1. 法定相続情報一覧図とは?
法定相続情報一覧図とは、お亡くなりになった被相続人の戸籍関係から判明した法定相続人を、法務局(登記所)の登記官が認証し、被相続人の親族関係を家系図形式で1枚の紙に公的に証明する書類です。
法定相続情報一覧図は、2017年5月19日より開始された「法定相続情報証明制度」に基づき発行されます。これまでは、複数の金融機関等で相続手続を行う際、それぞれの窓口に大量の戸籍謄本の束を提出する必要がありました。本制度を利用すれば、戸籍謄本の束の代わりに、法務局が発行した「法定相続情報一覧図の写し」を提出することで手続を進められます。
1.1. 法定相続情報一覧図を利用するメリット
本制度を利用する大きなメリットは、複数の金融機関での預貯金口座の解約や払い戻し、不動産の相続登記、税務署への相続税申告等、同時に並行して進める必要がある手続において、法定相続情報一覧図があればそれを1組の戸籍謄本一式としてすべての提出先へ同時に手続を進められる点です。
通常、原本還付を受けて順番に手続を行うと数週間から数ヵ月以上の時間がかかりますが、法務局から認証入りの一覧図の写しを必要部数だけ無料で取得すれば、各窓口に同時に提出できます。また、手続にかかる時間と労力の負担軽減につながるほか、戸籍謄本を提出先ごとに何通も新規取得する必要がなくなるため、発行手数料等の費用を節約することも可能です。
1.2. 法定相続情報一覧図が不要なケース
法定相続情報一覧図は、すべてのケースで作成が必要なわけではありません。
たとえば、相続手続を行う銀行口座や不動産等の提出先が1箇所、もしくは極めて少ない場合、わざわざ法務局へ必要書類を整えて一覧図の申出をする手間の方が、かえって大きくなることがあります。
また、金融機関や各手続先によっては、一覧図の提出ではなくとも、通常の戸籍謄本の原本還付による手続でも対応してもらえるケースもあります。そのため、相続手続の対象となる資産の数や手続を行う金融機関の数を確認した上で、ご自身にとって一覧図を作成する手間とメリットを比べてから準備を進めることが大切です。
2. 法定相続情報一覧図を活用できる相続手続
法定相続情報一覧図の写しは、現在、多くの公的機関や金融機関での相続手続で幅広く活用できます。
具体的には、各銀行・信用金庫等の預貯金の解約・払い戻しや名義変更、法務局での土地・建物の相続登記、税務署への相続税申告が挙げられます。
さらに、厚生年金や国民年金等の遺族年金の請求手続(年金事務所)、自動車の所有権移転手続、一部の保険金請求手続等においても、戸籍謄本の束に代えて提出することが可能です。制度開始以降、利用できる機関は順次拡大されており、相続の実務において相続手続で活用される機会の多い証明書類です。特に、複数の銀行口座や不動産、証券口座等がある場合には、それぞれの手続を並行して進めやすくなる点が大きなメリットです。
3. 法定相続情報一覧図を作成し、法務局から交付を受けるまでの流れ
法定相続情報一覧図を作成し、法務局から交付を受けるまでには、主に以下の3つの手順に沿って手続を進めます。
【法定相続情報一覧図の交付を受けるまでの流れ(フローチャート)】
3.1. 戸籍謄本等の必要書類を集める
一覧図の申出には、以下が必須となります。
- 被相続人の出生から死亡までの連続した戸除籍謄本
- 被相続人の住民票の除票
- 相続人全員の戸籍謄抄本
- 申出人の本人確認書類(マイナンバーカード等)
また、一覧図に相続人の住所を記載する場合は、追加書類として「各相続人の住民票の写し」が必要になります。 なお、窓口での戸籍収集に「広域交付制度」を利用する場合、請求できるのは配偶者や直系親族自身のみであり、委任状による代理請求や兄弟姉妹等の傍系相続の戸籍取得は制度対象外となる点に注意が必要です。特に被相続人の出生から死亡までの戸除籍謄本の収集は、転籍が多い場合や本籍地が複数ある場合に時間を要することがあります。
時間がない、どうしたらいいかわからない等、自力での収集に負担を感じる場合には、専門家への相談または銀行等の相続手続代行サービスも検討しましょう。
3.2. 様式・記載例を参考に一覧図と申出書を作成する
書類が揃ったら、法務局のホームページからご自身の相続関係に合った「様式」と「申出書」をダウンロードします。
様式には「配偶者と子(実子・養子)」「配偶者と親」「配偶者と兄弟姉妹」等、状況に応じたひな形(エクセル等)が用意されています。
これらに、お亡くなりになった被相続人の最後の本籍、最後の住所、生年月日、死亡日、および相続人の氏名、住所、生年月日、被相続人との続柄等を、記載例の通りに正確に入力または手書きで記載します。
