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公開日:2023.04.07

更新日:2024.03.08

2025年の崖とは?経産省レポートが示す問題点や対策方法を解説

2025年の崖とは?経産省レポートが示す問題点や対策方法を解説

経済産業省の「DXレポート 〜ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開〜」により提唱された「2025年の崖」問題では、企業の事業の維持・存続に影響が出る可能性が指摘されています。本記事では、「2025年の崖」問題で指摘されている企業にとっての課題や対応策について、解説します。

「2025年の崖」とは?

「2025年の崖」とは、経済産業省の「DXレポート 〜ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開〜」で提示された言葉です。
昨今、あらゆる産業においてデジタル技術を活用したビジネスの推進が求められている一方、複雑化・老朽化・ブラックボックス化した既存システムを使用している企業も多数存在します。そして、企業がDXを推進していくためには、データ活用のために既存システムが抱える課題を解決していくことが求められています。

ただ、現状はDX推進を望んでも、経営や現場の抵抗に遭うこともあり、どのようにDX推進を進めていくかという点が課題になっています。

このような既存システムが抱える課題が解決できない場合には、企業のDX推進において足かせになるだけではなく、デジタル競争の敗者になる可能性があります。さらに同レポート内では、2025年以降には、既存システムが残存することによる課題に伴う経済損失が、最大で年間12兆円(現在の約3倍)にまで増加する可能性が指摘されており、これを「2025年の崖」と呼んでいます。

「2025年の崖」が示す現状の課題は?

「2025年の崖」が示す現状の課題

ここでは、経済産業省の「DXレポート 〜ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開〜」で示されている現状の課題について解説します。

課題①:既存システムのレガシーシステム化

レガシーシステムとは、技術面の老朽化、システムの肥大化・複雑化、ブラックボックス化等の問題があり、その結果として経営・事業戦略上の足かせ、高コスト構造の原因となっているシステムのことです。
DXの推進にあたっては、社内外の環境変化にスピーディーに対応することができることが必要である一方、我が国のITシステムには「レガシーシステム」が多く存在しており、大きな課題のひとつと言われています。

課題②:新しい技術に対応できない

既存システムの問題点を解消せずに放置した場合、新しい技術が出てきたとしても、既存システムに取り入れることができません。その場合、市場の変化に対してスピーディーかつ柔軟に対応したビジネスモデルの変更を行うことができず、企業はデジタル競争に負けてしまう可能性があると警告されています。

課題③:IT人材不足・システム維持管理費の高騰

2025年にはIT人材不足問題が深刻化し、システムの刷新を担う人がいなくなることで、レガシーシステムを使い続けることになる企業が増えると言われています。さらに、既存システムの維持管理費は高額化し、IT予算の9割以上を占めることになるとも予想されています。短期的な視点でシステム開発を行った結果、長期的に抱えることとなった高い保守費や運用費を「技術的負債」と呼びますが、この技術的負債が蓄積されることで、企業はコスト上、既存システムの維持や新システムの導入が困難となっていきます。

課題④:サイバーセキュリティ等のリスクの高まり

現在、先端ITを扱うことのできるIT人材が不足している中、企業の中心として働いてきた社員が退職・高齢化しています。その結果、システムの保守運用を行う人材の不足によって、サイバーセキュリティや、有事の際のシステムトラブル等のリスクが高まることも指摘されています。

課題⑤:各種システムのサポート終了

既存の各種システムのサポート期間が終了することも、課題のひとつとして指摘されています。サポート期間終了に伴い、既存システム全体を見直す必要が発生する場合があります。

課題⑥:IT市場の急速な変化

企業を取り巻く技術やITサービス・デジタル市場も大きく変化しています。クラウド活用の進展と共に、従来型のITサービス市場が成熟する中で、デジタル市場が形成されてきています。経済産業省(※1)によると、デジタル市場とは、取引にまつわる市場機能が高度にデジタル化され、ヒト・モノ・情報・カネの流れが動的に組み合わさった、様々なサービス・活動が実現する市場と述べられています。
また、経済産業省(※2)によると、2016年は従来型のITサービスへの投資額がクラウド等への投資額に比べ多い状況でしたが、5Gの実用化や、アジャイル開発が主流になっていること、AI技術の一般利用が広く普及していること等を背景に、2020年代後半にはクラウド等への投資額がITサービス市場の過半数を超えると予想されています。
このようにIT市場は急速に変化しており、変化に対応していくことが重要と言えるでしょう。

(※1)出典:経済産業省『デジタル市場に関するディスカッションペーパー 〜産業構造の転換による社会的問題の解決と経済成長に向けて〜』(2021年1月8日)
(※2)出典:経済産業省『第1回 「第4次産業革命スキル習得講座認定制度(仮称)」に関する検討会 参考資料3 IT人材育成の状況等について』(2017年4月25日)

関連記事:「DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?定義や事例を紹介」

2025年の崖の克服を阻む要因は?

