藤島大の楕円球にみる夢
(2025/12/01)

ゲスト/竹内柊平選手(日本代表/東京サントリーサンゴリアス)
ゲスト/田村一博氏(「Just RUGBY」編集長)

三井住友銀行(SMBC)ほかがラジオNIKKEI第1で提供するラジオ番組「藤島大の楕円球にみる夢」は、スポーツライターの藤島大さんが素敵なゲストを迎えて、国内外のラグビーや日本代表などの幅広い情報を詳しく伝えています。
12月1日放送のゲストは、今秋の日本代表欧州ツアー全4試合に出場した竹内柊平選手(日本代表/東京サントリーサンゴリアス)と4試合を現地で取材した「Just RUGBY」の田村一博編集長です。

藤島スポーツライターの藤島大です。本日のゲスト、日本代表、そしてリーグワン東京サントリーサンゴリアス所属、プロップ、右のプロップですね。竹内柊平選手です。よろしくお願いします。

竹内よろしくお願いします。

藤島日本代表とほぼ同じようにツアーをして全4試合を取材、帰国したばかりのウェブマガジン「Just RUGBY」編集長の田村一博さんにも来てもらいました。よろしくお願いします。

田村よろしくお願いします。

藤島竹内選手のプロフィールを私の方から紹介します。1997年12月9日生まれ、宮崎県の出身です。今月(12月)の9日に28歳になります。小学6年、地元の宮崎ラグビースクールでプレーを始めて中学3年まではそのスクールに在籍。宮崎工業高校に進んで3年時ラグビー部のバイスキャプテンを務めました。そのまま福岡の九州共立大学へ進んで1年生からずっとレギュラーとして活躍。4年のときにプロップ、実質的に大学を出てから本格的にスクラムを組んだ。

竹内そうですね。

藤島そういう意味ではあっという間のインターナショナルの選手でそこにまた興味が湧きます。大学を卒業、これも泣かせますね、トライアウトを経て2020年、NTTコミュニケーションズシャイニングアークスに加入しました。2022年の6月、NDS(ナショナル・デベロップメント・スコッド)に入りまして、ウルグアイとのテストマッチで初キャップ。この年、リーグワン、浦安D-Rocksの所属となりました。
昨シーズン、D-Rocksを退団して、来たるシーズンからサンゴリアスの一員となりました。183センチ、多くの資料は115キロになっていますが先ほど本人から、今は120キロでその体重でテストマッチも戦ったということです。24キャップです。
11月1日、スプリングボクス、今世界No.1ですね。対戦して7対61、完敗と言っていいと思いますけれども、スクラム強いですか?

竹内半端なかったですね。でも絶対に倒さないと行けない相手なんで、絶対に追いつかないというわけじゃなかったですし、次やったときは倒したいですね。

藤島僕らは怪力ででっかいみたいなイメージですけど組んだらどうなんですか? やっぱり力が強い? それともうまい?

竹内両方ですね。ちゃんと緻密っていうか。本当にやりにくかったですね。しかも僕が最初に組んだのはンチェ選手だったので。彼は本当に半端ないですね。本当に世界で一番強いと思います。

藤島文章に書くときも喋るときも、スクラムが彼は強いって書くんだけど。説明するとどんな感じですか?

竹内セットアップ自体がまずちょっと特殊っていうか。近年のプロップってバインドで足を絶対下げるんですけどンチェ選手は多分身長が南アフリカの中じゃあまりない方なので、脚下げなくてそのままの姿勢で組むんですよ。なので、僕らはよく「壁」っていう言葉を使うんですけど、壁が下がらないまま組むので後ろの押しを完璧にもらえるんですよね。「レディゴー」という向こうの押す合図とともに、ぐっと下がってくるんですよ。ぱっと伸びてきて、多分スクラムの指導者が教える子たちに毎回説明するんですけどできないところを、本当に何て言うんすかね、教科書に書いてあることって難しいことじゃないですか。それが本当にできている選手っていうか。

藤島南アフリカ、沈まなくても良さそうに感じるけれど。

竹内沈むんですね、めっちゃ。

田村またね、ベストメンバーで本当に気合が入っていましたね。リーチマイケル選手の話を聞くとリーグワンでやるときの4倍ぐらいだったと。リーグワンで手を抜いているんじゃなくて、代表になるともっともっと彼らが集団になって襲いかかってくる、それくらいの体感だって言っていました。

竹内本当、彼らのチームへの愛を感じたっていうか。1人がゼイゼイしながら、それかけてもめくれないでしょっていうブレイクダウンにかけるんですよ。もう完成しているラックに対してかけて、もう絶対めくれるはずないじゃないですか。でも、それでかけて、そこに時間を使って、周りを休ませる。

藤島それは人のためにやる。

竹内そうなんですよ。それをシステムでやっていて、一見、彼らのすごいのはスクラムとかフィジカルの部分に見えるかもしれないですけど、やっぱチームへの愛ってこういうことなんだ、コネクションってこういうことなんだなっていうのを一番学びました。

