株式会社ベネッセホールディングス

  • 代表者
  • 小林 仁
  • 設立
  • 1955年1月28日
  • 所在地
  • 本社:〒700-0807 岡山県岡山市北区南方3-7-17
  • 従業員数
  • 連結 16,637人(2023年3月31日時点)
  • 事業内容
  • 教育事業・介護事業

ベネッセグループは、教育や介護・保育、生活の領域で幅広いサービスを提供しています。
企業哲学「Benesse = よく生きる」のもと、経営の軸となるグループパーパスを定め、「人」に関わる社会課題の解決を目指します。

現場社員一人ひとりに根付く
高い環境意識

ベネッセグループの取組を評価いただき、このような賞を頂けたことはうれしく存じます。
私たちが脱炭素経営への取組を始めたのは、2004年。早いタイミングから目を向けてきた理由は、私たちの事業にあります。主力事業である教育は、紙資源を多く使用するため、現在は紙以外の方法も模索し、可能な部分は切り替えています。たとえば、タブレット教材等ですね。もちろん、提供する価値は下げない前提で、いかに両立を図っていくかを考えています。
また、もうひとつ、教育に携わっているという社会的責任にも由来しています。社員一人ひとりに環境意識が深く根付いているのです。
そのため、脱炭素への動きも、ある意味、現場から突き動かされてきたとも言えるかもしれません。たとえば、環境のオンライン研修をグループ会社の1社にトライアルで実施した際に「うちの会社でもしてほしい」という声が次々と寄せられました。もちろん、すぐにグループ全体での実施を決めました。
現場の熱量を受けて早くから取り組んできた甲斐があり、2017年にはイギリスの環境団体であるCDP(カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)からA-評価を獲得。その後も毎年A※、A-という評価を頂いています。
※Aが最高評価。A、A-はリーダーシップレベル
そのような土壌もあり、私たちは2040年度までにScope1・2※の排出量100%削減という大きな目標を掲げています。
※Scope1:自社が直接的に排出した温室効果ガスの量、Scope2:他社から供給された電気等の使用によって排出された温室効果ガスの量

グループ会社が簡単に、
そしてカスタマイズして使える

ところが、目標達成にはある課題が懸念されました。教育や介護・保育という、事業体の幅広さです。
主要子会社ベネッセコーポレーションが導入していた排出量算定ツールは、ID制限が厳しく、到底介護や塾の拠点はカバーできない。そのため、他会社はExcelを使用。グループ会社の担当者が拠点のデータを1次集約し、さらに本社がそのデータをグループ全体として集約、そして排出量に置き換えていく。すべて手作業で、3カ月はかかっていました。先ほどのCDPへの報告書は、非常にタイトなスケジュールで作られていました。
そのような悩みを抱えていた際に出会ったのが、Sustanaです。
初めて触ったとき、そのわかりやすく簡単な操作性に「こんなに便利なクラウドサービスがあるんだ」と驚きました。介護施設だけでも350以上ありますから全担当者が使えることを念頭に置く必要がある。そこは心配ないと感じました。また一方で、カスタマイズ性も魅力的でした。たとえば、データ取り込み方法にはCSVやPDF等を選択できる。グループ会社ごとに多少手順も異なるので、その点も高評価でした。
また、導入の際に説明会や動画コンテンツを用意してくださる等、手厚いサポートも良かったですね。私たちもグループ会社とコミュニケーションを重ね、導入を進めました。環境意識が定着していたこともあり、加えて業務も軽減できそうということで混乱なく受け入れてもらえたと思います。
今後はグループ会社ごとに環境行動宣言を策定する予定です。作業が軽減された分、意識共有のベースづくりや自主的な削減管理に時間が使えるようになりました。Sustanaをきっかけによい方向へ進んでいます。

