藤島大の楕円球にみる夢
(2022/04/04)

ゲスト/福井翔大選手
(埼玉パナソニックワイルドナイツ)

三井住友銀行(SMBC)ほかがラジオNIKKEI第1で提供するラジオ番組「藤島大の楕円球にみる夢」は、スポーツライターの藤島大さんが素敵なゲストを迎えて、国内ラグビー、日本代表、世界のラグビーなどの幅広い情報を詳しく伝えています。4月4日放送回は、埼玉パナソニックワイルドナイツの福井翔大さんが出演されました。

藤島スポーツライターの藤島大です。今回のゲストはリーグワン一部、埼玉パナソニックワイルドナイツの福井翔大さんです。
経歴を紹介します。1999年9月28日、福岡市生まれ。ラグビーどころですね。5歳で「かしいヤングラガーズ」、あまたの名手を輩出してきたスクールですけれども、そこでラグビーをはじめて、かの東福岡高校に進んで、2年のとき、高校3冠を達成、それから高校ジャパン、U−18日本代表、U−20ジュニアジャパン、いわゆるエイジレベル、世代別の日本代表を経験してきました。今のサイズ、186センチ、101キロです。
ワイルドナイツについて聞きます。試合を観ていて感じるのは、ベンチが充実していて、例えば堀江翔太だとか、あのクラスが後半の勝負所に出てくる。もちろん前半もジャパンクラスの実力者たちで、そこからまたジャパンの人たちが出てくる。相手は大変ですね。

福井どうしようもないです、たぶん。

藤島例えば前の試合先発だった人たちがベンチに入っても、ベンチから実力者が実に効果的に力を発揮していく。

福井ロビーさんの方針なのか分からないですけど、個性を出していくというのがみんなすごいある気がして、自分が出てどんなプレーをしたらチームのためになるのかを考えているからじゃないのかなと思います。

藤島ロビーさんとはロビー・ディーンズさん、いわゆるヘッドコーチですね。元オールブラックスのバックスの選手で、コーチとしてクルセイダーズを非常に強くして、ワラビーズの監督を、ニュージーランド人として務めた、そういう人ですけれども、どういうコーチですか?

福井日本では絶対ない感じ、海外ならではというか。言い方がうまくできないんですけれども、けっこうゆるいんですね。フラットというか、コーチがばーっと言うんじゃなくて、選手が提案とかするのをコーチがまとめる感じなので。

藤島今、ゆるいという言葉を使いましたけど、ゆるいというのはだらだらしているわけではなくて、選手にもある程度権限があったり、言いたいことが言い合えたり。

福井そうなんです。堀江さんも言っていたんですけど、自由というのがいちばんきついというか難しいらしくて、そのぶん自分たちは考えなければいけないことが増えるから、ゆるさとか自由さというのは難しいこと、と。

藤島福井さんは入ったときは、18、19歳、その雰囲気を経験して、難しさもありましたか?

福井全選手考えながらやっているので、自分で考えてやらないと置いていかれる感はすごいありました。

藤島今季福井さんは、最初はナンバーエイトからでしたけれども先発もあって6番でも先発することがあって、ポジションをつかんできたんですけれども、その競争をどう勝ち抜いているんですか?

福井自分の中で活躍している感じはなくて、むしろなんで僕はここまで生き残れているんだろうなあって思いながら今シーズン闘ってきたので、正直そこは分かっていないです。

藤島福井さんは高校の時、しなやかな感じでスピードがあって、サイズもあるんだけれども、ステップを踏んで前に出るのがすごい上手で。加えて、リーグワンに入って、ぶつかってもそこで負けない、そんな感じがするんですけどね。たくましくなったなって。

福井本当ですか。ありがとうございます。たしかに去年、一昨年はあたられたら抱え上げられてしまうのが多かった感じがあるので、そこは減った感じがします。

藤島我々のような取材や放送をする立場だと、高校の中のトップ中のトップが、大学を経ずに最初からプロの、しかも強豪のクラブのプロに進んだ。いったい彼はどうなっていくのかと注目するんですよね。
大学に進んだ高校の仲間がいますよね。彼らは大学で4年間戦ってきて、この春から一緒になりますね。

福井正直大学のレベルとか分からないのでなんともいえないんですけど、向こうが入ってきた4月以降、違いを分からせたいな、というふうに思っています。

藤島例えばワイルドナイツには、長田智希が入りました。東海大仰星高校のキャプテンで高校時代はずっとしのぎを削った相手で、早稲田大学でもキャプテンをした。さあどうなるのかと。