2025年の崖を克服するには、DX推進を行う必要があります。ここでは企業がDX推進を行うに当たり、課題となり得る点について解説します。

経営層の意識

DXを推進するに当たっては、DX推進を意識した経営戦略が必要です。現在、DXに対する認識は高まっているものの、具体的な経営戦略を立てることができていない企業も多いのではないでしょうか。経営層からの経営戦略の打ち出しがない中で、DX推進のための施策が繰り返されても、会社全体でのDX推進にはつながりにくいという課題があります。

現場からの抵抗

経営者や情報システム部門等がDX推進に対して意欲的であっても、既存の業務フローやビジネスプロセスを刷新することに対して現場サイドが抵抗するケースは少なくありません。
あるいは、情報システム部門の提案に対して事業部門が消極的で、仕様決定や受入テストを主体的に実施しないケースも想定されます。DX推進に際しては現場の理解を得ると共に、事業部門もオーナーシップを持ってDX推進プロジェクトに関わることのできる仕組みづくりが重要です。

レガシーシステム

前述の通り、我が国のITシステムは「レガシーシステム」と呼ばれる状態になっていると言われており、DX推進における課題であると指摘されています。
各部署が個別最適化を優先した結果、システムが複雑化し、企業全体での情報管理・データ管理が困難になっていると言われています。

IT人材不足

DXを推進する上では、ユーザー企業におけるIT人材不足が深刻な課題となっています。DX推進のためには、社内にシステムへ精通した人材やプロジェクトマネジメントができる人材が必要ですが、現状、ITエンジニアはユーザー企業ではなく現場で作業をしているベンダー企業へ所属していることが多く、ユーザー企業にはシステムに関するノウハウが蓄積しづらい状態となっており、ベンダー企業に頼らざるを得ない現状があります。

ユーザー企業とベンダー企業の関係性

現状ユーザー企業はシステムの要件定義段階からベンダー企業と請負契約を締結することもあり、ベンダー企業に開発の大部分を任せている場合もあります。
今後、アジャイル開発のような、ユーザー企業が積極的に開発へ関わるべき方法を推進するには、契約形態やベンダー企業との関係性を見直し、少なくとも要件定義まではユーザー企業が行うべきであると指摘されています。

SMBCグループでは「DX推進に当たっての課題が解決できず、DXが進まない」というお客さま向けに、DX専門コンサルタントが、無料でDX推進をお手伝いします。

中小企業におけるDX推進の必要性や具体的な進め方を知りたい方は、こちらのページも併せてご参照ください。

「2025年の崖」を解決するには?

「2025年の崖」の解決策

「2025年の崖」が示す課題に対応するため、経済産業省の「DXレポート 〜ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開〜」内では、対応策が検討されています。ここでは、その対応策について記載します。

①DX推進システムガイドラインの制定

DX推進を加速・実現するために、システム構築等において必要なアプローチやアクション、または失敗しないための典型パターンを示した「DX推進システムガイドライン」を制定することが対応策として検討されています。
ガイドラインの構成案として、経営戦略におけるDXの位置付けや、DXにおいて実現すべきもの、具体的な推進体制・仕組み等が例示されています。

②情報の「見える化」・分析スキームの構築

ここでは、経営層が経営課題を認識するために、社内で保有している情報を「見える化」した上で、経営課題に対するアクションプランの設計につなげることが例示されています。
加えて、中立的な組織において人材を集め、見える化した情報を分析する体制や、分析結果を基に改善対応ができる体制の構築を目指します。

③ITシステムの刷新

ITシステムの刷新を行うためには、大きなコストと時間がかかることが予想されます。システム刷新に当たっては、刷新後のシステムが「新たな技術に迅速に対応できるか」等の目標設定を行うことが大切です。
また、コスト削減を図る上では、「不要な機能を廃する」ことが最も効率的な方法とされており、システムの一部機能の廃棄を検討する必要があります。

