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総務
公開日:2022.12.28
雇用契約書とは?労働条件通知書との違いや記載事項、作成時のポイントなどを解説
従業員と雇用契約を締結する際に、準備する書類として「雇用契約書」があります。雇用契約は、口頭の合意でも成立しますので、雇用契約書を締結する義務はありません。しかし、後から雇用契約の成立(従業員と会社との間の合意の存在)を証明するものがなく企業と従業員でトラブルになる場合も考えられますし、使用者は、法令上、雇用契約の締結に際して書面等を交付することで従業員に対し、一定の労働条件を明示する義務を負います。そのため、従業員の労働条件を記載した雇用契約書を作成し、締結することが望ましいと考えられます。そこで、この記事では、雇用契約書と労働条件通知書との違い、雇用契約書に記載する内容、作成する上でのポイントについて解説していきます。
雇用契約の成立と雇用契約書の要否
雇用契約書とは、民法第623条に基づいて、企業と従業員の間で合意した雇用契約の成立を証明する書類です。民法上は、当事者間の合意のみで雇用契約が成立するため、雇用契約書の締結は法律上義務付けられていません。
労働条件の明示義務
もっとも、雇用契約には、民法のみならず、労働契約法や労働基準法といった労働関連法令が適用されます。そして、使用者は、労働基準法第15条に基づき、賃金や労働時間その他の労働条件を明示しなければなりません。仮にこの労働条件明示義務に違反した場合、使用者は、労働基準監督署から指導や是正勧告を受け、最悪の場合には使用者やその代表者等に対し、30万円以下の罰金等の罰則が課されることにもなりかねませんので、適切に対応する必要があります。
労働基準法上、従業員に対して明示することが求められている労働条件には、必ず明示しなければならない事項(絶対的明示事項)と制度として定める場合には明示しなければならない事項(相対的明示事項)があります。
絶対的記載事項
どのような場合でも必ず記載しないといけない「絶対的記載事項」は、以下のとおりです。
- ・雇用契約の期間、期間の定めのある雇用契約の場合は、更新する場合の基準
- ・業務の場所・内容
- ・業務の始業時刻と終業時刻、昼夜二交代制等、従業員を2組以上に分けて就業させる場合における就業時転換に関する事項
- ・所定労働時間を超える労働の有無
- ・休憩時間
- ・休日、休暇
- ・賃金の決定、賃金の計算、賃金の支払方法、賃金の締切日、賃金の支払日、昇給に関する事項
- ・退職や解雇に関する規定
このほか、パートタイマーやアルバイト等の短時間労働者や有期雇用労働者に対しては、これらに加え、以下の事項も明示しなければなりません。
- ・昇給、退職手当、賞与の有無
- ・雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口
相対的記載事項
該当する制度を設けているのであれば明示しなければならない「相対的記載事項」は、以下のとおりです。
- ・退職手当の定めが適用される従業員の範囲、退職手当の決定・計算・支払の方法、退職手当の支払時期
- ・臨時に支払われる賃金、賞与に関する事項、最低賃金額
- ・従業員に負担させる食費、作業用品等に関する事項
- ・安全衛生に関する事項
- ・職業訓練に関する事項
- ・災害補償・業務外の傷病扶助に関する事項
- ・表彰や制裁に関する事項
- ・休職に関する事項
労働条件通知書と雇用契約書の違いとは?
これまで述べてきたように、使用者は従業員を雇用するに際して、多数の労働条件を従業員に対して明示しなければなりません。このような労働条件の明示のために、労働条件通知書が作成され、従業員に交付されることがあります。
もっとも、明示することが求められている労働条件を網羅的に記載した雇用契約書2通を締結し、そのうち1通を交付することによっても、労働条件明示義務を履行することは可能であり、「労働条件通知書」という書面を雇用契約書とは別に作成することは必ずしも義務付けられているわけではありません。
そのため、労働条件明示義務との関係では、次のような選択肢のいずれかの方法を採ることが考えられるのです。
① 明示することが求められている労働条件を網羅的に記載した雇用契約書のみを作成して締結する方法
② 明示することが求められている労働条件を網羅的に記載した労働条件通知書のみを作成し、雇入れ時に従業員に交付する方法
③ 雇用契約書を締結するとともに、労働条件通知書も交付し、それぞれの書面単独で、又はこれら2つの書面の記載を併せることで、明示することが求められている労働条件を全て明示する方法
それでは、雇用契約書と労働条件通知書では、どのような点に違いがあるのでしょうか。
企業者側と従業員側両方の署名押印(又は記名捺印)が必要かどうか
雇用契約書は、契約書の一種ですので、使用者と従業員の両方の署名押印(又は記名捺印)が必要です。
その一方、労働条件通知書は、使用者が作成して従業員へ一方的に交付することが予定されている書面ですので、使用者の署名や押印があるとしても、従業員側は署名押印(又は記名捺印)しません。
このように、雇用契約書と労働条件通知書とは、従業員による署名押印の有無という点が異なります。そのため、労働条件通知書を交付することだけで労働条件明示義務を履行する方法(上記②)は、時間的にも事務手続にも簡便な部分があることは否定できません。
もっとも、労働条件通知書は、使用者と従業員との間の合意(雇用契約の成立)を証明する書面ではありませんので、後日、契約内容や労働条件に関する認識の有無、労働条件の明示の有無等を巡ってトラブルが発生する可能性は否定できません。