藤島次にアイルランドと10対41。アイルランドも歴史的に見ると本当にスクラムを大切にする国ですね。ここもやっぱり独特ですか。

竹内結構特殊でしたね。僕が組んだアイルランドの1番、アンドリュー・ポーター選手もフッカーに肩を隠して、ケツはずれるんですけど、そこでしっかりとアングルで来るというか、反則じゃないグレーゾーン。

藤島少し斜めになっている。

竹内そうです。グレーゾーンを攻めるようなスクラムで日本ではあまりないと思います。

藤島3戦目のウェールズは23対24。東京の酒場では、ラグビー好きはみんな「ユーズ・イット」問題で盛り上がっていたんですよね。

竹内やっぱ人間なんで、審判も。そこは仕方ない。勝つチャンスもたくさんあったし要所で僕も大きなミスが何回かありましたし、まずは自分たちにベクトルを向けるところですね。

藤島最後のジョージアは25−23で勝ちました。

竹内正直フィールドプレーのコンタクトだけだったら、一番強いと思いますね。

藤島硬い?

竹内硬いですし、1対1で目の前の勝負に勝つという思いがすごいんでしょうね。1対1というのがめちゃくちゃ上手で、当たり方とか。ゲインするより1対1をまずぶっ飛ばす。

藤島ステップでずらすとか。

竹内あまりないですね。だから本当にフィジカルバトル、楽しかったですね。

田村ジャパンの練習場がジョージア協会の活動拠点みたいなところで壁画というか色んな絵が描いてあるんです。でもトライしている絵が1個もないんですよ。ハンドオフしていたり、スクラム組んでいたり。ここにラグビーのプライドというか原点があるんだなって感じがしましたね。

藤島最後、李承信選手のペナルティーゴールで逆転。タッチラインの外に退いていましたけれども。

竹内もちろん信じていましたね。絶望的状況でしたけど、誰も諦めていなかったと思います。だから泣きましたもんね。正直。

藤島しっかり決めたもんね。

竹内承信選手に聞いたら、レーザーポインターを目に当てられたらしくて、こいつ、すげえなと思いました。

藤島ここからはファンの愛する右プロップ竹内柊平選手はどこからやってきたのかを。小学6年、小学校に何か運動用具を貸し出すセクションがあって。そこにラグビーボールがあったと。

竹内その年にラグビー普及をやっている先生が赴任して来て、最初の挨拶のときに「ラグビーボール貸し出します」と言って。僕の地域、ラグビーは全くなかったのでラグビーっていう単語にまずびっくりして。僕が借りに行ったのは夏ぐらいだったんですけどそれまで誰も借りてなかったんじゃないですかね。ラグビーを見たことなかったのと、その先生も怖かったので。
その当時、危ないからということで野球駄目、サッカー駄目で昼休みはドッジボールしかなくて。もうマンネリすぎて、ラグビーボールでドッジボールをしようとひらめいて借りに行きました。その先生に「ラグビー興味あるのか」って言われて「あります」って言っちゃったんですよ。見たこともないですし、どんなスポーツかも知らないのに。近くの中学校に連れて行ってもらって初めてラグビーという競技を体験して、もう虜になりました。自分の中に電撃が走りましたね。走っていいし投げていいし蹴っていいしぶつかっていいし。感動しました。

藤島そのおっかない先生にボールを借りに行ったところがポイントですね。中学はスクールでやって、高校でもラグビーを。それくらい好きになっていた。

竹内ラグビーはめちゃくちゃ好きでした。でも本当はやめようとしていて、バスケ得意だったので別の高校でバスケしたかったんです。そうしたら恩師と出会って、宮崎工業でやってみないかって言ってくれて、ラグビーしたくなりました。

藤島それで九州共立大に行って、これは何か資料で読んだんですけど。大学2年のときベンチプレスは90キロ。今はどれくらい?

竹内180キロくらいですかね。地方の大学の、練習やらない選手って本当にやらないんですよ。まさに僕がそれで、入学した当初は105キロとかですごいなってなったんですけど大学2年の測定で90に落ちていましたね。

藤島伸びないで落ちた。

竹内体重は10キロ増えたんですけど。何してんだって感じですよね。

藤島今こうなっているってことはどこかで覚醒したわけでしょう?

