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公開日:2022.06.29

更新日:2023.04.07

生産性向上とは?取り組むメリットや方法、計算方法や注意点も解説

生産性向上とは?取り組むメリットや方法、計算方法や注意点も解説

耳にする機会も多い「生産性向上」という言葉。生産性向上は、企業の競争力を高めるために必須だといえるでしょう。生産性は、決して定性的なものではなく、指標として数値的に把握できるものです。
数値として生産性を把握し、改善していくためには何をすれば良いのか、また、何に注意すべきなのかなどを解説します。

生産性向上とは?

そもそも、生産性向上とはどのような意味なのでしょうか。「売上アップ」「コストの削減」「業務効率化」といったことは、生産性向上につながる手法ですが、生産性向上そのものではありません。ここでは、生産性向上と業務効率化の違いと、生産性の算出方法についてご紹介します。

生産性向上と業務効率化の違い

業務効率化は、生産性向上のためのひとつの手法です。生産性向上と業務効率化は似た文脈で使われることが多い言葉ですが、業務効率化は業務のムリ、ムダ、ムラを省いて効率化することを指す言葉です。
一方、生産性向上は、企業が持つ資源であるヒト・モノ・カネの投入量に対する成果を高めることを指します。
売上を上げるために資源をどの程度まで投入し、その結果どれだけの成果、売上が上がったかを見るのが生産性です。生産性を向上させることで、より少ない資源で効率良く利益が上げられるようになるのです。

生産性の計算方法

生産性は、「アウトプット÷インプット」という計算式で算出できます。アウトプットとは、生産量や生産額、付加価値(粗利)のことです。一方、インプットとは、従業員数や労働時間などを指します。
アウトプットとインプットにどの数字をあてはめるかによって、さまざまな切り口で企業の生産性を数値として把握することができるでしょう。
生産性の向上は企業の経営状態を改善する上でも、重要な意義を持っているのです。

生産性計算方法のバリエーション

前項でふれた通り、生産性は「アウトプット÷インプット」の計算式で算出するのが一般的ですが、アウトプット・インプットの要素の違いによって3つのパターンがあります。

物的労働生産性

物的労働生産性は、一定の時間内に生み出された作物や製品の個数を労働による産出物として、その量や個数が量的に計量できるものの際に、生産性を測る考え方です。

<物的労働生産性の計算式>

物的労働生産性=生産量÷労働量

付加価値労働生産性

付加価値労働生産性は、一定の時間内に生み出された付加価値を労働による産出物として生産性を測る考え方です。営業利益と人件費、減価償却費の粗利益を付加価値とすることもあります。

<付加価値労働生産性の計算式>

付加価値労働生産性=付加価値額÷労働量

全要素生産性(TFP)

全要素生産性は、資本や労働などの増加以外の質的な成長要因を表します。技術の進歩によって、以前と同じリソースでもより多く生産できるようになる場合などに用いる考え方です。下記は、全要素生産性の計算式です。

<全要素生産性の計算式>

全要素生産性=生産量もしくは付加価値額÷合成投入量(労働+資本+原材料など)

生産性向上が求められる理由

企業は、なぜ生産性向上が求められているのでしょうか。大まかにまとめると、下記の2つが背景にあります。

少子高齢化による労働力人口の減少

日本は65歳以上の人口の割合が全人口の29.1%を占める超高齢社会に進んでいます。今後、労働人口比率が相対的に低い高齢者人口がさらに増加する中、限られたリソースで事業成長を実現するには、生産性の向上が欠かせません。

日本企業の国際的な労働競争力の低下

スイスのIMD(国際経営開発研究所)が作成した「世界競争力年鑑2022」によれば、経済バブルの終焉後の1992年まで1位だった日本の国際競争力は、63ヵ国中34位にまで落ち込んでいます。グローバル市場で勝ち残るには、既存の資源をフルに活用して生産性を高め、付加価値の高い商品やサービスを生み出す必要があるのです。

生産性向上がもたらすメリット

生産性が向上すると、企業には大きなメリットがあります。ここでは、生産性向上による具体的なメリットを、大きく3つに分けて見ていきましょう。

競争力の向上

生産性向上の取り組みの中でIoTやAIを活用し、これまで人の手を使っていた仕事を自動化できれば、従業員は「人にしかできない仕事」に集中できます。
すると、これまでにない高付加価値の製品やサービスが生まれる可能性が高まり、競争力の向上につながるでしょう。

コスト削減

業務効率化によって業務プロセスが削減されれば、不要になった業務にかかっていたコストが削減できます。また、従業員の労働時間が短縮され、人件費などのコストカットも期待できます。

ワークライフバランスの改善

業務効率化によって、残業や休日出勤がなくなり、従業員のワークライフバランスが向上します。企業のワークライフバランスが向上すると離職率が低下し、優秀な人材を採用しやすくなり、長期的には人手不足の解消にもつながるはずです。

生産性向上への具体的な取り組み

アウトプット(生産量・生産額・粗利など)を増やし、インプット(従業員数や労働時間)を減らせば、それだけ生産性は向上することになります。しかし、闇雲に従業員数を減らしても、個人への負荷がかかりすぎて、かえって効率が落ちるだけでしょう。
生産性向上のためには、アウトプットとインプットのバランスをとりながら課題を洗い出し、改善していく必要があります。続いては、生産性向上に向けた具体的な取り組みについてご紹介します。

生産性向上への具体的な取り組み

現状分析と課題整理を行う

まずは、現在の自社の生産性がどの程度あるのかを算出します。併せて、生産性を上げるための課題がどこにあるのかも検討します。
問題点がわかれば、生産性向上のために何をすれば良いのかが自然と明らかになるはずです。効果の高い改善ポイントを見つけ出し、具体的な取り組みへと落とし込んでいきましょう。

