藤島大の楕円球にみる夢
(2026/07/06)

ゲスト/流大氏(「東京サントリーサンゴリアス」アシスタントコーチ)

三井住友銀行(SMBC)ほかがラジオNIKKEI第1で提供するラジオ番組「藤島大の楕円球にみる夢」は、スポーツライターの藤島大さんが素敵なゲストを迎えて、国内外のラグビーや日本代表などの幅広い情報を詳しく伝えています。7月6日放送のゲストは、元日本代表で、東京サントリーサンゴリアスのアシスタントコーチに就任した流大さんです。

藤島スポーツライターの藤島大です。 ゲストは、ラグビーの元日本代表、このほど、東京サントリーサンゴリアスを引退してコーチに就任することが発表された流大さんです。よろしくお願いします。

よろしくお願いします。

藤島私の方からプロフィールを紹介します。1992年9月4日生まれですから、33歳。若い。福岡県の久留米市の出身です。小学2年で、地元のりんどうヤングラガーズに入ってラグビーを始めます。お兄さんは野球をしていたんですよね。高校は熊本県立荒尾高校、今、岱志高校。こう聞くとすごく越境した感じですけど、実は鹿児島本線では30分か40分ぐらいですかね。

はい、県境なので。

藤島要するに通学圏内。荒尾高校を選んで、2年、3年と花園に出場。荒尾高校ではキャプテンで、ここから皆さんご存知だと思いますが帝京大学に進んでちょうどV6達成の時のやはり主将でした。東京サントリーサンゴリアスを選び、ここでもキャプテンで二度優勝しています。つまり勝ちまくる男ですね。羨ましくなる。
日本代表としては2017年4月の韓国との試合で初めてのキャップをつかみます。そして2019年の忘れられないワールドカップで、アイルランド、スコットランドを破った時の9番ですね。2023年、これも私は現地にいて、実はジャパンは結構悪くなかったと個人的に思っているんですが、その時の主力でもありました。
キャップ数は36です。ポジションはスクラムハーフ。166センチ、75キロ。 現役の時のサイズであります。この間のリーグワンを見るとまだまだできるとみんなが思いますよね。燃え尽きた、峠を越えた引退じゃなく、まだ全盛に近いぐらい。でも決めていたんですか?

2年ほど前に引退しようと思った時期がありました。もちろん体も一番いい状態ですし、自分のプレーにも手応えを感じていたんですけど、もともとコーチ業にすごく興味があって、早いうちにスタートしたいという気持ちはありましたし、長くチームにいて、いい意味でも悪い意味でも影響力を持っているので、なかなかリーダーシップをとる後輩が出てこないのも決意したところです。自分の美学というか、うまいまま終わりたいっていう気持ちも正直ありましたのでこのタイミングで決めさせていただきました。

藤島後輩のリーダーの出現を促す、そのために自分が身を退く。ラグビーらしいですね。他のプロスポーツで、あんまり聞いたことがないです。もともとコーチングに興味が?

もともとは高校の徳井監督に影響を受けて教師になりたいと思って大学でも教職をとっていたんですけど、日本代表の合宿に招集していただいて教育実習に行くタイミングがなくて、教育者としてじゃなくラグビーの指導者を目指していきたいと大学の時に思いました。

藤島荒尾高校の徳井清明監督、もうその人が偉いんだなと私は思ったんですけど。

徳井先生との出会いが原点ですね。

藤島昔、何かのインタビューで読んだんですけど、小さいことを大切にするんだと。

高校ではトイレのスリッパを並べるとか、落ちているゴミを拾うとか、誰でもできるようなことを継続できる人間が一番強い、それができない人間はラグビーも絶対うまくならないと指導をされて、刺激を受けました。

藤島サッカーの岡田武史さんというジャパンの監督をした人に何度もインタビューしたことがあるんですけど、低迷しているマリノスの監督になった時、最初にやったのが寮の合宿所の玄関の靴を綺麗に並べること。次に、グラウンドにベンチがあって、練習後選手がたわいのない会話をするのを見てこれは良くないとベンチを取り除くんですね。それを思い出しました。荒尾高校はそこをつかんでいたんですね。だから花園に行けた。
この間のリーグワン、結果的には4強に行くんですけど正直なかなか苦しいシーズンで、例えばコベルコ神戸スティーラーズと比べるとどうでしたか?

