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公開日:2023.04.07

ダイバーシティとは?ダイバーシティ実現とDXの関係などについて紹介

ダイバーシティとは?ダイバーシティ実現とDXの関係などについて紹介

近年、労働人口の減少やグローバル化、雇用意識・価値観の多様化などを背景にダイバーシティ経営を掲げる企業が増えてきています。
今回は、企業において注目され始めているダイバーシティの意味や注目される背景、重要性や推進メリットを解説していきます。また、併せてダイバーシティ実現に向けた課題や対策、DXとの関係性や実施事例なども紹介します。

(※)本記事にて発信する情報は、三井住友銀行の方策や見解等を述べるものではございませんので、ご留意ください。

ダイバーシティとは?

ダイバーシティ(Diversity)は、「多様性」という言葉に訳されます。ビジネスでは、多様な人材の能力が最大限発揮できる機会を提供することで、イノベーションや付加価値の創造を目指す経営を意味するダイバーシティ経営(ダイバーシティ・マネジメント)という言葉で、ダイバーシティは使われています。

ダイバーシティとインクルージョンの違い

ダイバーシティと合わせて語られることの多い概念で「インクルージョン」という言葉があります。「インクルージョン(Inclusion)」は、直訳で「包括」「包含」「包摂」を意味する言葉です。
ダイバーシティは「多様な人材が受け入れられ、集まっている」という状態であり、インクルージョンは「多様な人材が相互に機能して働いている」という状態です。
双方を組み合わせ、従業員一人一人の個性・能力を最大限に活かし、組織と従業員それぞれが成長していく「ダイバーシティ・インクルージョン」という概念があります。

ダイバーシティの重要性について

経済産業省や厚生労働省もダイバーシティ推進に注力しています。それぞれのダイバーシティ推進施策について説明していきます。

経済産業省が目指すダイバーシティ2.0

2016年8月、経済産業省は「競争戦略としてのダイバーシティ経営(ダイバーシティ2.0)の在り方に関する検討会」を立ち上げました。2017年3月にはダイバーシティ経営の在り方について検討を行い、企業が取るべきアクションをまとめた「ダイバーシティ2.0行動ガイドライン」を策定しました(2018年6月改訂)。

ダイバーシティ2.0は、多様な属性の違いを活かし、個々の人材の能力を最大限引き出すことで、付加価値を生み出し続ける企業を目指し、全社的かつ継続的に進めて行く経営上の取組と定義されています。

厚生労働省のダイバーシティ推進施策

2015年8月に女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(女性活躍推進法)が成立しました。これにより、働く場面で活躍したいという希望を持つすべての女性が、個性・能力を十分に発揮できる社会を実現するために、女性の活躍推進に向けた数値目標を盛り込んだ行動計画の策定・公表や、女性の職業生活における活躍に関する情報の公表が、事業主(国や地方公共団体、民間企業等)に義務付けられました。

また厚生労働省では、女性活躍推進法に基づいた一定基準を満たし、女性の活躍推進に取り組んでいる優良企業に与えられる認定制度「えるぼし・プラチナえるぼし認定」の制度を設けています。

企業がダイバーシティを重要視する背景

1980年代まで日本国内ではダイバーシティに関する議論がほとんど起きない状態でした。しかし、近年、大企業を中心にダイバーシティを重要視する企業が増えており、ダイバーシティに対する様々な取り組みを始めています。重要視される背景には以下の4つの理由が考えられます。

労働人口減少

内閣府(2022)「令和4年版高齢社会白書」によると、少子高齢化の進行により、生産年齢人口(15〜64歳)は1995年をピークに減少しており、2050年には5,275万人(2021年から29.2%減)に減少すると見込まれています。生産年齢人口の減少によって、労働力の不足、国内需要の減少による経済規模の縮小など様々な社会的・経済的課題の深刻化が懸念されます。

企業のグローバル化

日本でも国内市場の飽和による内需の減少により、グローバル化が加速しています。日本企業の海外進出だけでなく、海外企業の日本進出も進み、国際競争が激化している状況です。

グローバル化が進む中で、世界中の多様な価値観・ニーズを汲み取り、商品・サービスに反映することが、競争優位性を保つことができる一つの方法でしょう。そのために、多様な価値観や国籍、人種を問わない優秀な人材の採用や育成に力を注ぐ必要があるといわれています。

雇用意識・価値観の多様化

従来の日本企業では同一企業で定年まで雇用され続ける終身雇用制度の慣行がありました。
しかし最近では、ワークライフバランス志向やグローバル志向等、多様な雇用意識・価値観を持つ人材が増えてきています。
多くのグローバル企業で、ダイバーシティ経営を通じた受容により得られた恩恵は、「人材の獲得」や「業績の向上」であったとされています。多様な人材を受け入れる環境づくりは、企業の採用能力を高めることにもつながります。

消費の多様化

ネットが普及したことにより、消費者のニーズは多様化しています。多様なニーズに対応するためには、企業も柔軟な意思決定、自由な発想などダイバーシティの要素を経営に取り入れる必要があるといわれています。