竹内大学2年の近畿大学との練習試合ですね。相当やられて。

藤島それで、このままじゃいけないと思った。

竹内いや、もうやめようと思って、もう全然根性なかったんで、ラグビー面白くないわ、やめようって思って。そのときに大学の監督やお世話になった先輩、そういった方々が腐っている僕に優しくしてくれて、とりあえずこの人のために頑張るかと思ってちょっと頑張って。でもその年も結局九州リーグで4位に終わって。この人たちが誇れるような選手になりたいなと思って、1回こういう感じになったことあるなと思い出したんですけど、高校の恩師の佐藤先生に、卒業式で僕は泣きながら言ったんですよね。「あなたが誇れるような生徒になります」。これだと思って、僕がラグビーやっている意義っていうか、生きる意義って恩返しなんだなってそのときに思って。

藤島「人のためにやる」ってキーワードですね。

竹内やり出しましたね。裏に山があって、朝練が6時半からあるんですけど、8時に終わって朝定食を食べて山に行って走って。

田村先日の取材で聞いたいい話があって、1人でやるじゃないですか。常に自分と同じ学年とかで代表に選ばれていたり、U-20とかに入っている人を全部見ていた。体はどうだとか、どういう選手だとか、それを目標にしてやるんです、って。

竹内同期の3番、ほぼ全員知っていますよ。当時のトップリーグのプロップもほぼ知っていると思います。めっちゃ見ていました。

藤島仮想の目標として、最も脳裏にあったのは誰だったんですか?

竹内それこそ今、(サンゴリアスで)同期の中野幹選手とかめっちゃ見ていました。あと笹川大五選手、藤井大喜選手とか。同級生、全部チェックしていました。

藤島そういう行動をとるっていうのは燃えているんだよね。

竹内絶対にトレーニングを休みたくなかったんですよね。「もっと明治はやっているから」とか勝手に自分を洗脳して。

今でも覚えているんですけど、台風のとき走ったんですよ。後輩に「柊平さん、今日はやめといた方がいいんじゃないですか」と言われました。「いや今日行かんと後悔するぞ。九州は雨やけど向こうは晴れとるわ」と言ったら、その後輩、元・三重ホンダヒートの肥爪駿選手なんですけど、そいつも「確かにそうっすね。行きましょう」。

藤島そしてトライアウトに行く。自信はあったんですか。

竹内僕はずっと思い込みというか周りをでかく見ていたので、絶対やばい奴しかいないと思ってやったら、結構いけましたね。

藤島これも最近知ったんですけど宮崎市に「HORIZON」というスポーツのクラブを作った。

竹内ラグビーだけじゃないです。マルチスポーツのクラブを運営しています。

藤島なぜやろうと?

竹内子どもたちに色々な可能性を与えてあげたいなと思って。僕はたまたま恩師とかいい先輩がいた。でも出会えない子どもたちは沢山いると思うんですよね。ラグビー以外でも僕は正直いいと思いますし、何よりスポーツの素晴らしさを広げたい、スポーツを好きになって欲しいのでやっています。

田村宮崎に帰られたら、恩師の先生がいる高校に必ず顔を出す。九州の学生リーグに取材に行くと、フロントロウの人たちがみんな「柊平さんみたいになりたい」と。目標とされる人間になるってどうですか?

竹内これ以上はないですよね。本当にありがたいです。

田村指導者の人たちも日本代表のメンバー表に九州共立大って出ているのがすごく励みになるんだよ、と。

藤島有名になっても無名のときの人や土地を大事にする人はいい人。私は長く生きていて分かる。

竹内そこがなかったら今の自分は間違いなくないので。

田村1個聞きたいんですけど、ツアー中もジャパンってハードなトレーニングをするじゃないですか。やりすぎなんじゃないか、だから怪我人が出るんじゃないかっていう声も外野から聞こえてくる。その辺はどうですか?

竹内いや、やっていいと思っています。ずっと泥臭く努力して一歩一歩積み上げて行くというのが日本代表だし日本代表の歴史を作ってきた方々も間違いなくその道をたどっている。そこが日本代表のアイデンティティだし、日本代表らしさに間違いなくハードワークはあると思うので絶対に必要だと思います。

藤島挑戦者に調整なし。

竹内間違いないです。

藤島新しいクラブ、サンゴリアスに移ってどうですか。

竹内いやもうめちゃくちゃわくわくしていますね。個人としては新しいチャレンジ、そしてチームとしても優勝に向けて、すごくチャレンジングな1年だと思いますし、めちゃくちゃ楽しみです。

藤島日本代表、リーグワン東京サントリーサンゴリアス所属のプロップ竹内柊平選手でした。ありがとうございます。

竹内ありがとうございました。

藤島ウェブマガジン「Just RUGBY」の田村一博編集長、ありがとうございます。

田村ありがとうございます。

12月1日ラジオNIKKEI放送
「藤島大の楕円球にみる夢」
text by 松原孝臣

ラジオ番組について:
ラジオNIKKEI第1で放送。PCやスマートフォンなどで、ラジコ(radiko)を利用して全国無料にて放送を聴ける。音楽が聴けるのは、オンエアのみの企画。放送後も、ラジコのタイムフリー機能やポッドキャストで番組が聴取できる。動画版はU-NEXTで配信中。

12月1日放送分ポッドキャスト http://podcasting.radionikkei.jp/podcasting/rugby-radio/rugby-radio-251201.mp3
U-NEXTでは画像付きの特別版を配信 https://www.video.unext.jp/title/SID0100786