④デジタル技術等の新たな技術への対応

DXを通じ、ユーザー企業はデジタル技術等、新たな技術に柔軟かつスピーディーに対応することが求められています。また、ベンダー企業においては、従来の保守・運用業務に止まらず、最前線の技術分野へ積極的に進出し、競争力を維持し続けることが求められています。

⑤ユーザー企業・ベンダー企業間の新たな関係構築

既に述べた通り、ユーザー企業とベンダー企業間の契約の在り方を見直し、ユーザー企業による要件定義の丸投げや追加要望の続出といった事態を避けることも重要なポイントです。
特にアジャイル開発においては、ユーザー企業とベンダー企業の双方が目指すべき姿を共有し、良好な関係性を築いていくことが求められるでしょう。委託元と委託先企業といった上下関係から脱却するには、契約ガイドラインから見直していくことも視野に入れていく必要があります。

⑥DX推進をサポートするパートナーの発掘

DX推進は、必ずしも内製のみで取り組む必要はありません。社外のパートナーと協力し、社外の優れたノウハウを活用しながらDXを推進していくのもひとつの方法です。DX推進に伴走するパートナーを見つけ、専門的な知見やノウハウを生かしていくことで、DX推進が実現する可能性は高まっていくでしょう。自社が現状抱えている課題やそれらを解決する手段を客観的に捉えるのは容易ではないからこそ、外部パートナーを見つけることが重要です。

中小企業におけるDX推進の必要性や具体的な進め方を知りたい方は、こちらのページも併せてご参照ください。

DX人材を育成・確保するポイント

DX推進を軌道に乗せていくためには、DX人材の育成・確保が欠かせません。一方で、どのようにしてDX人材を育てていけば良いのかイメージが湧かないという事業者様もいるでしょう。DX人材を育成・確保するポイントは下記の3点です。

(1)人材を既存システムの維持・保守業務から解放し、DX分野にシフト

現状、社内にIT人材が在籍しているにもかかわらず、既存システムの維持・保守業務にリソースの大半を割かれているケースは少なくありません。こうした人材をDX人材として育成していくには、既存業務から解放すると共に、DX分野の専属人員として活躍しやすい環境を整えていくことが大切です。

DX推進チーム等を創設する際には、既存業務と兼務するのではなく、できる限りDX分野に専念できる環境を用意しましょう。DX推進に関する業務を既存システムの維持・保守業務と切り離し、別組織として設けるのが理想です。

(2)アジャイル開発の実践による事業部門人材のIT人材化

DX推進に求められるスキルを持つ人材を育成する手段として、OJTとしてアジャイル開発を行うのもひとつの方法です。アジャイル開発は、ユーザー企業の人材にとって開発手法を学ぶ機会となり、ベンダー企業の人材にとっては開発に従事しつつユーザーの業務に対する理解を深める機会となります。アジャイル開発を経験すること自体が、IT人材の育成と確保へとつながっていくのです。

IT人材の育成を成功させるには、ユーザー企業・ベンダー企業の双方で求められるスキルを明確化し、育成方法を設計することが大切です。アジャイル開発を通して実践的なノウハウやスキルを学んでもらい、事業部門人材のIT人材化を目指してみてはいかがでしょうか。

(3)スキル標準、講座認定制度による人材育成

DX人材を育成する方法として、国が提供している認定試験や認定制度を活用するのも効果的です。経済産業省と独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が推進している「ITスキル標準」および「情報処理技術者試験」等を活用すれば、IT人材に求められるスキルが明確化されると共に、IT人材の育成が促される効果が期待できます。
また、2018年より「第四次産業革命スキル習得講座認定制度」が運用されており、産学連携での人材育成が推進されているのも注目すべきポイントです。こうした制度を活用し、今後必要とされるAIやデータ活用に関する知見・スキルを持つ人材を育成していくのもひとつの方法でしょう。

近年注目されているリスキリングや学び直しの観点からも、IT人材・DX人材を育成していく取組は企業・従業員の双方にとってメリットとなり得ます。人材育成の重要課題として、DX人材の育成を大きな柱のひとつと位置付けておくことが重要です。

関連記事:「DX人材とは?必要スキルやDX人材を確保する方法について解説」

DXを推進し、「2025年の崖」に備えましょう

企業が「2025年の崖」問題へ対応するためには、ITシステムの刷新やDX人材の確保をはじめとした、DXの推進を行うことが必要です。今後、デジタル化が進む中での競争に企業が勝ち残っていくためにも、DXの推進は非常に重要です。

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