただいたことを活かして、長期的な視点で投資をやっていきたいですね」

  • 奈々さん

    「私も先生のアドバイスを聞いて、これから先のことも考えて資産形成をしていこうと思いました。今の住まいは、私たち二人が楽しく快適に暮らせるようにと、夫がプランニングしてくれたもの。子どもができて大きくなったら、別の家を購入して引っ越すかもしれませんが、いずれにしても、自分たちにとって住み心地の良い家にしていけたらいいなと思っています」

これからの時代は住まいづくりにも資産形成的な視点を取り入れて

長期的な視点で自分たちらしい暮らしを実現しているKさん夫妻
  • 長期的な視点で自分たちらしい暮らしを実現しているKさん夫妻
  • ――今回取材したKさんご夫婦は、ご自身でリノベーションした住まいで暮らすなど、ご夫婦らしい生活を楽しんでいらっしゃるように感じられました。

    高山先生

    「『家計管理が苦手』『資産形成は初心者』とおっしゃっていましたが、古民家をリノベーションされたエピソードをお聞きして、十分に投資的な視点をもっていらっしゃると思いました」

  • ――晃さんも「上物の価値がないので、1,200万円は土地価格。リノベーションでかかった600万円を建築費と捉えると、かなり安くすませることができました」とおっしゃっていましたね。

    高山先生

    「お子さんが生まれたら別の家に引っ越すことも視野に入れているとのこと。最近はリノベーション物件が人気ですから、その付加価値もありますし、ゆくゆくは今のお住まいを貸して家賃収入を得ることも視野に入れられるといいのではないでしょうか。

  • 家計管理も資産形成も、続けることが何よりも大切。無理をして大きな額をかけようとすると続かなくなってしまうので、無理のない範囲で始めてほしいですね」

    • 2021年2月現在の情報です。今後、変更されることもありますのでご留意ください。

高山 一恵 (たかやま かずえ)

ファイナンシャルプランナー(CFP)、一級FP技能士。株式会社Money&You取締役。全国での講演活動をはじめ、執筆・マネー相談など、女性の人生に不可欠なお金の知識を伝えている。

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