そのため、少なくとも雇用契約書を締結することは望ましいといえるでしょう。
ただし、雇用契約書のみを締結する場合には(上記①)、雇用契約書に明示しなければならない事項を全て記載する必要があり、契約書が大部になることも考えられます。そのため、雇用契約書はシンプルな内容が良いと考える場合には、シンプルな雇用契約書を締結することに加え、法令上求められる事項を網羅的に記載した労働条件通知書を交付することを検討することが望ましいといえます(上記③)。
なお、労働条件通知書の具体的な内容は、厚生労働省のホームページに掲載されているフォーマットが参考になるでしょう。(主要様式ダウンロードコーナー|厚生労働省(mhlw.go.jp))
雇用契約書作成のポイント
雇用契約書を作成するときには以下のポイントに注意しましょう。
必要な記載事項の抜け漏れがないことを確認する
雇用契約書の締結のみをもって、法律上明示することが求められている労働条件を網羅しようとする場合には、絶対的記載事項を必ず記載しないといけませんし、該当する制度などを設けているのであれば、相対的記載事項も記載が必須となります。
従業員の雇用形態に合わせて作成する
従業員が正社員なのか、契約社員なのか、パート・アルバイトなのかといった雇用形態によって、労働時間や賃金形態が異なる人事制度を設けている使用者も少なくないはずです。そのため、雇用契約書も、それぞれの雇用形態に適用される人事制度に沿って作成する必要があります。
・正社員の場合
正社員は期間を定めない無期雇用契約社員を指す場合が多いといえます。多くの会社ではこの雇用形態の従業員が最も多いと思われますので、まずは正社員向けの雇用契約書を作成し、これを基に他の雇用形態の雇用契約書を作成するのがよいでしょう。なお、正社員の場合には、転勤等の人事異動を命じている会社も多いと思われます。法律上必須ではありませんが、後日のトラブル回避のためにも、転勤の可能性の有無等についても記載するのが望ましいと考えられます。
・契約社員の場合
契約社員は期間を定めて雇用される有期雇用社員を指す場合が多いといえます。契約社員の場合、「契約期間の更新の有無」や「更新の基準」、「昇給・退職手当・賞与」の有無、「雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口」を明示することが必要です。
・パート・アルバイトの場合
パート・アルバイトは正社員より短い時間で働く短時間労働者かつ有期雇用労働者を指す場合が多いといえます。この場合も、契約社員と同様に、「契約期間の更新の有無」や「更新の基準」、「昇給・退職手当・賞与」の有無、「雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口」を明示することが必要です。
内容が労働基準法に違反していないかを確認する
雇用契約書の内容が労働基準法に定める水準を上回っていれば法的効力が発生しますが、
これを下回っている場合、その内容は無効となり、労働基準法等で定める水準の労働条件が従業員との間の契約内容になります。そのため、雇用契約書を作成する場合、記載内容が労働基準法に違反をしていないかを確認する必要があります。
雇用契約書と労働条件通知書の電子化
従来、労働条件の明示は書面を従業員に交付する方法に拠って行われる必要がありました。もっとも、2019年4月1日の労働基準法改正により、電子的方法での交付も可能となりました。なお、雇用契約書の締結方法については特に法律上の制限はありませんので、いわゆる電子契約の方法によって締結することが可能です。
ただし、改正法に基づく電子的方法での労働条件の明示は、本人の希望に応じて行うことができるものであり、本人が書面の交付を希望した場合には、書面での雇用契約の締結や労働条件通知書の交付を行う必要がある点に留意が必要です。
雇用契約書や労働条件通知書の電子化メリット
ここでは、雇用契約書や労働条件通知書を電子化するメリットを2つ紹介します。
印刷や郵送コストの削減
雇用契約書や労働条件通知書を書面で印刷し郵送した場合、用紙代、インク代、封筒代、郵送にかかる手数料などのコストがかかりますが、電子化すれば、それらのコストを削減することができます。また書面の場合、管理するのが大変ですが、電子化すれば管理が容易になります。
スピーディーな契約締結
雇用契約書や労働条件通知書を電子化することで、雇用契約書の締結や労働条件通知書の交付をオンライン上で進められるため、スピーディーな契約締結や交付手続の実現が期待できます。また、電子化すると書面の作成や送付などの準備の時間がなくなるので、業務効率化にもつながります。
雇用契約書の電子化で、より効率的に契約の締結や管理をしよう
雇用契約書は記載すべき事項や作成時のポイントが多く存在します。雇用者と従業員の間で締結する重要な契約のため、適切な内容にすることが重要です。また、企業が締結する雇用契約書の数は膨大になることが考えられます。雇用契約書を電子化すれば、業務効率化やコスト削減にもつながります。今後、デジタル化の潮流を受け、契約書を電子化する流れは加速していくでしょう。
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(※)2022年12月28日時点の情報のため、最新の情報ではない可能性があります。
(※)法務・税務・労務に関するご相談は、弁護士や税理士など専門家の方にご相談いただきますようお願い申し上げます。