申出書には、申出人の氏名、住所、連絡先、および一覧図の必要部数等を記入します。記載漏れや戸籍謄本の記載と不一致がある場合、法務局から訂正を求められるため、戸籍をよく確認の上、正確に記載することが重要です。
3.3. 管轄の法務局へ申出て、認証済みの写しを受け取る
作成した申出書、法定相続情報一覧図、および収集した戸籍謄本等の必要書類一式を、管轄の法務局(登記所)の窓口へ直接持参するか、簡易書留郵便等で郵送して申し出ます。申出ができる法務局は、以下のいずれかを管轄する法務局に限定されます。
- 被相続人の本籍地
- 被相続人の最後の住所地
- 申出人の住所地
- 被相続人名義の不動産の所在地
書類に不備がなければ、概ね1週間から10日程度で法務局での審査が完了し、登記官の認証印が押された「法定相続情報一覧図の写し」が必要部数だけ無料で交付されますが、時期や内容によって異なりますので余裕をもって申出してください。同時に、提出していた戸籍謄本等の原本一式もすべて返却(原本還付)されます。
4. 申出の費用・再交付・有効期限
法務局への最初の申出時における「認証済みの写し」の発行手数料は、何枚であってもすべて「無料」です。
さらに、後から提出先が増えて一覧図が足りなくなった場合でも、当初の申出を行った法務局に対して「再交付の申出」を行うことで、保管期間であれば、追加交付を受けることができます。再交付が可能な期間は、最初の申出日の翌年から起算して5年間です。再交付を申し出ることができるのは、原則として当初の申出人に限られます。
また、一覧図自体に公的な有効期限は設けられていません。ただし、提出先となる金融機関等においては、口座の解約や払い戻し手続の安全性を担保するため、独自に「発行日から3ヵ月以内(または6ヵ月以内)」等の有効期限を求めている場合が多いため、手続するタイミングに合わせて確認しておくことが重要です。
5. 法定相続情報一覧図を作成・利用するときの注意点
本制度は金融機関等への提出時に戸籍の束を省略できる仕組みですが、法務局へ提出する最初の戸籍収集の手間は省けません。戸籍に基づき正確に作成する必要があり、特に代襲相続が発生しているケースや、相続人に外国籍・国外居住者がいる場合等は、必要書類や一覧図の記載方法の判断が難しくなります。
また、一覧図だけですべての相続手続が完了するわけではなく、手続先に応じて遺産分割協議書や印鑑証明書等を別途求められます。なお、相続放棄をした人がいる場合も放棄の事実は記載されないため、本来の法定相続人全員を記載した上で、相続放棄申述受理通知書等とセットで提出することが実務上多くなっています。
6. 負担の大きい相続手続を効率化する方法:三井住友銀行でできること
法定相続情報一覧図は便利な制度ですが、取得の前提となる戸籍収集や必要書類の確認には一定の手間がかかります。 戸籍収集や複数の提出先への手続に不安のある方やまとめて任せたい方には、三井住友銀行の「相続手続らくらくサービス」がおすすめです。
WEBや郵送手続を中心に、戸籍謄本等の収集代行や一覧図の作成、預貯金の解約・払い戻し等の手続をお手伝いします。なお、相続人の人数や財産状況に応じ、対面でサポートする「遺産整理業務」もご用意しておりますのでぜひご相談ください。
【関連リンク】
まとめ:相続手続を効率的に進める方法を知り、自分に合った方法を選ぼう
法定相続情報一覧図は、戸籍収集の二度手間を防ぎ、複数の手続を同時に進めるための便利な公的書類です。
ご自身で手続を進めるのが難しい場合は、三井住友銀行の「相続手続らくらくサービス」や「遺産整理業務」等の専門サービスを活用し、スムーズに相続手続を進めましょう。
- ※本記事の内容は2026年9月時点のものであり、将来予告なく変更されることがあります。
- ※本記事は当行が信頼性が高いと判断した情報等に基づき作成していますが、その正確性・完全性を保証するものではありません。
- ※本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品を推奨・勧誘するものではありません。
- ※本記事の内容は、情報の提供を目的として一般的な法律・税務上の取り扱いを記載しております。そのため、諸条件により本資料の内容とは異なる取扱がなされる場合がありますのでご留意ください。
- ※個別の税務判断、税額試算や対策の立案・実行は税理士・弁護士の方々と十分ご相談の上、ご自身の責任においてご判断くださいますようお願い申し上げます。
小田根大輔(税理士)
東京税理士会神田支部所属。中小から大手の税理士法人にて約15年勤務したのち、税理士事務所開業。創業からリタイアのときまで、中小企業の経営者を力強く支え、ともに成長しながら、地域社会への貢献に取り組んでいる。税務に関する記事監修等も多数手がける。