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公開日:2023.02.17

請負契約書とは?委任契約との違い、記載事項や注意点などを解説

請負契約書とは?委任契約との違い、記載事項や注意点などを解説

企業が業務を外部に委託する際に作成する書類の一つに請負契約書があります。これはどのような役割を持つ書類なのでしょうか。ここでは請負契約書について、委任契約・準委任契約との違い、記載事項や注意点、請負契約の一般的な流れや電子化のメリットを解説します。

請負契約書とは

請負契約とは業務を外部に委託する際の契約(業務委託契約)形態の一つであり、当事者の一方(請負人)がある仕事の完成を約束し、相手方(注文者)がその対価として報酬を支払うことを約束する契約です。要するに、仕事を依頼する際に仕事を依頼する人と、依頼を引き受けその仕事を行う人の間で締結するものです。
請負契約を締結する業務の例としては以下のようなものが挙げられます。

  • ・建設工事
  • ・ソフトウェア開発
  • ・ホームページ制作

請負契約の内容を明確にした文書が「請負契約書」です。請負契約は請負契約書を作成しなくても口約束だけで成立しますので、建設工事請負契約など法令上一定の重要事項を記載した書面の交付義務が課される場合を除いて、契約書の作成は必須ではありませんが、請負契約では、契約金額が大きくなることも多く、トラブルが発生した際のリスク回避のために、請負契約書を作成するのが一般的です。

請負契約、委任契約、準委任契約の違い

業務を外部に委託する際に利用される方法として「請負」の他に「委任」「準委任」という言葉がよく利用されます。これらの違いはなんでしょうか。ここでは「請負契約」、「委任契約」、「準委任契約」の違いについて見ていきます。

定義

請負の定義は民法第632条によると「当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによってその効力を生ずる」とあり、「仕事の結果(完成すること)」が契約の目的となっています。
一方、委任の定義は民法第643条によると「当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによってその効力を生ずる」とあり、「法律行為を行うこと」が契約の目的となっています。
また、準委任の定義は民法第656条によると「法律行為でない事務の委託について準用する」とあり、「法律行為以外の業務を行うこと」が契約の目的となっています。

報酬を請求できるタイミング

請負契約では上記の定義から仕事を完成させることが前提となるため「仕事の完成」のタイミングで報酬を請求することができます。ただし、「注文者の責めに帰することができない事由によって仕事を完成することができなくなったとき」や「請負が仕事の完成前に解除されたとき」には請負人は請負人が既に行った仕事の結果の中に注文者が受ける利益がある場合、その部分を仕事の完成とみなし、その利益の割合に応じて報酬を請求することができます(民法第634条)。
一方、委任契約では仕事の完成の有無にかかわらず、一定の業務を行った時間や工数に対して報酬を請求することができます。
また、準委任契約では民法第656条により報酬が発生する根拠は委任契約と同様です。

契約不適合責任

請負契約では請負人に契約不適合責任が発生します。契約不適合責任とは請負人が納品した成果物に対して不備等があった場合に請負人が注文者に対して負う責任のことです。
一方、委任契約と準委任契約では仕事を受ける側(受託者側)で委託者に対する善管注意義務を負いますが、契約不適合責任は負いません。

契約の解除

請負契約では仕事が完成する前であれば、注文者が請負人に対する損害を賠償することでいつでも契約の解除が可能(民法第641条)です。また、仕事が完成した後でも、成果物に瑕疵があった場合には契約の解除が可能(民法第635条)です。
一方、委任契約と準委任契約は各当事者がいつでも契約を解除することが可能です。ただし、「相手方に不利な時期に委任を解除したとき」や「委任者が受任者の利益をも目的とする委任を解除した解除により相手方に損害が発生したとき」には賠償が必要になる場合があります(民法第651条)。

請負契約書の記載事項

それでは、実際に請負契約書を作成するにあたって何を記載すれば良いでしょうか。ここでは請負契約書の記載事項と記載するにあたってのポイントを解説していきます。

請負契約書の記載事項

1.代金の支払方法

請負代金の全額、もしくは一部の前金の支払方法を定める必要があります。請負人が請求書を発行し、注文者が入金する方法が一般的です。また、代金が支払われるタイミングも定めておく必要があります。契約金額が大きい案件や契約期間が長期にわたる案件等では着手金や中間金等を支払うのか、完成後に一括で支払うのかを決めておきましょう。

2.費用の負担

請負契約を履行するにあたって業務に要した交通費、駐車場代等の費用の負担が発生する場合が考えられます。そのため業務に要する諸々の費用を請負人と注文者のどちらが負担するのか明確にしておきましょう。