自分たちはアグレッシブ・アタッキング・ラグビーという揺るぎないものがあったんですけど、そのスタイルを貫けなかったと思います。クボタスピアーズ船橋・東京ベイであり、神戸であり、彼らは自分たちのスタイルを貫いていて、そこに差があったと思います。少し保守的というか平均的なラグビーをしてしまったイメージがあります。

藤島なるほど。
これはどうしても聞かなくてはいけない。2019年のワールドカップ。アイルランドとスコットランドに歴史的勝利。あの現場にまさに9番でいた。例えばあのアイルランド戦、どんな感じだったんですか?

それまではキックを多用する戦術をやっていたんですけど。アイルランド戦で初めてボールを保持するポゼッションラグビーをするとなって、僕たちもびっくりして。それまでは3回に1回蹴るというプログラムがあったんですけど、この試合は6回から7回に1回キックを蹴るくらいでいいというトニー・ブラウン・コーチの戦術があって、それをやれば勝てるとプレゼンがあったので、すごく自信を持って臨みました。

藤島何日ぐらい前に言われたんですか?

1週間前です。

藤島ちょっと驚きです。イギリスの新聞も、残忍なほどのハンドリングの良さだと書いた、きらめくようなパスワーク。あえて言えば蹴ってばかりのチームの選手がすぐできるとは思わないじゃないですか。練習はしていた?

蹴っていい練習とボール保持しないといけない練習をやっていました。

藤島ちゃんと2本立てで準備を。アイルランドに続きサモアに勝って、スコットランド戦は緊張の試合ですよね。

みんな、絶対に勝てると思っていました。負ける要素がないというくらいまで仕上がっていたと思います。

藤島次の2023年大会はプールマッチを突破できなかったので失敗とくくりがちですけど、よく見ていると日本のラグビーは強くなったなって思ったんですよね。あのチームどうでした?

いいチームでしたし、確実に2019年よりは強くなったと思うんですけど、世界の成長曲線の方が大きかったなって感じましたね。

藤島今日、これを聞きに来たようなものですけど、イングランド戦、7分35秒ぐらい。日本が蹴ってイングランドがコーナーに逃げてボールがタッチへ出る。エリオット・デイリーという有名な選手がクイックスローを警戒して、ちょっとボールを転がして、背番号9、流大がわざと背中を突き飛ばす。つまり喧嘩をしに行ったんですよね。私、ガッツポーズしました。流、すごいと本当に思った。

今思えば、エリオット選手にはちょっと申し訳ないんですけど、イングランドという強いチームに飲み込まれるのだけは嫌だったので、僕が最初に喧嘩を吹っかけて、みんなが闘争心を持って戦いに行くという状態にしたくて突き飛ばしちゃいました。

藤島いつの日かジャパンがワールドカップを優勝する日が来たら、「ここから始まった」とあの場面をテレビ局が流すべきで、日本がラグビーの喧嘩をするところのステージに上がったって僕は思ったんですね。

ああいうのをやれるのはやっぱりスクラムハーフで、それも大事な要素かなと思いますね。フッカーのジェイミー・ジョージも僕に「何やってんだ」と言ってきて、よしよしって思っていました。

藤島海外の同じポジションで「この人は」と思う人はいました?

南アフリカのファフ・デクラークはちょっと嫌だなと思います。ずっと視界に入ってくるんですよ。僕がパスをさばこうとする時とか、キックを蹴ろうとする時。それだけでちょっとプレッシャーかかるので、それを知っているんだなと。

藤島一緒にプレーをしたり戦ったりして、本当にいい選手だという人はいますか?

トップリーグ時代では神戸のダン・カーター。決勝で僕たちは負けたんですけど、すごいなと思いますね。足が速いとか体が強いとかじゃないのに、なんでここまでできるのか。目の当たりにしました。

藤島ただ真っすぐ走って、投げるべき時は投げて投げないときは投げないだけに見えるんですけど、それができそうでできない。

基本に忠実ですね。それを一貫してできるプレーヤーでした。

藤島フーリー・デュプレアというハーフがサンゴリアスにいたじゃないですか。重なっている?

