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公開日:2022.05.30

更新日:2023.04.07

バリューチェーンとは?概要や分析方法、メリット、事例などを解説

バリューチェーンとは?概要や分析方法、メリット、事例などを解説

自社の戦略の有効性について考える際、役立つのが「バリューチェーン」と呼ばれるフレームワークです。バリューチェーンを使って分析すると、自社の強み・弱みを俯瞰的に捉え、成長につながる発想を得ることができます。
ここでは、バリューチェーンの概要や分析方法、メリット、事例などについて解説します。

バリューチェーンは、企業活動が製品の価値にどんな影響を与えているかを示すフレームワーク

物があふれる時代、消費者のニーズは多様化・多面化しています。飽和状態の市場で消費者に選ばれるには、自社のビジネスを客観的に分析し、競合に対する優位性を見つけ出すことによって自社製品の付加価値を高めていかなくてはなりません。
そこで役立つのが、ハーバード大学ビジネススクールのマイケル・ポーター教授が著書『競争優位の戦略』の中で提唱した「バリューチェーン」と呼ばれるフレームワークです。

バリューチェーンでは、製品が顧客の手に渡るまでに経由する、下記のようなプロセスごとに「価値」を見いだし、すべてのプロセスを経由することによって価値が連鎖すると捉えています。

<製品が顧客の手に渡るまでに経由するプロセス>

  • 1. 原材料や部品の調達
  • 2. 製造、加工
  • 3. 出荷配送
  • 4. マーケティング
  • 5. 販売
  • 6. アフターサービス

プロセスごとの価値と、それがどのように連鎖しているのかに着目することによって、最終的な付加価値に対するさまざまな企業活動の貢献度を図ることができます。
貢献度にもとづいて事業活動を見直すと、自社の強みとなるものやボトルネックとなっているものが可視化され、収益拡大や新たなビジネスモデル創出に役立てることができるでしょう。

バリューチェーンとサプライチェーンの違い

バリューチェーンと混同しやすい言葉に、「サプライチェーン」があります。どちらも商品や製品が顧客の手に渡るまでのプロセスに関わる用語です。しかし、バリューチェーンが単一企業の事業プロセスの連鎖とそこで付加される価値に注目しているのに対して、サプライチェーンは複数の企業により供給されたモノの流れに注目している点に違いがあります。
サプライチェーンを可視化して業界全体で情報を共有し、全体の最適化・効率化を図る経営手法を「サプライチェーンマネジメント」といいます。

バリューチェーン分析が役立つ3つの戦略

バリューチェーンの提唱者であるマイケル・ポーター氏は、飽和する市場でポジションをとるための競争戦略として、下記の3つを挙げています。これにバリューチェーン分析を掛け合わせることによって、さらに高い効果を生み出すことができるでしょう。

集中戦略

集中戦略は、顧客層、属性、販売エリアなど、特定のセグメントをターゲットに企業の経営資源を集中させることによって優位性を確保する戦略です。ただし、ターゲットとする市場が縮小した場合、事業そのものが立ちゆかなくなる可能性があります。流行に左右される可能性があるなど、不確定要素が多い分野では注意が必要な戦略だといえるでしょう。
集中戦略におけるバリューチェーン分析は、自社の得意分野や領域を導き出すのに役立ちます。

コスト・リーダーシップ戦略

コスト・リーダーシップ戦略は、1つの製品にかかるコストを競合他社よりも安価に抑えることによって、コスト面で優位性を高める戦略です。
低コストを実現するには、業務内容や作業のプロセスを見直し、ボトルネックを取り除いて作業を効率化する必要があります。ここで、バリューチェーン分析を用いることによって、各プロセスを客観的に見直すことができるでしょう。

差別化戦略

差別化戦略は、製品の機能面、デザイン性、サポート面など、さまざまな部分で独自性を打ち出し、他社とは異なる立ち位置を確立する戦略です。
業務プロセスごとの独自の価値を見いだすバリューチェーン分析は、差別化戦略に最もマッチする手法です。

バリューチェーン分析の方法

実際にバリューチェーン分析を行う際には、どのような手順を踏めば良いのでしょうか。バリューチェーン分析を行う場合の進め方について見ていきましょう。

1. 自社のバリューチェーンを可視化する

可視化した自社のバリューチェーン(一般的な製造業の場合) イメージ

まずは、バリューチェーン分析の対象となる事業に紐づく活動を、機能ごとに分類して可視化します。
バリューチェーンは、「主活動」と「支援活動」で構成されます。ここでは例として、製造業の活動を主活動と支援活動に分けてみましょう。

<製造業の主活動の例>

  • ・購買物流
  • ・製造
  • ・出荷物流
  • ・販売・マーケティング
  • ・サービス

<製造業の支援活動の例>

  • ・財務
  • ・会計
  • ・人事
  • ・技術開発
  • ・調達活動

自社の活動を主活動・支援活動に分けたら、主活動に分類されたレイヤーを実際のプロセス順に左から右へと並べ、支援活動に分類されたレイヤーを左右に並べられた主活動レイヤーの上に横長の形で重ねるように設置することで対象事業のバリューチェーンを図式化することができます。

2. コストを分析する

自社のバリューチェーンが可視化できたら、次は主活動、支援活動に分けた各種企業活動におけるコストを洗い出します。コストを洗い出すことで、収益性などをよりはっきりと認識することができ、無駄な部分が浮き彫りになってきます。

