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公開日:2024.11.12

ワークエンゲージメントとは?従業員エンゲージメントのビジネス上の意味と違いも解説

ワークエンゲージメントとは?従業員エンゲージメントのビジネス上の意味と違いも解説

近年、ビジネス界で注目を集めている「エンゲージメント」。この言葉を耳にする機会が増えていますが、具体的に何を意味し、なぜ重要なのでしょうか?本記事では、エンゲージメントの定義から、ワークエンゲージメントの重要性、そしてそれを高める方法まで、詳しく解説していきます。

エンゲージメントとは

エンゲージメントとは、広義には「関与」や「約束」を意味する言葉です。

ビジネス上の意味では、たとえば以下の意味で使用されます。

  • ・顧客とのエンゲージメント:顧客と企業との間の継続的な関係性や相互作用のこと。
  • ・投資家とのエンゲージメント:投資家が企業に対して行う、建設的な目的を持った対話のこと。
  • ・従業員のエンゲージメント:従業員が組織や仕事に対して持つ愛着や熱意のこと。

企業にとって、従業員のエンゲージメントを高めることは非常に重要です。エンゲージメントの高い従業員は、仕事に意欲的で、高いパフォーマンスを発揮し、組織目標達成に貢献します。
逆に、エンゲージメントの低い従業員は、仕事への取組が消極的で、パフォーマンスが低下し、離職につながる可能性もあります。
エンゲージメントの概念は、心理学や社会学、経営学など、様々な分野で研究されてきました。特に、近年では、企業における従業員エンゲージメントやワークエンゲージメントが、組織全体の成功に大きな影響を与えるという認識が広まり、注目を集めています。

エンゲージメントを活用したより良い組織づくりにご関心のある方は、こちらも合わせてご参照ください。

ワークエンゲージメントとは

ワークエンゲージメントの意味

ワークエンゲージメントとは、従業員が仕事に対して情熱を持ち、没頭し、高いパフォーマンスを発揮するような、仕事に対してポジティブで充実した心理状態を指します。
ワークエンゲージメントが高い従業員は、仕事に対する満足感が高く、組織への帰属意識も強くなります。
このため、企業においては、従業員のワークエンゲージメントを高めることが、全体の生産性向上や業績向上に直結する重要な要素となります。

ワークエンゲージメントの歴史と背景

ワークエンゲージメントの歴史と背景

出所:株式会社日本総合研究所資料

ワークエンゲージメントという概念は、1990年代後半から2000年代初頭にかけて注目され始めました。この概念を最初に提唱したのは、オランダの組織心理学者ウィルマー・シャウフェリ(Wilmar Schaufeli)らの研究グループです。
従来のバーンアウト(燃え尽き症候群)研究の対極として、仕事に対してポジティブで充実した状態を「ワークエンゲージメント」と定義しました。具体的には、以下の3つの要素から構成されるとしています。

要素 定義
熱意(Dedication) 仕事への強い関与と意義、誇り、挑戦の感覚
没頭(Absorption) 仕事への集中と没頭
活力(Vigor) 仕事への高いエネルギーと精神的な回復力

この概念が提唱されて以来、ワークエンゲージメントは組織心理学や人事管理の分野で重要なトピックとなり、多くの研究や実践が行われてきました。

従業員エンゲージメントや従業員満足度との違い

ワークエンゲージメントと従業員エンゲージメントの違いとは?

従業員エンゲージメントの正式な定義は存在しませんが、「組織への愛着・誇り」「組織へのコミットメント」「組織に対する自己効力感」を合わせた概念として定義している事例もあります。

ワークエンゲージメントと従業員エンゲージメントの違いとは?

出所:株式会社日本総合研究所資料

ワークエンゲージメントと従業員エンゲージメントは、どちらも従業員の仕事に対する意識を表す指標ですが、その対象範囲が異なります。

  • ・ワークエンゲージメント:従業員が自分の「仕事に」どれだけ積極的に関わり、熱心に取り組んでいるかを表す指標です。
  • ・従業員エンゲージメント:従業員が「組織全体に」どれだけ積極的に関わり、熱心に取り組んでいるかを表す指標です。

つまり、ワークエンゲージメントは「仕事へのエンゲージメント」、従業員エンゲージメントは「組織へのエンゲージメント」と言えるでしょう。

ワークエンゲージメントと従業員満足度の違いとは?

ワークエンゲージメントに類似する指標として、従業員満足度があります。その考え方の違いを確認していきましょう。

ワークエンゲージメント

ワークエンゲージメント

従業員満足度(ES)

従業員満足度(ES)
  • ・ワークエンゲージメント:従業員と会社との信頼関係に基づく、自発的な貢献意欲・帰属意識を表す双方向的な指標です。
  • ・従業員満足度:会社から与えられる環境・待遇・福利厚生などを従業員だけの物差しで評価するもので、一方向的な指標です。

従業員満足度は、会社から与えられるモノが悪化すれば失われる可能性があるのに対し、ワークエンゲージメントは双方向の信頼関係に基づいており、危機においても失われることはありません。

エンゲージメントを高めるメリット

売上と利益の向上

エンゲージメントの高い従業員は、仕事に意欲的で、高いパフォーマンスを発揮します。そのため、企業全体の売上や利益の向上に貢献します。
多くの研究で、エンゲージメントの高い従業員が所属する企業は、そうでない企業に比べて、売上や利益が高いという結果が出ています。これは、エンゲージメントの高い従業員は、仕事に熱心に取り組むだけでなく、創意工夫や新しいアイデアを生み出す可能性も高いからです。

