相談者:狭山恭司さん(仮名)

職業:会社員

年齢: 33歳

世帯年収:640万円

個別株、短期売買の落とし穴

相談者は、数年以内に結婚を予定されている狭山さん。結婚をしたら子どもも欲しいし、家も建てたいと考えており、資金準備のためには何をすれば良いか気になっていました。

そんな時、既婚者の同僚たちが「預金だけじゃ将来のお金が不安。今のうちから投資もしなくちゃ」と話しているのを聞いたそうです。

投資でお金を増やすのであれば、まずは「株」と考えた狭山さんは、ニュースで見て気になっていた企業の個別株を最低単位数で購入してみました。

すると、翌日、翌々日には値上がりし、値上がったところで売ると儲けが出たのです。

はじめての株でお金を増やせた狭山さん。利益に興奮して、前から欲しかった高価なカバンを衝動買いしてしまったそうです。

濡れ手で粟の経験に味をしめ、もう2銘柄増やして買ってみたようですが、今度はなかなか値が動かない。それならばと、結婚に備えて貯めていたお金にも手を付けて、もう1銘柄を追加購入。

約1週間後、わずかに値が上がったので、すべて売ったところ、手数料も重なったことで、口座資金は購入前とそう変わらないという結果になってしまいました。

それでも懲りずに、狭山さんはその後も短期的な売買を繰り返したそうです。しかし、このままの投資スタイルで本来の目的である家の購入や将来の子どものための教育費などを貯めることができるのか不安になり、私のところへ相談に来ました。

短期的な売買は、ストレスと手数料がかかる!?

今回の相談者・狭山さんは数年以内に結婚を予定しているにもかかわらず、個別株の短期売買をしていました。結婚間際のタイミングで結婚式費用などを投資資金に充ててはいけないというのは鉄則です。

狭山さんにはこれから、結婚式、出産、子育て、住宅購入、老後など、さまざまなイベントがあります。そのために必要なお金をいつ、どこで、どのくらい用意すべきかを考えることがまずは大切です。

たとえば、将来生まれる子どものための教育費や老後資金などは、これから十年?数十年後に必要になるお金。そういったお金は毎月の収支から少しずつ捻出し、長期でコツコツと積み立てていくという考え方がおすすめです。

また、投資への取り組み方にも柔軟性を持ち、短期的な売買益だけにとらわれないことが大切。個別株への投資であっても、「果報は寝て待て」の精神で長期投資をする心構えがあれば、穏やかに過ごせるのではないでしょうか。

そして、株を買うということはその企業のオーナーになるということ。利益だけでなく、応援したい企業やこれからが期待できる企業などに投資することも楽しみの1つにしても良いでしょう。

ただ、個別株による長期投資は大きく資産を増やせる可能性がある半面、全く企業が成長せず、資産を増やす結果につながらないケースもあります。企業の業績に依存してしまうのです。

もし、長期的に保有することで資産を増やしたいと考えるのであれば、インデックス型投資信託のような経済成長と連動するように運用するタイプの投資信託を検討していくと良いでしょう。

投資信託では売買時の手数料のほか、信託報酬などといった保有時にかかる手数料もあることを意識しておきましょう。なかには、販売手数料がかからない「ノーロード」という商品もあるのでチェックしてみてください。

何より投資信託は1銘柄で分散投資ができ、比較的ローリスクで投資ができるというメリットも大きいです。

まとめると、短期投資と長期投資のメリットとデメリットは以下のようになります。

【短期投資】

■メリット

  • 結果がすぐ出るので、利益が出た場合は儲かった実感を得られやすい。
  • 長期的な値下がりを心配する必要がない。

■デメリット

  • 売買のタイミングをコンスタントに見計らう必要があり、会社員には難しい場合が多い。
  • 売買頻度が多いため、手数料がかかる。

【長期投資】

■メリット

  • 時間をとられずにできて、相場に敏感になる必要はなく、基本的にほったらかしでもOK。会社員はこちらが向いている。
  • 売買頻度が少ないため、比較的コストを抑えることができる。その分だけ投資パフォーマンスが向上する可能性が高まる。
  • 長期化すればするほど、利益を膨らませるという複利効果が期待できる。

■デメリット

  • 短期的な利益は期待しにくい。2〜3年では利益を実感することが難しい。

アドバイスの結果、狭山さんは、すぐに短期売買をやめることを決意。将来起きるライフイベントに向けて、目標額を整理することからはじめました。

時間をかけて資産を膨らませる、「複利」の力

利息には、「単利」と「複利」があります。単利とは元金だけに利息がかかるタイプです。
複利とは、利息を元本に組み入れることで、さらに利息がつくタイプ。つまり利息が出るたびに元本が増えることを繰り返すので、雪だるま式に利息が増えていくのです。

例えば100万円に毎年5%の利息が付くとします。単利の場合は1年間で5万円増え、それが続くので、2年目には利息が10万円になることになります。

一方、複利の場合は、1年目に増える金額は5万円で単利と変わりませんが、2年目は105万円の元本に利息が付くため、2年間で得られる利息は10万2,500円になるのです。

つまり、投資の「複利効果」とは、運用で得た収益や利息を再び投資することで、利息が利息を生んでふくらんでいくことなのです。時間をかければかけるほど、お金自身が働いて稼ぐ金額が増えていきます。

「20年後、30年後といった将来のお金を作るには、長期投資がおすすめ」というのは、この複利の力が大きいからなのです。

短期投資も長期投資もそれぞれメリット・デメリットはありますが、資産運用の初心者や会社員の人が投資をしてみようと思うのなら、まずは長期投資からはじめてみることがおすすめです。

  • 2020年1月現在の情報です。今後、変更されることもありますのでご留意ください。
よこやま みつあき

横山 光昭(よこやま みつあき)

家計再生コンサルタント
株式会社マイエフピー代表

お金の使い方そのものを改善する独自の家計再生プログラムで、家計の問題の抜本的解決、確実な再生をめざし、個別の相談・指導に高い評価を受けている。これまでの相談件数は23,000件を突破。各種メディアへの執筆・講演も多数。著書は60万部を超える『はじめての人のための3000円投資生活』や『年収200万円からの貯金生活宣言』を代表作とし、著作は110冊、累計330万部となる。 個人のお金の悩みを解決したいと奔走するファイナンシャルプランナー。

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