サプライヤーとも
意識をひとつに

じつは、いま介護事業におけるScope3※の実態把握に取り組んでいます。日々、懸命に現場でお客さまと向き合っているスタッフになるべく負担をかけず、どう向き合っていくべきか。期待がかかるこの分野で、Scope3を見える化することは社会的にも意味があると感じています。
しかしながら、サプライチェーンが多岐にわたるため、一筋縄ではいかないでしょうね…。Sustanaの力を借りつつ、将来的には完全内製の算定も見据えながら取り組んでいきます。
※Scope3:Scope1、2以外のサプライチェーンから排出された温室効果ガスの量
教育事業においては、2014年にScope3の実態把握が済んでいます。用紙や配送、そして教具と、多種多様なサプライヤーから成り立っている事業なので、たいへんな作業ではありました。しかしながら、見える化がパワーとなり、いまや削減施策の導入が次々と進んでいます。具体的には、DMは本当に必要な対象を厳しく選定してから送付する、配送トラックは極力隙間なく積載する、そのための梱包材も開発しました。
そして、そのような創意工夫は私たちだけが行っているわけではありません。サプライヤーの皆さまも取り組んでくださっているのです。たとえば、子ども向け教具のメーカーさま。「ここの角を工夫して、2mm廃材が少なくなるようにしましたよ」と部品を改良してくださいました。もちろん教具としての安全性は確保した上で。この1社だけでなく、さまざまなお取引先さまが、本当に少人数で運営されている企業もあるのですが、私たちと一体となって挑んでくださっている。長年、教育事業をともに支えてきた皆さまに助けられながら、脱炭素に向けて進んでいます。

教育をサポートする企業として
できることは

脱炭素を実践していくとともに、主要事業の教育という面からも活動しています。コロナ禍で一旦中断したものの、大学や環境活動団体と一緒に子ども向けワークショップ等を開催。また、教材でも、楽しく環境を学べるコンテンツも発信しています。もともと一人ひとりの意識は高かったですが、昨今の気候変動を肌で感じるようになり、さらに熱が高まっています。ここ数年、現場から新たな提案も頻繁にあるんですよ。
長い時間かけて取り組む社会課題については、現在地がどのようなものか見える化していくこと、そしてそれにより気持ちが揃っていくことが大切だと考えています。その上に、新たな活動が生まれてくるはずです。
世界中のすべての企業が、いま、この問題に直面しています。だからこそ、もっと知見や情報を共有していけたらよいですね。特にScope3は、深度があり、そして企業グループだと横にも広がっていきます。複雑な事柄が絡み合っていることもあり、すぐに解決の方法は見つからないかもしれません。だからこそ、お互いが学び合いながら、社会全体で推進していけることを願っています。

審査員コメント

審査委員画像
  • 梨 雅之
  • 三井住友フィナンシャルグループ
  • 執行役員 グループチーフ・サステナビリティ・オフィサー

ベネッセホールディングスさまは、Sustanaに登録いただいているグループ企業数は、全ユーザー中トップ。登録施設数においても上位となりました。グループ会社それぞれが脱炭素経営に向けて積極的に取り組む様子もうかがえ、子会社を持つ企業には参考となる事例ではないでしょうか。Sustana導入は、異なる事業部の担当者全員が使えることを念頭に丁寧に、社内コミュニケーションを重ねて決められた点も印象的でした。また、サプライチェーン全体を巻き込んでの取組には学ぶことも多く、ぜひ社会に発信していっていただきたいと考えまして、「Connect External賞」に選定させていただきました。

審査委員画像
  • 山田 幸美
  • 株式会社日本総合研究所
  • リサーチ・コンサルティング部門 環境・エネルギー・資源戦略グループ マネジャー

多様な事業形態の子会社をお持ちのベネッセホールディングスさまは、グループ全体のCO2排出量可視化と削減活動の推進を目的に、Sustanaを導入されました。事業形態に応じたエネルギー使用量の入力、CO2排出量のモニタリングが可能となり、個社のエネルギー使用の管理や削減活動、目標設定・管理の体制が強化されたほか、ホールディングスとしてグループ全体での環境活動の推進も加速されました。今後、サプライヤーとも連携しサプライチェーン全体のCO2可視化を行う予定であり、「Connect External賞」にふさわしいお取組であると考え、選定させていただきました。

審査委員画像
  • 茂木 龍哉
  • 株式会社日本能率協会コンサルティング
  • SX事業本部 本部長 シニア・コンサルタント

ホールディングス会社としてのCO2排出量算定の課題は、グループ内の異なる事業部門や子会社の活動を統一的に評価する難しさ、各事業部門や子会社のデータ収集の協力体制の確保等が挙げられます。そのような環境の中でベネッセホールディングスさまの取組は、登録グループ企業数や登録施設数の多さからも分かるように、事業特性の違いも考慮しつつ、共通的に見える化可能な項目を明確にし、おすすめ内容の提示等ガイドラインに基づく展開を上手に行われています。
今後の課題としては、グループ各社やサプライヤーに対して、効率的に情報収集、運用ができるSustanaを含めた仕組みづくりが挙げられます。サプライチェーン全体の取組の先行事例となる活動を期待しています。