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公開日:2022.12.28

賃貸借契約書とは?作成時のポイントや不動産賃貸の流れ、電子契約のメリットなどを解説

賃貸借契約書とは?作成時のポイントや不動産賃貸の流れ、電子契約のメリットなどを解説

マンション・アパート等の賃貸物件を貸し借りする際に、貸主と借主の間で取り決めた経済条件などを記載するための重要な契約書である賃貸借契約書。記載事項や作成時のポイント、不動産賃貸の流れなどについてまとめました。
また、2022年5月施行の宅建業法改正により認められた電子契約の概要やメリットについても解説します。

賃貸借契約とは?

賃貸借契約とは、マンション・アパート等の賃貸物件を貸し借りする際に貸主と借主間で締結する契約のことです。
具体的には、貸主がある賃借物(貸し借りの対象となるモノ)を借主に使用・収益させることを約束し、その代わりに借主が貸主に賃料を支払うことを取り決める契約のことです。

賃貸借は、民法第601条で定義されています。

賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うこと及び引渡しを受けた物を契約が終了したときに返還することを約することによって、その効力を生ずる。

また、賃貸借契約においては、民法だけではなく借地借家法などの特別規定が設けられています。そしてそれらの規定に基づき、建物の賃貸借契約は、「普通建物賃貸借契約」と「定期建物賃貸借契約」の2つに分類されます。
2つの賃貸借契約の主な違いは以下の通りです。

普通建物賃貸借契約

通常、1年以上の契約期間を定め、期間満了時には自動更新(更新拒絶の申し入れがなされ、その申し入れが正当である場合を除く)される契約のことです。貸主は、正当な理由がある場合や借主が解約を望む場合以外は、契約更新を拒絶することはできません。
締結においては、口頭による契約も有効です。

定期建物賃貸借契約

契約満了時に契約が終了し、更新がない契約のことです。
ただし、契約期間が1年以上の場合、契約終了の旨を、特定期間の間に貸主から借主に通知する義務があり、これを行わない場合は、貸主は借主に対して契約終了を主張することができません。また、賃貸人と賃借人間で再契約を行うことは可能です。
締結においては、契約期間を定めた上で、「公正証書などの書面による契約」及び、「契約期間満了時に賃貸借契約が終了する旨などを記載した説明書面の交付及び事前説明」が必要になります。

賃貸借契約書とは?

賃貸借契約内容について、貸主と借主の間で締結した契約書のことを、賃貸借契約書と言います。普通賃貸借契約では口頭での契約締結も可能ですが、契約をめぐるトラブルを防止するには、当事者同士の合意条件を書面に残しておくことが良いでしょう。

賃貸借契約書について、法律で使用が義務付けられたフォーマットはありませんが、国土交通省が公表している賃貸借契約書のフォーマットを利用することもできます。

賃貸借契約書の記載条項と気を付けるべきポイント

賃貸借契約書には記載すべき事項が多数ありますが、ここでは特に記載内容について注意する必要性がある項目について、解説します。

1.  賃貸借の目的物

実際に貸し借りの対象となる賃借物について、記載する項目になります。建物名称・所在地、(マンションであれば)具体的な部屋番号、実際に使用できる設備や付属施設などについて記載します。

2.  契約期間

実際に貸し借りを行う期間について、記載する項目になります。普通賃貸借契約においては、1年未満の場合には期間の定めのない契約とみなされる(借地借家法第29条1項)点に注意しましょう。

3.  賃料等

実際に貸し借りを行う際の賃料について、記載する項目になります。賃料だけではなく、共益費・敷金・付属施設の使用料など、区分して記載する項目を設けるとよいでしょう。また、賃料の支払い方法(振込、口座引き落とし、手渡し等)についても、本項目で記載するとよいでしょう。

4.  貸主及び管理業者/5.借主及び同居人

実際に貸し借りを行う貸主(及び管理業者)や借主の氏名、住所、電話番号等の情報について記載する項目になります。トラブル発生時や、契約の解約・更新を行う等の連絡先を明確にしておきましょう。