福井分からせてやろうという感じでやったんですけど、あいつはすごかったです。

藤島私なんかは見ていて、高校からプロに進むのも大学に進むのも、どちらもいい道だなと思うんですけれども。

福井そう思います。僕もプロに来て経験できていることもあると思うんですけど向こうも一緒だと思うんですよ。長田の場合は大学で何百人の上に立ってチームを動かすということはしてきている。いちばん上に立ってまとめていく難しさも知っていると思うんですよ。僕はそれを経験できていない。かわりに堀江さんをはじめ、すごい人たちと一緒にプレーして考えを共有できたりしている。お互いにポジティブな感じがあるという感じでいいんじゃないかと思います。

藤島そもそも、なぜあまたの大学から声がかかったのに直接プロに行こうと?

福井遠征で海外に行く機会が多くて、大会でぼこぼこにやられていて、相手はプロに行くと聞いていたので、正直それで差をつけられるのが嫌だったというのがいちばんですね。

藤島でも、例えば東福岡高校の藤田監督は、「セカンドキャリアを考えたら大学に行けと言った」と聞きました。先生はそう言いますよね。

福井はい、親も言っていました。

藤島そこは退かない、と。

福井まずラグビーがあってのセカンドキャリアだと思っていたし僕の場合はラグビーに捧げてやってきたので。ラグビーを優先して考えたいなと思っていました。

藤島それこそ18歳でそうそうたるメンバーのところに飛び込んでみて、最初どうでした?

福井最初の1、2年は何も通用しなかったし試合も出られないので、精神がきつかったですね。

藤島強豪大学に行っていたらおそらく1年、2年で主力になっていただろうし、そのへんのことも考えましたか、当時は。

福井本当にこの道でよかったのかなというのは考えました。

藤島東福岡高校で一緒に戦ったプロップの小林賢太は早稲田に進んで、試合がNHKのテレビに映って。どうですか、心境は。

福井すぐテレビを消していました。

藤島この道に来てよかったとじわっと思ってきたのはいつくらいですか?

福井それも最近で、ジャパンに呼ばれたときぐらいかな、と思います。

藤島昨年のオーストラリア戦の前でしたね。

福井肩書というか実績として初めて形が出たのがジャパンでした。プロに来ていなかったら呼ばれていなかったんじゃないかなと思います。

藤島最初の1年は大変だったと言っていましたけど、入ったときはオーストラリア代表だったデビッド・ポーコックはまだいましたか?

福井2年目までいました。

藤島世界でいちばんターンオーバーが上手だと言われたフランカーがいるわけじゃないですか。盗んだり教えてもらったりということはあったんですか?

福井ひっついてまわって練習も教えてもらっていました。いなくなったなと思っていたら、ロッキー(ラクラン・ボーシェ)が入ってきて。すごいチームだなと思いました。

藤島オールブラックスでこそないものの、ニュージーランドでターンオーバーが屈指のフランカーで、その人と競り合っているわけですよね。

福井正直、ロッキーは僕の中でジャッカルだけと考えたらポーコックより上という感じがしていますね。聞かないで盗もうとしていたんですけど、たまらず聞いちゃって。

藤島教えてくれました?

福井すぐ教えてくれました。独自の重心の預け方とかをやっていて、そこが違いましたね。デビッド・ポーコックは体がすごい柔らかくて筋肉も発達しているから、正直真似しようとしてもできないジャッカルだったんです。けれどロッキーは、誰にでもできると言ったらあれですけど、こつさえつかめばけっこう誰でもできるジャッカルなので、そこがすごいなと思いました。

藤島オーストラリアのジャック・コーネルセンもいます。どの試合でも同じ力を出す、こういうタイプとも競り合っていかなければならない。

福井ジャックは一番バックローで尊敬している選手です。

藤島どういうところが?

福井めっちゃ賢いというか、チームがいてほしいというところにいる選手なんですね。ああいうプレイヤ―が気づかないうちに世界のトップに行っているんだろうなと思いました。

藤島一見線も細いしパワーがあるわけでもないと思うんだけど、どういうところが?