離職率の低下

エンゲージメントの高い従業員は、自分の仕事に満足しており、会社への愛着も強いため、離職率が低くなる傾向があります。
近年、人材不足が深刻化する中、従業員の離職率を抑えることは、企業にとって非常に重要な課題となっています。エンゲージメントを高めることで、従業員の定着率を向上させ、人材の流出を防ぐことができます。

従業員が離職する背景について詳しく知りたい方は、こちらも合わせてご参照ください。

人材獲得に有効

エンゲージメントの高い企業は、従業員が働きやすい環境であると認識され、優秀な人材を引き付けやすくなります。
特に、近年では、従業員のエンゲージメントを重視する企業が増加しており、エンゲージメントの高い企業は、求職者から高い評価を受ける傾向にあります。エンゲージメントを高めることで、より多くの優秀な人材を獲得することができるでしょう。

イノベーションの促進

エンゲージメントの高い従業員は、積極的に新しいアイデアを提案したり、既存の業務プロセスを改善したりするなど、イノベーションを促進する力となります。
イノベーションを起こすためには、従業員の創造性や革新性を引き出すことが重要です。エンゲージメントの高い従業員は、仕事に情熱を持って取り組むため、新しいアイデアや改善策を思いつきやすく、組織全体のイノベーションを促進する力となります。

顧客満足度の向上

エンゲージメントの高い従業員は、顧客に対して積極的に対応し、高いレベルのサービスを提供します。そのため、顧客満足度の向上につながります。
顧客満足度は、企業にとって最も重要な指標の一つです。エンゲージメントの高い従業員は、顧客に対して、より熱心で丁寧な対応をするため、顧客満足度を高めることに貢献します。

エンゲージメント向上施策の例

以下に、具体的な施策の例をいくつか紹介します。これらの施策を導入することで、従業員のエンゲージメントを効果的に向上させることができるでしょう。

エンゲージメント向上施策の例

出所:株式会社日本総合研究所資料

理念の浸透

従業員が企業理念やビジョンを理解し、共感することで、仕事へのモチベーションを高めることにつながります。
定期的に企業理念やビジョンを共有する機会を設け、従業員が理解を深められるようにしましょう。従業員が企業理念やビジョンに共感することで、自分の仕事が組織全体の目標達成に貢献しているという実感を得ることができ、仕事へのモチベーションの向上につながるでしょう。

多様な働き方の整備

従業員が安心して働ける環境を提供することは、エンゲージメントを高める上で非常に重要です。ワークライフバランスを重視した働き方や、従業員の健康管理、安全対策など、従業員が安心して働ける環境づくりに取り組みましょう。
働きやすい環境には、様々な要素が挙げられますが、特に重要なのは、従業員が自分の能力を最大限に発揮できる環境であることです。
そのためには、従業員に適切な教育・研修を提供し、能力開発を支援することや、従業員が仕事とプライベートを両立できるような、柔軟な働き方を取り入れることが必要となります。

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コミュニケーション活性化

上司と部下、同僚同士など、従業員間のコミュニケーションを促進することで、チームワークを向上させることができます。定期的な面談やチームビルディングイベントなどを実施し、コミュニケーションの活性化を促しましょう。
コミュニケーションが活発な職場では、従業員同士が互いに協力し、助け合い、目標達成に向けて一致団結することができます。そのため、コミュニケーションを促進することで、従業員は仕事にやりがいを感じ、高いモチベーションを維持することができるでしょう。

成長機会の提供

従業員に継続的な教育・研修を提供することで、スキルアップを支援し、仕事へのモチベーションを高めることができます。従業員のキャリアパスを明確にし、スキルアップのための研修機会を提供しましょう。
従業員がスキルアップやリスキリングをすることで、仕事に対する自信や達成感を得ることができ、より積極的に仕事に取り組むようになるでしょう。また、従業員のキャリアパスを明確にすることで、従業員は将来の目標を明確に意識し、仕事へのモチベーションを維持することができます。

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エンゲージメントサーベイで現状を把握することから始めよう

現状の従業員のエンゲージメント状況を正確に把握することは重要です。エンゲージメントサーベイやインタビューを実施し、従業員の仕事に対する意識や満足度を調査します。これにより、エンゲージメントの現状や課題を明確にすることができます。
これらの調査結果を基に、具体的な改善策を検討し、エンゲージメント向上に向けた施策を実行していくと良いでしょう。

エンゲージメントサーベイの導入をご検討の方は、こちらも合わせてご参照ください。

【エンゲージメントのドライバー(主因子)】

区分 No ドライバー 説明
ワークエンゲージメント
主体的に仕事に取り組んでいる心理状態
1 職務 職務内容にやりがいを感じられているか。裁量は与えられているか
2 自己成長 成長機会やフィードバックをきちんと得られているか
3 支援 上司・同僚から職務上や自己成長に関する支援が受けられているか
4 人間関係 上司・同僚とどれくらい良好な人間関係を築けているか
5 承認 自分の承認や評価に対して上司・同僚から承認されているか
6 健康 ストレスや仕事量
従業員エンゲージメント
組織に対する
自発的な貢献意欲
7 理念戦略 ビジョンや行動指針への共感や会社(経営陣)に対する信頼
8 組織風土 部署間での協力や挑戦する文化が根付いているか
9 環境 職場環境やワーク・ライフ・バランスなど

出所:SMBC Wevox株式会社/組織力向上プラットフォーム「SMBC Wevox」説明資料

「エンゲージメントの重要性は理解しているが、具体的な測定方法がわからない」「エンゲージメント調査を実施したものの、結果の分析や改善策の立案に苦慮している」といったお悩みを持つ企業のお客さまは、SMBCグループの「SMBC Wevox」をご活用ください。エンゲージメントの測定方法や分析手法、効果的な改善策について知りたい方は、こちらのページも合わせてご参照ください。

(※)本記事は株式会社Apolloに制作を一部委託しております。

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