6.  家賃債務保証業者  もしくは  連帯保証人

借主が何らかの事情で賃料の支払いを行うことが難しくなった場合に、賃料を立て替える家賃債務保証業者、もしくは代わりに賃料を支払う連帯保証人について記載する項目になります。貸主にとっては賃料を受け取れない可能性が低減されるメリットがある一方で、連帯保証人にとっては借主に代わり賃料の支払いをするというリスクがあります。連帯保証人を設定する場合は、関係者でよく協議することが必要です。

物件を貸し出すまでの流れ

物件を貸し出すまでの流れ

賃貸借契約書について説明をしてきましたが、実際に物件を貸し出す際の流れはどのようなものでしょうか。物件を貸し出すまでの一般的な流れを紹介します。

Step1   賃料や募集条件を考える

家賃や管理費、さらには敷金・礼金などを決定する必要があります。適正な料金設定をするためには、周辺物件の相場を確認すると良いでしょう。また、契約期間やペットの可否、退去時の原状回復費用の範囲等、入居における条件も考える必要があります。

Step2   不動産仲介業者と契約を結ぶ

貸主が一連の手続きをすることも可能ですが、自らで入居者を募集するのが困難な場合、入居募集の活動をサポートしてくれる不動産仲介業者に依頼しましょう。入居希望者の募集、入居に関するサポート等、一連の業務を担ってくれます。

Step3   入居希望者を募集する

賃料や契約期間等、賃貸条件を決定した上で、入居希望者を募ります。不動産仲介業者と契約を結んでいる場合、不動産仲介業者がホームページへの物件掲載や、店頭での物件紹介などを行います。

Step4   入居申込者に対し審査を行う

入居申込者が賃料を支払うことができるのか、入居における条件を守ることができる人物であるか等、審査をする必要があります。

Step5   入居申込者と賃貸借契約を結ぶ

入居申込者の審査が完了した後に、入居者と賃貸借契約を結びます。不動産仲介業者と契約を結んでいる場合、不動産仲介業者が契約手続きのサポートを行います。

法改正で不動産賃貸契約は電子契約も可能に

従来、賃貸借契約書をはじめとした不動産の取引時に必要な書類は、紙でやり取りする必要性がありました。(宅建業法35条書面および37条書面より)
しかし、宅建業法の改正により、2022年5月から、電子署名やタイムスタンプを有した電子契約のシステムを用いれば、賃貸借契約書をはじめとした紙書類を電子化することが可能になりました。

賃貸借契約書の電子化メリット

法改正により賃貸借契約書類を電子化することが可能になりました。ここでは、賃貸借契約書を電子化するメリットについて、具体的に見ていきましょう。

賃貸借契約書の電子化メリット

業務効率化が可能

賃貸借契約書をはじめとした契約書を書面で締結するには、作成した契約書を印刷や製本、郵送、捺印をする必要があり、大きな手間がかかります。しかし、電子契約であれば、システム上で契約までのすべての手続きを完結できるため、大幅な業務効率化が可能です。

コスト削減が可能

電子契約では、印刷、郵送にかかるコストが不要になります。また、書類の保管のためのファイルやキャビネ等を用意するコストもかからなくなります。電子契約システムの利用には年間利用料や契約締結毎の従量料金が発生しますが、契約件数や頻度の高い企業であれば、電子契約システム導入によるコストメリットが出る可能性が高いです。

契約手続きの可視化が可能

電子契約システムには契約締結までの進捗状況や契約締結済みの契約書を確認できる機能があるものが多いです。契約の進捗状況が一目で把握できる為、円滑に手続きを進めるためにフォローを入れることも可能になります。

賃貸借契約書の電子化で、より効率的に契約の締結や管理をしよう

賃貸借契約の締結においては、借主/貸主間や、貸主/不動産会社間などで契約書を交わす必要性があります。宅建業法の改正により、2022年5月から賃貸借契約書を電子化することができるようになった影響で、賃貸借契約書の電子化ニーズも高まってくるでしょう。電子化すれば、オンラインで契約締結から保管まで完結し、業務効率化やコスト削減などにもつながります。

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(※)2022年12月28日時点の情報のため、最新の情報ではない可能性があります。
(※)法務・税務・労務に関するご相談は、弁護士や税理士など専門家の方にご相談いただきますようお願い申し上げます。

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