1年間やりました。

藤島あの人、上手だったでしょう。南アフリカで優勝したスクラムハーフ。

飛び抜けてうまいです。パスもキックももちろんですけれど、ゲームを支配している。 チームメイトも相手選手も、レフリーもすべて把握して支配している感覚ですね。

藤島レフリーのことも。それはハーフに大事なこと。

大事ですね。謙虚にやらないといけないんですけど、レフリーに喋るというのはジェイミー・ジョセフにも求められていた部分です。レフリーマイクというのがあって、それを分析の時に聞けるんですけど、この試合よかった、ここの試合は足りないというレビューをかなりやりましたね。

藤島この人はたくさん喋った方がいい、この人は、はいと言っておいた方がいいとか違うんでしょう?

プレッシャーをかけた方がいい方もいらっしゃいますし、言うと判定がよくない方に行くレフリーもいるので、すべてのレフリーの性格やマネジメントを理解した上で喋っていました。

藤島ジャパン、あるいはサンゴリアスで10番と組む中で、例えば田村優選手はどういうタイプ?

すごくやりやすいです。 声が大きくて常に声を出してくれるので、僕はラック周りのこととフォワードのことに集中できる。普段から準備を一緒にやっているので、優さんがパスを出せと言った時に、僕がキックの判断をしても認めてくれる選手でした。まあ王様気質ではあって、パスがちょっと乱れると嫌な顔をするので、いいところに投げないと、と常に思っていました。

藤島あと、一緒に組んだ10番で覚えている人います?

小野晃征さんですね。あれだけ体が小さくてもゲインラインを切っていけるのは頼もしかったです。小野さんは、コミュニケーションのレベルも高いスタンドオフだったと思います。10番はやっぱり王様でなければいけないと思うので、みんなを支配できて、声で動かせて、自分のプレーでも影響を与えられる、今の若い選手たちにも、そうあって欲しいなと思います。

藤島晩年の流大という人のパスの優しさ、解説してもほれぼれしちゃって高校生とか、大学の1、2年生に見て欲しいなって思ったんですけど、あれ、意識しているんでしょう?

パスを放る相手の特徴を見て、パスを放る角度、スピードは意識して投げていました。基本は前に進むスポーツなので、人の前に投げてあげるというのは絶対大事で、そこの幅ですね。前に投げて走り込ませるのか、少しだけ前でキャッチに余裕を持たせるのかは意識していますね。

藤島今年はネーションズチャンピオンシップという大イベントも始まります。ジャパンをどう見ていますか?

やっぱり勝っていかないといけないなと思います。勝つという成功体験をしないといけない。メンバーも怪我もあったりなかなか一貫しないので、色々な選手を試せるという意味ではポジティブだと思いますけど、そろそろ固めていかないといけないと思います。

藤島今、ジャパンで注目する人いますか?

この間のマオリ・オールブラックス戦を見ると、伊藤龍之介は思い切ったプレーはできていたと思うので、李承信との争いに入っていけるんじゃないかなと思いました。ただ、パスも雑なところがいっぱいありましたしこれからだと思います。

藤島最後に東京サントリーサンゴリアスの新しいコーチとして、監督に沢木敬介さんが来てどんなチームになりそうですか?

自分たちのスタイルをもう一回確立しないといけないと思っています。沢木さんがやりたいラグビーを選手に少しでも浸透させるのがコーチの役割でもありますが、受け身のコーチングだけじゃなくて、僕自身も自分の芯を持って、影響力を与えられるようになりたいですね。

藤島今月のゲストはラグビー元日本代表で2025-26シーズンでの現役引退と、東京サントリーサンゴリアスのアシスタントコーチ就任を発表された流大さんでした。ありがとうございます。

ありがとうございました。

7月6日ラジオNIKKEI放送
「藤島大の楕円球にみる夢」
text by 松原孝臣

ラジオ番組について:
ラジオNIKKEI第1で放送。PCやスマートフォンなどで、ラジコ(radiko)を利用して全国無料にて放送を聴ける。音楽が聴けるのは、オンエアのみの企画。放送後も、ラジコのタイムフリー機能やポッドキャストで番組が聴取できる。動画版はU-NEXTで配信中。

7月6日放送分ポッドキャスト http://podcasting.radionikkei.jp/podcasting/rugby-radio/rugby-radio-260706.mp3
U-NEXTでは画像付きの特別版を配信 https://www.video.unext.jp/title/SID0100786