ダイバーシティ経営のメリット

経済産業省「ダイバーシティ2.0行動ガイドライン」では、ダイバーシティ経営のメリットとして以下が挙げられています。

リスク管理能力の向上や取締役会の監督機能向上

クレディ・スイスの調査(※)によると、全世界の企業(時価総額100億ドル以上)で、女性取締役を1人以上有する企業は、1人もいない企業と比べ、金融危機後の回復力が強い傾向にあることが示されています。またグローバル投資家の間では、取締役会で、「健全な議論」と「独立性」を確保できるかを見極めるため、取締役会の多様性が注目されています。

(※)出典:CREDIT SUISSE「Research Institute The CS Gender 3000 in 2019:The changing face of companies」2019年10月(一部デバイスでは、クリックにより資料がダウンロードされます。)

イノベーション創出の促進

多様な視点からの意見を活用することで、新たなアイデアやひらめきが生まれ、新商品やサービスに反映させることができるでしょう。

ダイバーシティ実現の課題と対策

ダイバーシティの実現には多くの課題があります。課題を解決し、ダイバーシティ実現に向けた対策について紹介します。

ダイバーシティ実現の課題と対策

偏見やステレオタイプの解消

偏見やステレオタイプを持ってしまうと差別や誤解が生じる恐れがあります。まずは自分と異なる価値観や考え方を受け入れることが大切なため、研修等で教育を行い偏見やステレオタイプを解消していきましょう。また従業員の評価にも偏見が入ってしまう恐れもあるので、公平な評価制度を導入する必要があるといわれています。

意識改革の推進

ダイバーシティ推進の取り組みの経営方針を明確にし、従業員に目的を共有しましょう。従業員にダイバーシティ推進の取り組みを浸透させていくためには、管理職がダイバーシティについて理解しておく必要があり、研修等で管理職を教育していくことが重要だといわれています。

多様性を尊重する組織文化の醸成

多様性を尊重する組織文化を醸成させましょう。例えば育児や介護休暇等の制度を整備したとしても、組織が休暇取得に理解を示さなければ、申請しにくい状態になり、従業員の不満が溜まる要因となります。まずは管理職が育児や介護について理解をして、休暇を取得しやすい環境にすることが重要だといわれています。

ダイバーシティ推進は、人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで中長期的な企業価値向上につなげる「人的資本経営」にも通ずるものがあります。人的資本経営について詳しく知りたい方は、こちらも合わせてご参照ください。

ダイバーシティの実現とDXの関係について

多様な人材や働き方を受け入れる環境づくりを目的としたダイバーシティですが、企業のDXにも繋がります。ダイバーシティを実現している企業には、現代のビジネスに必要な柔軟性のある人材が集まります。柔軟性のある人材が集まることで、デジタルツールを用いた営業活動、ペーパレスによる業務プロセスの短縮化、AIを駆使したデータ分析といった業務戦略を生み出すことができます。

また柔軟性のある働き方を推進するなかでは、必然的にDXが求められます。在宅勤務やオフィス環境同様のコンディションで業務を進めるために、ITデバイスやクラウドサービスを使った情報共有などを進める必要があり、DX推進の契機となります。

企業のダイバーシティの取り組み事例

実際に日本の企業がどのようにダイバーシティに取り組んでいるのか紹介していきます。

女性活躍の推進

自動車メーカーであるA社は、女性社員を自動車の商品企画責任者に抜擢しました。
A社は自動車の商品企画に女性目線のニーズを反映できていませんでしたが、自動車購入を決定するキーパーソンの約6割が女性であることに着目しました。そこで、女性社員を商品企画に抜擢し、女性顧客のニーズを商品開発に反映させる取り組みをしました。その結果、女性社員が企画した商品が同社の主力車種の1つになるまで成長しました。

障がいのある従業員の活躍

製造業B社は、障がいのある従業員が活躍できる職場を構築しました。
当社は完全バリアフリーの社屋を建設し、障がいのある従業員が働きやすい環境を整備しました。また、積極的に障がいのある従業員を雇用しており、熟練者にはリーダーを任せる等、積極的な登用も行っています。

外国人従業員が働きやすい環境整備

外国人顧客が多く訪れるアパレルメーカーのC社は、外国従業員の雇用を進め、業績向上に繋げました。
C社では、外国人顧客への対応力を強化するべく、外国人従業員の雇用に取り組みました。その結果、外国人顧客の満足度向上につながり、業績の向上を達成しました。また、活躍している外国人従業員を評価するための人事制度制定にも取り組み、従業員のリテンション向上も達成しました。

ダイバーシティ実現に向け、多様な人材を受け入れる環境を整えよう

ダイバーシティの推進に取り組む上では、テレワークフレックスタイム制等、多様な人材や働き方を受けいれる環境づくり(=インクルージョン)が大切です。
そのために、業務のデジタル化やDXを推進することも一つの方法であり、ダイバーシティ・インクルージョンとDXは密接といえるでしょう。

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