福井何かに頼ってないんですね。例えばベン・ガンターだったら、強いから正直困ったら縦に行けば行けちゃうんですけど、ジャックは頼るものがないというか全部平均的にいいのでなんでもできてしまう。

藤島的確に好敵手たちをみていますね。その観察も大事なんですね。

福井人間観察は好きですね。

藤島大学4年を経て社会に出る同期生と比べ、その年齢でその経験をしているのはものすごいですね。
プロの世界に飛び込んで周りが大人で、趣味とか私生活も影響受けますよね。例えば堀江翔太選手はアウトドアが好きだし、そういう影響も受けますか?

福井僕はもともと古着が好きで堀江さんとプライベートでよく一緒に行ったりしているんですけど、その影響でそのままアウトドアに連れていかれて、それではまったのもありますね。キャンプとか。だから今、古着とキャンプは趣味ですね。

藤島大きなサイズの古着はあるんですか?

福井古着のほうが既製品よりあります。どこから流れてくるのか分からないけれど。

藤島車の運転も好きだと。

福井以前、るんるんで納車した車があって、2日後に神奈川にいきがって行って、とんでもない路地に入ってこすっちゃったんですよ。焦ってとりあえずアクセル全部踏んだら鼓膜破れるくらいの爆発音がして、路地を抜けたらドア3枚がいっていて。2日で修理に出すことになりました。

藤島グラウンドでは冷静なのに判断を誤りましたね。

福井あれはさすがの堀江さんでもアクセル踏んでいたと思います。

藤島そこにも人生の基準として堀江選手が出てくるんですね。

福井堀江さんは僕の道の先を行く人というか、あの人の背中を追っている感じがします。

藤島堀江翔太はラグビープレイヤーとしてどこがすごいですか?

福井自分を持っているところじゃないですかね。チームがうまくいってなかったり自分がうまくいってないとき、誰かのせいにしたくなるんですけど、あの人は常に自分に矢印を向けている。

藤島自分を強く持っているというとチームワークよりそっちを優先するように普通の人は考えるけれど違うんですよね。

福井違います。チームのことを考える上でまずは自分に矢印を向けている。チームに何をすればいいかを常に考えている。多くは発言しないけれどここぞというところで発言するし、人はああいう先輩についていくんだろうなという感じです。

藤島そうそうたるインターナショナルの選手たちに囲まれて技術を盗んで直接聞くこともあって、最後、結論はやっぱりそういうところにいくんですね。人間の内面というか。

福井結局どれだけ技術があっても内側がないと発揮できないと思うので、そこは大事と思います。

藤島今パナソニックで、ポジションを完全につかんだというほど甘くない競争ですけれども、つかみつつある。当然、ファンの人は、次はジャパンだと。一度呼ばれましたしキャップをとって次のワールドカップだと思うわけですけども、そのへんについてどういう展望をもっていますか?

福井先を見過ぎないようにしています。目の前のウエイトだったり目の前のメニューだったり、先を見過ぎるといつも不安しか残らないので、目の前のことをやり続けようと思っています。

藤島先を見過ぎると不安になるというのはなかなか深い言葉ですけれども、いつ頃つかんだんですか?

福井それこそ今年じゃないですかね。

藤島ジャパンと私たちは簡単に言うけれども、パナソニックにジャパンの人たちがひしめいてそこに競争があるんですもんね。扉が2つ3つもあるような。

福井そうですね。1つ開けてもまたあるというような。その繰り返しですね。

藤島具体的には今何を高めたい?

福井引き続きいろいろな人から盗みまくって、それを自分のものにして越えていきたいです。自分で考えてやり続けることですね。

藤島あらためて。高校3年に上がる前に漠然とプロに進もうと思ったと聞いたけれど、後悔はないですね。

福井後悔していたらやってられないので。

藤島この道でよかったと言い切れる。

福井言い切れますし、言い切れるようにこれからも頑張ります。

4月4日ラジオNIKKEI放送
「藤島大の楕円球にみる夢」
text by 松原孝臣

ラジオ番組について:
ラジオNIKKEI第1で毎月第1月曜日18:00〜18:45に放送(第2月曜日18:00〜18:45に再放送)。PCやスマートフォンなどで、radiko(ラジコ)を利用して全国で無料にて放送を聴ける。音楽が聴けるのは、オンエアのみの企画。放送後も、ラジコのタイムフリー機能やポッドキャストで番組を視聴できる。動画版はU-NEXTで配信中。

4月4日放送分ポッドキャスト http://podcasting.radionikkei.jp/podcasting/rugby-radio/rugby-radio-220404.mp3
U-NEXTでは画像付きの特別版を配信 https://www.video.unext.jp/title/SID0090286