3. 自社の強み・弱みの分析

企業活動ごとに、強みと弱みを分析します。視点に偏りが出ないよう、多くの関係者の参加を募り、多面的に分析することが大切です。

4. VRIO分析の実施

VRIO(ブリオ)分析は、評価対象となる経営資源の持つ強みを評価する手法のことです。「Value(価値)」「Rareness(希少性)」「Imitability(模倣可能性)」「Organization(組織)」の4つの視点で対象を評価することで、すぐに解決すべき点や注力して優位性を高めるべきポイントが把握でき、資源を適切に投入することができます。

バリューチェーン分析のメリット

バリューチェーン分析をすることによって、企業にはどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、代表的な3つのメリットについてご説明します。

バリューチェーン分析のメリット

競合他社の戦略を予測し、先手が打てる

バリューチェーン分析は、自社に対してのみ行うものではありません。競合他社をバリューチェーン分析の分析対象とすることによって、他社の強みや弱み、優位性などを把握でき、今後の戦略を予想することができます。
その結果をもとに自社の戦略を練ることで、戦略の効力をより高めることができるでしょう。

経営資源を適切に配分し、コストを削減できる

バリューチェーン分析を行うと、製品に最終的な付加価値がつくまでの各企業活動の貢献度と、それに対するコストの割合が明確になります。その結果、貢献度が低いプロセスに多くの経営資源が投下されていたり、貢献度の高いプロセスの経営資源が足りなかったりといった不均衡が起きているなら、早急に見直す必要があるでしょう。
人事戦略や経営戦略と併せて改善を図ることで、経営資源の適切な配分とコスト削減が実現できます。

製品の最終付加価値を高め、利益を最大化することができる

バリューチェーン分析を行うことで、コストの配分状況がわかり、利益向上につながる着眼点が得られることは前述した通りです。さらに、自社の優位性を見極めた上で経営資源の配分や戦略の適正化を実践すれば、製品の最終的な付加価値を高めることができるでしょう。
付加価値が高い製品は、飽和市場においても存在感を発揮し、消費者の心をつかみます。このことから、無駄なコストを削減し、製品の付加価値を高めることは、利益の最大化につながるといえます。

バリューチェーンを活用した企業の成功事例

バリューチェーン分析を行うと、企業はさまざまなメリットを得ることができます。ここでは、バリューチェーンを活用して自社独自の価値を生むプロセスを見つけ出し、差別化戦略に結び付けた成功事例を3つご紹介します。

CtoCマーケットプレイスを展開するA社:受発注業務をユーザーに託してコスト削減

CtoCマーケットプレイスは、ユーザーである消費者同士が物やサービスを売り買いするための「場」をオンラインで提供するサービスです。
A社が提供するフリーマーケットアプリはこの領域の先駆けであり、代表的なプラットフォームとして活用されています。A社のバリューチェーンは下記のとおりです。

<A社のバリューチェーン>

  • 1. プラットフォーム構築
  • 2. 受発注機能の運営
  • 3. 商品配送
  • 4. 支払売上管理
  • 5. アフターサービス

A社のバリューチェーンは、一般的には企業側が行う「受発注機能の運営」をユーザーに任せている点に特徴があります。商品の提供や商談、受注、発送といったやりとりのすべてをユーザー自身が行うことによって、A社は手間とコストのかかる受発注業務から解放され、プラットフォーム全体の運営だけに集中できているのです。

また、A社は配送会社と連携し、売り手・買い手がともに匿名で取引できる仕組みも整えました。これにより、個人情報漏洩に対するユーザーの懸念を払拭し、顧客満足度を高めることに成功しています。

ファストファッションブランドB社:コスト削減とブランドイメージ向上に成功

ファストファッションブランドのバリューチェーンには、企画・生産・物流・販売を一気通貫で行うパターン、販売に特化するパターン、企画は自社で担当して製造工程全体をアウトソーシングするパターンなどがあります。
B社は、企画・設計やデザインはすべて本社で行い、製造工程のみを外注先の工場で行うバリューチェーンを構築。全体を効率化させてコスト削減を実現しました。

また、バリューチェーン全体の効率化により、トレンドを押さえた新商品を短期間で企画・製造することができるようになりました。その結果、「一般的なデザインの服を安く買える店」というブランドイメージから「トレンドを押さえた新作を、比較的安価に買える店」というブランドイメージへと変貌し、幅広い世代の顧客満足度が向上しました。

飲料メーカーC社:産地との関係強化で、高品質の原料を継続調達

ペットボトルの緑茶が人気のC社は、「目に見えない資産」をバリューチェーンの中に織り込みました。C社はペットボトルの緑茶を発売した当初から緑茶の名産地との関係を強化。バリューチェーンにおける原料調達のフェーズにおいて、高品質な原料を安定的かつ高鮮度のまま調達することで同業他社との差別化に成功しました。
原料の産地と良好な関係を築くといった目に見えない資産も、バリューチェーン向上の要因となる好事例といえるでしょう。

ビジネスマッチングで、バリューチェーン最適化をより効果的に行おう

バリューチェーン分析を行い、機能別に細分化した事業レイヤーごとの強み、弱み、優位性、劣位性などを洗い出すことで、市場の状況にかかわらず、付加価値の高い製品によって自社の利益を最大化するための課題の明確化、差別化戦略の立案が可能になります。
また、バリューチェーン分析を活用することによって、コスト・リーダーシップ戦略や差別化戦略、集中戦略など、企業経営に必要な各種戦略をより有意義に展開することができるでしょう。

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