お金をふやすキーワードは、「まめ」と「時間」

お金をふやす方法は、シンプルです。そして、普遍的なものです。良きお手本が江戸時代に書かれた井原西鶴の『日本永代蔵』にあります。時は元禄、大阪には全国から年貢米が集積し、米市場において取引されていました。この年貢米を陸揚げする際に、米刺しからこぼれた米をかき集めて、その日暮らしをしていた老女がいました。ある年に租税率が引き上げられ、陸揚げする年貢米が多くなり、老女は塵と一緒に掃き集めた米が、朝夕食べても残ることに気づきました。そして、落ちた米を貯め、ひそかに売りに出して換金すること20余年。へそくりのようなお金がいつの間にか大金となり、その老女の息子が、その金を元手に、金貸しから小判市の相場を動かすほどの金持ちになったという話です。
このエピソードには、お金をふやすための学びが2つあります。1つは、米のひと粒は小さなものですが、このひと粒を大切にまめに取り扱ったことでまとまったお米(お金)になったということ。2つ目は、1回の米の量は少なくても、年月とともに積み重なればやがて大量(大金)になるということです。現代に置きかえると、毎月、少しずつでも貯蓄をスタートすれば、年月をかけることで、まとまったお金になっていくということ。現役時代に使えるお金を少しずつ削ることで、老後資金がふえていくという考え方です。お金をふやすには「時間」を味方にすることがポイントです。

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老後資金をふやすには、早いうちから天引き貯蓄を

老後資金をふやすコツは、時間をかけて、まめにお金をふやしていくこと 。そのためには、現役時代の早い時期から天引き貯蓄をするのがおすすめです。生活に困らない生活費を確保する一方で、無理のない金額を収入と同時に貯蓄にまわしてしまうのです。ここでのポイントは、お金を貯めることに気を回しすぎて、生活の質そのものを低下させないこと。そうでないと、途中で辛くなって、天引き貯蓄そのものが長続きしなくなってしまいます。自分の生活にほどよい貯蓄額は、時間をかけて調整しながら設定していくと上手くいきます。
老後資金をふやすと聞くと、個人投資家になって、お金でお金をふやすようなイメージを持つ人もいるかもしれません。実際、老後に投資をやってみるという方はいらっしゃいます。ただし、ベースとなる資産はコツコツ貯めるしかありません。
天引き貯蓄には、勤め先の福利厚生として給与から天引きするものもあれば、自分が選んだ金融機関の口座から毎月引き落とされるようなタイプもあります。また、資金運用を併せ持つ積立型の投資信託や外貨預金もあります。どのような天引き貯蓄が自分に合っているのかを見つけ出していくのも、楽しい作業ではないでしょうか。

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天引き貯蓄として、税制優遇のあるiDeCoなどの活用も

宝くじにでも当たらない限り、お金が急にふえるということはありません。当たり前ですが、天引き貯蓄では、毎月決まった額だけがふえていきます。まとまったお金になるには、やはり時間が必要なのです。ただし、単に決まった金額だけをふやしていくだけでなく、同時に資産運用を行っていくこともできます。個人で利益をあげるような投資を行うのはハードルが高いと思う方は、専門家に任せるのが良いでしょう。つまり、投資信託を利用するということです。税制上の優遇があるiDeCo(個人型確定拠出年金)やつみたてNISA(少額投資非課税制度)は、金融商品によっては「複利」の働きを味方にできる有効な方法となります。ぜひ一度、検討してみてはいかがでしょうか。

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  • この記事は2019年2月25日に公開した内容を、2022年10月19日に変更して掲載しています。今後、変更されることもありますのでご留意ください。
いど みえ

井戸 美枝(いど みえ)

CFP®、社会保険労務士。社会保障審議会企業年金・個人年金部会委員。経済エッセイストとして活動。「難しいことでもわかりやすく」をモットーに、数々の雑誌や新聞の連載記事の執筆をはじめ、講演、テレビ、ラジオ出演などを通じ、生活に身近な経済問題、年金・社会保障問題を紹介。近著に『定年男子 定年女子』共著(日経BP社)、『100歳までお金に苦労しない定年夫婦になる』(集英社)、『届け出だけでもらえるお金』(プレジデント社)など。

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