業務を洗い出す

無駄な業務や非効率な業務を洗い出し、改善のための施策も検討してください。これは、インプットを減らすことにつながります。
実際の業務フローや労働時間、従業員のスキルのほか、パフォーマンスの質と量などを可視化していくことで、どこに無駄があるのかがわかりやすくなります。それぞれの従業員がスキルを十分に発揮できているかどうか、また、業務に必要な資質が不足している部分がないかといった点を確認してください。

コア業務へ集中的な投資を行う

自社のコア業務にインプットを集中させれば、より多くのアウトプットを生み出せます。
コア業務とノンコア業務を分割し、ノンコア業務についてはアウトソーシングをすることも検討してみてください。

適切なマネジメントを行う

従業員を適材適所に配置することと、適切な人材育成を行うことは、生産性の向上に大きく貢献します。それぞれの従業員が持つスキルや資質、経験などを人事部が把握し、常に適切なポジションに人材を配置できる体制を構築しましょう。
また、定期的な研修の開催や外部セミナーへの参加、スキルアップにつながる福利厚生制度の拡充といった施策を行って、個人のスキルの底上げを目指すことも大切です。

モチベーションの維持・向上を図る

モチベーションが高い従業員は、積極的に業績に貢献できる存在です。従業員のモチベーションやエンゲージメントを高められる施策を検討しましょう。
具体的には、福利厚生制度の充実や人事評価制度の見直し、やりがいの創出、従業員が共感できる経営陣からのメッセージの発信などが挙げられます。

新しい技術を積極的に導入する

新しい素材や設備、製造機器、デジタル機器などを導入することで、従業員の負担の軽減や作業効率の向上につながることもあります。闇雲に新しいものに飛びつく必要はありませんが、自社にとってメリットになる新技術は、積極的に取り入れていくことをおすすめします。

情報共有の仕組みを整える

社内の情報共有がうまくいっていないと、生産性の低下を招きます。誰が何をしているのか、今どこで作業が止まっているのか、何が問題なのかといった情報がリアルタイムで共有できるアプリケーションの導入など、情報共有がスムーズに行える仕組みを作りましょう。

生産性向上に取り組む上での注意点

生産性向上のための施策を検討する際は、経営陣の一方的な押しつけや、見せかけの施策にならないように気をつけてください。効果測定が可能な形で目標設定を行うとともに、現場の声を聞いたり、実情を把握したりすることが大切です。ここでは、生産性向上に取り組む上での注意点をご紹介します。

生産性向上に取り組む上での注意点

KPI(重要業績評価指標)を設定し、施策を立案・運用する

漠然と「生産性を上げよう」と言っているだけでは、本当に生産性が向上しているかどうかを判断することができません。生産性の向上を目指すのであれば、具体的な指標をもとに施策を行い、効果測定と評価を行っていく必要があります。KPIとは、最終的な目標達成に到るまでの達成度合いを計測・監視するための定量的な指標です。
KPIを設定する際は、「付加価値労働生産性」と「労働分配率」に着目しましょう。

・付加価値労働生産性

付加価値労働生産性では、従業員1人あたり、または1時間あたりで付加価値をどの程度生み出しているかがわかります。付加価値とは粗利と同義と捉えても構いません。計算式は付加価値額(粗利)÷労働量(従業員数または従業員数×労働時間)です。

・労働分配率

労働分配率は、付加価値をどの程度人件費に分配したかを示します。人件費÷付加価値×100で算出できます。

これら2つの指標をどのように改善していくのかを検討し、KPIの設定を行います。

従業員のマルチタスクを避ける

1人の従業員が複数の業務を担当して、1人で1.5人分、あるいは2人分の働きをするようになれば、計算上はそれだけ生産性が上がることになります。
しかし、複数の業務を同時に行ったり、責任を持って担当したりすることは、それだけ個人の負担につながります。異なる業務を並行して進め続けていくと、疲弊による業務効率の低下にもつながりかねません。過度なマルチタスクが発生することがないよう、配慮する必要があります。

長時間労働・時間外労働につながらない施策を立てる

生産性の向上を目指すあまり、従業員に負担がかかる施策を立ててしまうようでは意味がありません。生産性を上げるためには、従業員に無理な働き方をさせず、効率良くモチベーションを保って働ける環境を作ることが大切です。現在の業務内容や業務フロー、各従業員の保有スキルなどを把握した上で、効率の良い働き方や配置を検討しましょう。

経営陣が一方的な施策を発案することは避ける

経営陣が一方的に生産性向上のための施策を命じると、従業員側の反発を招く危険性があります。実情にそぐわない施策でかえって生産性が落ちたり、モチベーションの大幅な低下につながったりすることもあるため、十分な配慮が必要です。現場の声を聞き、実情に即した施策をとってください。

トライアル アンド エラーを繰り返しながら進める

生産性向上につながる取り組みの効果が表れるまでには、ある程度の時間が必要です。また、実行した施策がすべてうまくいくとも限りません。生産性向上の取り組みは、トライアル アンド エラーを繰り返しながら進めていくことが重要です。

デジタル技術をうまく活用して生産性向上を目指そう

生産性を向上させるためには、まずは現状を分析するとともに課題を整理し、長時間労働につながらない施策を立てるなど、トライアルアンドエラーを繰り返すことが重要です。また、従業員の負担軽減や作業効率の向上に効果的なデジタル技術の活用をおすすめします。

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