3.納入方法

完成した成果物について、請負人がいつまでに完成させ(納期)、どのようにして納入するのか等の納入方法を明確に定めておく必要があります。また、納期に間に合わなかった場合はどう対応するのかも併せて記載するようにしましょう。

4.検収方法

検収とは、成果物の納入に対して注文者がその成果物で納品とするかどうかを確認する作業のことです。契約書にて検収を行う旨、どのような基準を以って検収とするか(合格基準)、不合格になった場合の再検査方法等を明示すると良いでしょう。

5.契約不適合責任

契約不適合責任については民法第637条によれば「不適合を知った時から1年以内に注文者が請負人に修補請求を行わなければ損害賠償請求・契約解除ができなくなる」と定められています。契約書に保証期間を定め、その保証期間内に契約不適合が発見された場合に請負人が無償で補修する等の内容を決めておきましょう。責任の範囲が広範囲に渡る場合は別紙で定義すると良いでしょう。

6.知的財産権

知的財産権とは、人間の知的活動によって生み出された財産的な価値を持つ創作物に関する権利であり、特許権、実用新案権、意匠権、著作権、商標権などがこれに該当します。成果物の内容によっては知的財産権が発生したり、請負人または第三者の知的財産権の使用が必要となる場合がある為、発生した知的財産権が請負人と注文者のどちらに帰属するのか、また、必要となる知的財産権の使用許諾権の付与などを明確に定めておきましょう。

7.契約の解除・解約

どのような場合に契約解除や解約ができるのかを明確に定めておきましょう。解除については、一般的には、当事者のどちらかが契約違反や背信行為など双方の信頼関係が崩れるような事態が発生した場合を定めることが多いです。また、解除における催告の要否や、解約の事前告知期間、条件などを記載しておくと良いでしょう。

請負契約書の作成に関する注意点

ここでは請負契約書を作成する前に注意すべきポイントについて解説します。

印紙税

請負契約書は印紙税法による課税文書(第2号文書)に該当する為、契約書面を作成する場合には契約金額に応じた収入印紙の貼付が必要となります。貼付を忘れると過怠税の対象となるため十分に確認するようにしましょう。

危険負担の所在

危険負担とは一方の当事者に責任のない理由で目的物が滅失や損傷し契約が履行できなくなった場合、そのリスクをどの当事者が負担するかという考え方です。原則として成果物を引き渡すまでの危険は請負人負担となりますが、契約で自由に決めることができます。双方が公平な分担となるように特約事項によって定めておくとよいでしょう。

違約金や損害賠償

請負契約には請負人が納期に間に合わない、注文者が代金を支払わないなど双方に契約違反(契約不履行)のリスクがあります。そのようなリスクに備えるため、違約金や損害賠償の請求ができる旨を定めておきましょう。

請負契約の流れ

請負契約の一般的な流れとしては以下の流れになります。

請負契約の流れ

万が一の為にStep1〜Step7の各過程で①依頼書、②見積書、③発注書、④契約書、⑤納品書、⑥検収書、⑦請求書領収書等の書面を作成し、保管しておくようにしましょう。

電子化のメリット

請負契約書は電子契約サービスを利用すれば契約書と同様に電子化が可能です。電子化することでどのようなメリットがあるのでしょうか。

業務の効率化

請負契約書は締結までに作成・印刷・郵送等、手間や工数がかかります。また、締結後の原本の保管などの作業も必要になります。電子化することで印刷・郵送といった作業は不要となり、工数の削減や契約におけるリードタイムの削減など、業務効率化につながります。

コストの削減

請負契約書を電子化することで印刷・郵送に関する費用を削減でき、締結に関わる作業時間の抑制につながるため、人件費等のコスト削減が可能です 。また、印紙税は「文書」の作成に対して必要となりますので、「文書」を作成しない電子契約の場合は印紙税もかかりません。

管理体制の強化

電子化により、締結後の管理において書類のデータの一元管理が可能となり、バックアップやアクセス権限を設けるなどセキュリティ強化を実施できます。また、電子化することで原本を保管する収納スペースが不要になり、文書の検索性が向上するなど紛失や破損のリスクを抑えることができます。

電子契約も可能である請負契約書は当事者双方が十分に内容を理解しながら作成していきましょう

請負契約書は注文者と請負人間、双方の契約内容を明確にするとても重要な書類です。契約締結時に契約内容に齟齬のないよう注文者・請負人双方が内容をよく確認したうえで請負契約書を作成しましょう。
また、請負契約書は電子契約も可能です。請負契約書の締結に電子契約サービスを利用することで印刷や郵送に関するリードタイムの削減やコストの削減につながります。

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(※)2023年2月17日時点の情報のため、最新の情報ではない可能性があります。
(※)法務・税務・労務に関するご相談は、弁護士や税理士など専門家の方にご相談いただきますようお願い申し上げます。

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